賃金動向、基準内横ばいで一時金3.76%減少(日経12*4*30*1,9)

日経新聞社がまとめた2012年の賃金動向調査(一次集計)によりますと、主要企業の賃上げ率は1.79%と前年実績(1.77%)とほぼ変わらず横ばいでした。基準内賃金の額は全体で307,246円です。平均年齢は37.5歳です。

また、年間一時金支給額のほうは前年比3.76%減の152万9162円であり、3年ぶりの前年割れとなったようです。

調査対象は、日経新聞社が独自に選んだ有力な非上場企業ということですので、未公開企業だけど、ある程度財務基盤が強い中堅企業の賃金状況を表している、とイメージすればいいでしょうか。

以上のデータをちょっと加工するだけでも、日本企業の経営実態と従業員の状況、さらにはコスト管理上注意すべきポイントといった有力なデータがとれます。

ちょっと、いくつかやってみましょうか。

1.非上場有力企業の年収状況

基準内賃金307,246円×12ヵ月+一時金1,529,162円=5,216,114円

→平均年収は520万円くらい。
(残業手当等は入ってないかもですが)

なお、民間給与実態統計調査(平成22年12月31日時点)では、給与所得者の平均年収は412万円と発表されています。

単純比較ができるかどうかわかりませんが、非上場有力企業のレベルになれば、日本全国の平均よりも100万円ほど高いんだな、という印象を受けますね。

2.従業員1時間あたりの賃金コスト

たとえば、総務省統計局のデータによれば、平成22年における常用労働者の1ヵ月実労働時間は全国平均で149.8時間です。

これに12をかけると149.8時間×12ヵ月=1797.6時間が得られますので、仮に年間1800時間を標準的な労働時間とみなして計算しましょう。

→5,216,114円÷1800時間=2897.8…円/時間

おおむね2,900円が、調査対象企業の時間あたり賃金コストと推定できます。

御参考までに、全国平均だと
4,120,000円÷1800時間=2288.8…円/時間です。

その差にして1時間あたり609円。倍率にして1.266倍。

この差が常識の範囲なのか、格差と呼ぶべきかは、皆様のご判断にお任せします。

3.従業員10分あたり(1分あたり)の賃金コスト

ここからは、ややマニアックなお話です。

時給2,900円とすると、それを6で割れば10分あたりの人件費がでますね。

2,900円÷6=483.3円/10分(1分あたりなら、48.3円です。)

☆これが何を意味するか、経営者(雇用者)になったつもりで考えてみてください。

(例1)ある37歳の中堅社員が、椅子に座ってスポーツ新聞を10分間読んでいる。

(例2)ある37歳の中堅社員が、トイレに10分間座って、雑誌を読んでいる。

(例3)ある37歳の中堅社員が、同僚と世間話を10分間している。

(例4)ある37歳の中堅社員が、取引先の質問に答えるために10分間、必要な資料を探している。

(例5)ある37歳の中堅社員が、上司に頼まれた書類を運ぶために台車を使って、書庫から職場まで10分間かけて移動している。

(例6)ある37歳の中堅社員が、お客様と面談して、新規受注の相談を受けている。

以上6つの例をあげましたが、どの活動をしていても、会社はチャリーン、チャリーンとその時間消費に対して483.3円ずつお金を投下しています。

ある意味、経営者は従業員の時間を「10分あたり483.3円支払って買っている」ということができるのですね。

そこで質問です。

以上の6つの活動のうち、「仕事」と呼べるのはどの活動でしょうか。

…おそらく、第一印象としては、資料探し(例4)、書類運び(例5)、
受注相談(例6)の3つを上げた方もいらっしゃるでしょう。

たしかに、「業務」という意味では間違っていませんが、経営者の立場では、ブッブー(間違い音)です。

【重要】
経営者にとって、営利目的に沿った活動は
「お客からお金をもらうことに直結した行動」だけです。
したがって、資料探しはムダ、移動すらもムダです。
極力ゼロになるように、普段から段取りすべき分野なのですね。

つまり、答えは「受注相談活動」ザッツ・オールです。

ここが、現場の従業員と業績責任をおっている管理者との大きなギャップなんですよ。

「仕事をしている体裁」があれば、給料をもらえる、と思うのが雇われ人意識です。

しかし、それがお客から喜ばれ、報酬をいただける状況に繋がっていなければ、経営者にとっては無意味なんですね。

いろいろな会社を見てきて思うのですが、利益に結びつく仕事と、見た目はやった感がある作業(無駄な会議含む)の区別がついていない職場ほど、その後あがってくる月次決算などは赤字だったりします。

これは、経営管理者側にも責任があるのですけどね。

さて、ご自身が勤めている会社の時間あたり賃金コストはどうなっているでしょうか。

いちど、チェックしてみると興味深いと思いますよ。

以上は、時間あたりコストと業務内容の関係に見られる生産性の違いです。

もうひとつ、会計的なことを申し上げますと、たとえば工場における現場の作業員に払う賃金は、原価計算上「直接労務費」といって、
働いた時間×時間あたり賃金=各製品の原価に直接チャージします。

基準内賃金は、この直接労務費になりやすいです。

いっぽう、一時金のような賞与手当は、年間固定で支給される性質のため、各製品の原価に直接チャージできません。

したがって、いわゆる「間接費」という扱いになり、他の諸経費(電気代、ガス代、減価償却費など)といっしょに合算されて、便宜的にいっていの配分基準で各製品に無理やり配分される、という計算経路をたどりますよ。

日商簿記2級の工業簿記で出るお話です。

ご参考になれば、幸いです。

柴山式簿記講座受講生 合格者インタビュー
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