過去問をどんどん読んで、文章力を鍛えよう!【かんばろう!税理士簿記財表004】
がんばろう税理士簿記・財表、今回は「過去問をどんどん読んで、文章力を鍛えよう」というテーマでお話をしたいと思います。
このテーマは税理士の簿記論・財務諸表論に限らず、日商簿記1級・2級・3級など、簿記・会計に関する堅い文章に普段慣れていない方が早く文章に慣れて、なおかつ国語力も鍛えられるという、一石二鳥のトレーニング方法をお話します。
税理士になるためには5科目受からなければいけませんが、そのうち会計科目である簿記論と財務諸表論は必須です。
簿記論は計算力が問われますが、文章がやたらと長かったり複雑なので、文章の読解力が必要になります。
財務諸表論は、読むだけではなくて、自分で文章をまとめて書かなければいけないので、文章の表現力も必要です。
受験生としての文章の表現は、簡潔に単文を意識して書いてほしいです。
「単文」「重文」「複文」というのは前の「前を向いて歩こう」でもお話しましたが、大事なことです。
みなさんが書く時は基本的に単文を意識してください。
1個の文章に極力述語が1個です。
しかし、巷の簿記・会計の本は複文が多いです。
それは仕方がないのです。
簿記・会計の専門家の方たちは文章の専門家ではないしトレーニングを受けていません。
したがって、わかりづらいのです。
私は、会計学は悪文を読む練習だと思っていたので、得意だったのです。
みなさんは「わかりづらい」と言っていますが、みんながそう言ってくれるから楽だったのです。
私は国語が得意で、古文・漢文は好きではありませんでしたが、現代文は大好きでした。
数学は全然ダメでしたが、現代文はなぜか偏差値がよかったので、私は現代文を論理的に分解して、算数のように数式にするのが好きでしたので、接続詞と助詞の研究をすごくしました。
やはり文章は述語です。
単文か複文かを見極めます。
難しいのは複文なのです。
主語の省略をして、修飾語が多いのです。
その権化のようなものが会計学の文章で、そもそも会計学の専門家の方々というのはそれほど文章を鍛えていないので、分かりづらいです。
ということは、会計学の教科書が読めたら結構堅い文章が読めるのです。
会計学ほど堅い文章は滅多にありませんから、会計の文章が読めれば、わかりづらい文章も読めるようになります。
わかりづらい文章を分析する練習をしていないので、困っている人が多いのです。
私はその部分については、文章を読むのが割と好きだったので、それほど苦労しませんでした。
それが多分、理論科目もそうですが、簿記の上級レベルのテキストもそれほど苦労しなかった気がします。
文章というのはパーツの組み立てなので、部品さえ分析すれば、法則があるのです。
これは簿記1級の勉強にも役に立ちます。
簿記1級の工業簿記には、最近は傾向が変わってきましたが、一時期はやたら長い文章で「小説」のようなものが多かったのです。
それを読み解くという練習があったのですが、私はそれが大好きでした。
それをやってみましょう。
税理士簿記論の過去問を使ってみます。
平成21年に実施された第59回簿記論の第三問の資料2の1の(2)の③です。
資料の最初のほうは現金・預金や銀行調整勘定表があります。
そのなかで、銀行調整勘定表絡みの文章で長いものがありました。
複文と単文がありますが、複文の文章がダラダラとあって、その後に「なお」という接続詞で累加しています。
付加する文章というのは前の文章を制約したり追加の情報を与えるのです。
私が文章を読むときにはメインの述語を探します。
文章を読んでみましょう。
「2月末に割り引いていたT商事の3月20日期日の手形7,500,000が」
ここまでダラダラ長いです。
これは主語です。
いきなり悪文です。
主語が長いというのはよくないですので、みなさんも文章を書くときには主語を簡単にしてください。
「が、不渡りとなり」
「なる」という述語ですが、それだけではわからないので、「不渡りと」ということを付けています。
これが一つの述語を構成しています。
「その買い戻し金が預金から引き落とされた」
「なり」だから、「なんとかし、なんとかし」みたいな助詞で、結局、これは並列を表しているのです。
「なんとか」と「なり」だから、もう1つ並列の述語があると思いますが、それが「引き落とされた」です。
「引き落とされていたが」
「いたが」という助詞が出てきます。
「が」なので、これは逆説です。
「反対の内容が来るな」というふうに読みます。
だから、まずは述語で見ればいいのです。
「不渡り」と「なり」は“主役”ではないことが勘で分かってきます。
「不渡りとなり」で、さらに並列で「引き落とされた」
不渡りになった瞬間に不渡り手形は出ます。
引き落とされたのは当座預金だろうと分かります。
「が」なので、この後がポイントです。
「未記帳であった」
これが主役です。
ということは、第一問はダラダラと長いですが、ここで言っているのは「未記帳」であることです。
「記帳していないから書いてね」ということです。
「しかし未記帳だった」ということは前の反対になっている事象は何かというと2つあります。
「不渡りとなった」
これは(借方)不渡り手形です。
「引き落とされた」
これは(貸方)当座預金です。
こうやって、瞬時に文章を分解する練習をしてください。
現代文はパズルなのです。
まずは「未記帳だった」という主役の述語を見つけてください。
記帳されていなかったという、否定を表す述語です。
そして、記帳されていなかったことが何かということで、それに係る修飾接となる2つの文章があります。
これは複文です。
「不渡りとなり」さらに「引き落とされていた」「が、未記帳であった」
というのが本質です。
あとは主語をつければいいのです。
不渡り手形7,500,000なので、深い意味はありません。
「なお」とありますが、これで終わりだったら不渡手形ですが、「なお」という言葉で制約しています。
あるいは、ある種の条件を累加しています。
では、何を累加しているのか。
この仕訳に何かあるのかと考えます。
では問題文を見てみます。
「T商事は3月20日付で民事再生手続の開始決定がなされた」
「決定された」・・・何が?
「民事再生が」ということがわかれば、不渡手形の名前を「破産更生債権等」と変えればいいということがわかります。
これが現代文の読解のヒントです。
ザッと読んだだけでは何を言っているのかわかりません。
しかし「未記帳」がポイントで、そこを取っかかりにすればいいです。
何が未記帳かというと「不渡り」と「引き落とし」です。
「なお」からは累加(付加)です。
このように見ていただくと、2つの文章があって、前半が複文、後半が単文です。
単文は前半の複文の累加だということが分かれば読みやすいです。
こうやって方針を決めてほしいのです。
こういった文章の塊を、述語をベースに分析してみると面白いです。
楽しんで過去問をパズルのように解きほぐしてください。
日商簿記検定1級の勉強も、このように勉強していただくと、普段のテキストや例題の勉強にも関連づけることができます。
こうやって立体的に勉強しましょう。
私はいつもあなたの税理士簿記論・財表、そして日商簿記検定1級などの合格を心より応援しています。
ここまでご覧いただきまして誠にありがとうございました。