137回の直前ワンポイント~在外支店の円換算~
がんばろう日商簿記1級合格、今回は、在外支店がある場合の本支店会計についてワンポイントアドバイスをしたいと思います。
外国に支店を設置している場合の、外貨で表示されている海外の支店の決算整理後の残高試算表を日本円に換算するプロセスは出題される可能性があります。
最近では、海外子会社の円換算も出たことがあります。
場合によっては2つ出るかもしれないので、どちらも出来るようになってほしいです。
本支店会計と連結を合わせた問題が出るかもしれませんが、そちらのほうが決算整理などで面倒な問題が出ないので、いいのかもしれません。
ケースバイケースにはなりますが、新しい論点が出た場合というのは、個々の処理は基本的なものしか出ませんので、本支店会計が出るときもそれほど難しい決算整理が出ないかもしれません。
あまり深く考えずに、淡々と資料を見て、持っている知識をフルに活用して、出来るところから点数を積み重ねていくのが王道です。
105回の日商簿記1級で似たような問題がありましたので、それを元にオリジナルの問題を作ってみました。
もし出題された場合のレベルを想定して、あくまで参考例として見ていただいて、理解を深めていただきたいと思います。
さっそく見ていきましょう。
(問題文)決算整理前残高試算表の支店勘定残高は30,000円、支店より仕入勘定残高は32,000円であった。当社は、アメリカに支店を持っている。アメリカ支店における決算整理後残高試算表(米ドル)は次のとおり。
【借方】「現金300」「売掛金100」「繰越商品160」「備品200」「売上原価680」「減価償却費18」「その他の費用80」、借方合計1,538ドル。
【貸方】「買掛金70」「減価償却累計額36」「本店240」「売上832」「本店へ売上360」、貸方合計1,538ドル。
なお、当社の期末商品棚卸高は240,000円であるが、当期中にアメリカ支店から仕入れた商品1,520円が含まれている。ただし期末時点における未達商品は含まれていない。
…この部分はダミーなので、あまり考えなくても良いです。
(問題文つづき)商品は平均法により評価している。期末時点における商品時価の下落はなかった。
備品は前期首に取得した。取得時の為替相場は1ドル90円であった。
…前期首ということは、1年間は減価償却が済んでいるので、上記の決算整理後残高試算表では減価償却累計額が前期と当期の合計で36ドルになっています。
2回分で36ドルになることは、当期の減価償却費は18ドルになっていることからもわかります。
それから、取得時のレートが90円(HR)ということを覚えておいてください。
本支店会計の場合は本店の換算方法に従うので、在外子会社とは違います。
子会社の場合は、備品であろうと資産負債は決算日レートであることが問題文の条件では多いですが、本支店会計の場合は本店の換算方法に従います。
いわゆる、貨幣・非貨幣法をベースとしたやり方です。
ですので、備品はHRを使います。
減価償却費もHRを使います。
(問題文つづき)本支店間の取引および減価償却に係る勘定科目を除き、繰越商品その他の損益は期中平均相場で換算すること。
…気をつけてほしいのは、本店へ売上勘定や本店勘定の、本支店間取引については、照合勘定で相殺しないとまずいので、本店の円ベースの金額にぴったり合わせることです。
(問題文つづき)アメリカ支店は、仕入れた商品の一部を、原価に10%の内部利益を付加して本店に売り上げている。なお、期末日に本店向けに出荷した商品60ドルが本店に未達となっている。未達項目は当該取引のみである。
当期の為替相場は、①期首:100円、②期中平均:105円、③期末:110円であった。
…ちなみに、支店における繰越商品160もドルベースで平均原価法ベースで評価済みです。
本店の期末商品については今回は除外しますので、支店だけ見ればよいです。
それから、未達の商品60ドルは期末に本店向けに出荷したものなので、期末日レート110円で換算して、110×60と計算してください。
そして、当期の為替相場が3つ出ていますが、期首の相場100円は使いません。
期中平均(AR)の105円と、期末(CR)の110円と、備品の取得時レート(HR)90円の3つを使います。
(問題文つづき)以上をもとに、円換算後のアメリカ支店の決算整理後残高試算表と支店の純損益を求めなさい(問題文ここまで)。
それでは1つずつ見ていきますが、まず、貨幣・非貨幣法なので、現金、売掛金は貨幣性資産で、買掛金は貨幣性の負債です。
金銭債券・債務というのは、金銭で換金されるもので、貨幣項目なので、決算日レートを使います。
繰越商品は今回は期中平均レートと書いてあります。
備品は取得時レート90円を使います。
売上原価も今回は105円です。
減価償却費は、問題文にもあるとおり、取得時レートを使うので18ドル×90円という計算になります。
その他の費用は平均レート105円を使って80ドル×105円で計算します。
本店勘定は後で分析します。
売上の832はその他の損益なので、平均レート105円を使います。
本店へ売上360は本店の金額に合わせます。
以上を踏まえて換算します。
今回は表を作ってみました。
金額を空欄にした解答用紙をPDFでダウンロードできるようにしてありますので、動画の説明文に記載されているURLからダウンロードしてください。
今回は解答から見てみます。
現金は300ドル×110円(CR)=33,000円。
売掛金は100ドル×110(CR)=11,000円。
繰越商品は160ドル×105円(AR)=16,800円。
備品は200ドル×90円(HR)=18,000円。
売上原価は680ドル×105円(AR)=71,400円。
減価償却費は18ドル×90円(HR)=1,620円。
その他の費用は80ドル×105円(AR)=8,400円。
借方の資産と費用を合計すると160,220になります。
為替差損は80円ですが、これは試算表の貸借差額で求められます。
次は貸方項目です。
買掛金は70ドル×110円(CR)=7,700円。
減価償却累計額は36ドル×90円(HR)=3,240円
本店勘定は支店勘定と合わせるので30,000になり、さらに未達の60ドル×110円分を引くので、23,400円となります。
売上は832ドル×105円(AR)=87,360円。
本店へ売上勘定は、支店より仕入勘定残高と合わせるので32,000になり、さらに未達の60ドル×110円分を足すので、38,600円になります。
貸方をすべて足すと160,300になって、借方の合計160,220との差額が為替差損となります。
残高試算表の貸借差額が為替差損益だということを理解してください。
純損益を出した後に損益計算書の貸借差額で為替差損益を出す方法を一般的に学びますが、それ以外にも、決算整理後残高試算表を単純にトータルして、貸借差額で為替差損益を求めることもできます。
(現金33,000+売掛金11,000+繰越商品16,800円+備品18,000円)-(買掛金7,700円+減価償却費1,620円+本店23,400円)=44,460円となります。
(売上87,360円+本店へ売上38,600円)-(売上原価71,400+減価償却費1,620円+その他の費用8,400+為替損益80円)=44,460円となります。
このプロセスを知っておいてください。
それから、本店の総勘定元帳(G/L)がどのようになっているのかというと、60ドル×110円なので、支店勘定の貸方が6,600で、支店より仕入勘定の借方が6,600となります。
30,000-6,600=23,400なので、支店勘定の貸方は23,400になって、本店勘定の借方は23,400となりますが、本店に未達はないので貸方も23,400になります。
支店より仕入勘定の借方合計は32,000+6,600=38,600なので、貸方も38,600。
本店より売上勘定の借方・貸方もそれぞれ38,600となります。
この照合勘定の対応関係を理解してください。
照合勘定は貸借が逆で一致しますから、本店勘定は23,400の貸方残高で、本店より仕入・本店へ売上勘定も38,600だということがわかります。
これをT字勘定の分析をして求めていただければいいのです。
このようにして在外支店の円換算を出来るようになっていただきたいと思います。
ぜひ、参考になさってください。
この板書、問題文、模範解答、解答用紙の4点はPDFでダウンロード入手できるようにしますので、活用してください。
目標時間ですが、この問題ならば5分から10分ぐらいという気がします。
10分以上だと時間がかかり過ぎだと思ってください。
慣れれば5分でできますが、初めて見ると問題文の解析が必要になりますので、7・8分ぐらいはかかると思います。
ぜひ、頑張ってみてください。
私はあなたの簿記1級合格を一生懸命応援しています。
ここまでご視聴いただきまして誠にありがとうございました。