安全余裕率
前月号まで取り上げた、損益分岐点、変動費率、限界利益、固定費、目標利益達成のための売上高の求め方などについて、だいたいのことが理解できたと思います。
ここでは、損益分岐点の考え方を使った財務分析手法について、解説していきます。
今回の安全余裕率と、次回の損益分岐点比率は、いずれも管理会計の実務上、とても利用価値の高い財務分析指標ですので、ぜひここでマスターしてください。
では、まず安全余裕率からいきましょう。
安全余裕率とは、「今の売上高が、次期に何パーセント下がっても、まだ赤字にならないか?」という現状を知るための財務比率です。
計算式は、次のようになります。
【安全余裕率を求める計算式】
(現在の売上高-損益分岐点売上高)/現在の売上高(%)
式の分子は、「現在の売上高-損益分岐点売上高」なので、損益分岐点の水準を今の売上高がどれだけ超過しているか、という余裕額を表します。
それに対して、分母は現在の売上高となります。
つまり、「損益分岐点を上回っている余裕額/現在の売上高」という比率なのですね。
では、前月号のテーマ「目標利益を達成するための売上高」のところで用いた前期の損益計算書をデータとして利用し、前期の売上高8000万円の安全余裕率を求めてみましょう。
まずは、損益分岐点売上高の確認です。損益分岐点売上高は、「X‐0.6X‐2880万円=0」より、7200万円ですね。
次に、前期の実際売上高が8000万円ですから、損益分岐点売上高7200万円を超過している安全余裕額は800万円です。
ここまでくると、安全余裕率は、かんたんに求められますね。
800万円/8000万円=10%です。
つまり、前期の売上高を基準として、そこから10%売上がダウンしても、まだ赤字にならない水準である、ということがわかりました。
安全余裕率という財務分析比率、ぜひ覚えておきましょう。