原価率の計算は、計画的に!【がんばろう!独学で日商簿記1級合格276】



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みなさん、こんにちは。
がんばろう日商簿記1級合格、今回は「原価率は計画的に」というお話です。

よく「原価率の計算で、仕入は割引や割戻しを考慮するのに、売上の場合は値引や割戻しを考慮しないのですか?」という質問を受けることがあります。
これは、私も初心者の頃に悩んだことがあるので、気持ちはよくわかります。
その時に教わっていた先生には計算式だけで教わったので、丸暗記でやっていたのですが、中級レベルになったときに、別の先生がビジネスに則して教えてくれたのですごくわかりやすかったです。
私が講師になった後も、その先生と同じ説明の仕方をしているのですが、その内容をお話します。

原価率とは計画数値なのです。
定義をするならば、倉庫があって、引き渡しの時点における原価と売価の比較数値なのです。
ポイントは「引き渡しの時」ということです。
お客さんに渡す時点での売価と原価を比較して、その比率が原価率なのです。
たとえば、原価900円の物を1,200円で売ったとすると、そのときの原価率は0.75(75パーセント)となります。

4/1に商品を仕入れたとして、割戻しは後からくることもありますが、この数字は引き渡しの前の段階である程度決まります。
たとえば、引き渡す前の段階で、「たくさん買ってくれたから割戻ししましょう」というように、事前にわかります。

値引についても、仕入れてみて品物を開けてみたら一部に品質不良があったら値引をするので、引き渡す前にわかっているはずなのです。
なので、仕入の商品の金額は、引き渡す前の段階で決まっています。
当然、返品の分については売上も仕入も引きますが、問題は値引と割戻しなのです。
仕入の値引・割戻しというのは、基本的に引き渡し前の段階である程度事情が明らかなので、それを加味するのです。

たとえば、960円で仕入をして、値引を10円して割戻しを50円したというのは、引き渡し前の段階で概ね明らかになるので、差し引き900円というのは事前に固まっているのです。
その後、4/5に引き渡すのですが、ここがポイントです。
お客さんの手元にいく前の段階が「事前的」と考えてください。
そして、1,200円で売るとした場合、この1,200円は、900円に対していくらで売るかという計画数値なのです。
販売のときに1,200円と決めたのだから、900円と1,200円をぶつけて75パーセントの原価率という計画をしたのです。

これが経営の意思決定なのです。
私も経営者をやっているからわかるのですが、ビジネス的には引き渡しの時に売価を決めるのです。
このときの売価と、それまでの仕入原価の調整額をぶつけます。
しかし、割引に関しては日本の会計基準では値引の応用とは考えないので、対象にならないことに注意してください。

ちなみに、割引については簿記2級で学習しているはずですが、代金を早めに支払ったときの営業外収益となるので、割引は原価率に入れません。
簿記1級では引っかけがありますが、割引は別物と考えてください。
仕入の値引と割戻しは4/1の仕入の段階で原因が明らかになっていて、事前に調整できるので、960-10-50で900円となります。
ポイントなのは、4/5の引き渡し時点における売価と原価は1,200と900と事前にわかっています。
これをぶつけたものが原価率なのです

ビジネスにとって原価率とは、計画数値なのです。
問題はその先で、たとえば4/6に、数社に販売したうちの1社から個別にクレームがあったので、値引50円、割戻し50円を行いました。
これは全商品に共通の事項ではなく、その当事者との関係だけで値引をしただけなので、これは事後調整であって計画的ではありません。
売上の値引・割戻しというのは、特定の得意先との間の事後的な調整にすぎません。
これがポイントです。

なので、4/6以降の事後的な調整というのは、本来の原価率の計算には関係無いのです。
割戻しに関しては、その得意先との関係だけで割引くので、引き渡しの時の一般的な計画数値1,200円とは関係無いのです。
特定のお得意様にだけ割戻しをしただけであって、すべてのお客様に対して割戻しをするのとは違います。
引き渡しの時に商品全体に対して売価を調整する場合は、売価還元法でいう値下げになります。
値下げと値引きは違って、値下げは、その額を引き渡し前に決めますから計画数値の一部なのです。

ポイントは、事後的に特定の取引先との間で値引や割戻しをした場合は、本来の原価率には反映させないことです。
時系列を見ていただきたいのですが、通常、仕入値引・割戻しは引き渡し前の段階で完結するので、それらを加味して原価率を計算します。
しかし、売上に関しては、個別の得意先ごとの特殊事情なので、これを原価率に反映させないというのがセオリーです。

しかし、税理士や会計士の試験では「売上値引・割戻しも原価率の計算に反映させる」と問題文に書いてあることもあるので、その場合は事後的な原価率を計算してください。
ただ、教科書的には計画数値が出ます。
引き渡しの時に設定すべき一般的な全商品あるいは全得意先共通の〓【00:07:04】は、計画数値の売価と仕入の原価をぶつけて原価率を出します。
引き渡し時の原価と売価をぶつけるということを知っておいてください。
これをきちんと徹底的にイメージできていないと、原価率で困ることになります。

ここで練習問題っぽいことをやってみたいと思います。
仕入と売上に関して、値引や割戻しは仕入や売上から直接控除することは簿記2級で学習しましたが、今回は仕入値引という勘定科目を使います。
簿記1級では決算整理で仕入と相殺するやり方もあります。
期中では売上や仕入から値引・割戻しを控除しないで、「仕入値引」「仕入割戻」「売上値引」「売上割戻」という勘定科目を使うやり方もあります。
今回はこのやり方で練習問題を出します。

4/6の時点での試算表は売上が1,200、仕入が960、仕入値引が10、仕入割戻が50、売上値引が50、売上割戻が50です。
この場合、損益計算書上の純売上は1,100で売上原価は900になります。
しかし、1,100と900を比較して原価率を出すことはありません。
原価率を出すときには、売上値引と売上割戻は加味しないで、売上1,200と仕入900を比較します。
売上値引と売上割戻は事後的な数値なので、もし、売上の金額に売上値引と売上割戻の金額が加味されて1,100となっている場合は、逆算して1,200という分母を用いて原価率を計算してください。

通常は三分法を使うので、値引・割戻しを売上と仕入から直接控除するやり方ですが、値引と割戻しを明示しておくほうがわかりやすいです。
売上は引き渡し時の売価である1,200、仕入は値引・割戻しを考慮した純仕入高の900を使って原価率を計算します。
原価率の計算は事前数値がセオリーですが、問題文の条件をよく見て、その指示に従ってください。
今回紹介した倉庫の絵をイメージしてください。

私はいつもあなたの簿記1級合格を一生懸命応援しています。
今回の話をきっかけに、原価率に対して自信が持てるようになっていただければ幸いです。
ここまでご視聴いただきまして誠にありがとうございました。

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