塩野義製薬が転換社債200億円発行(日経14*12*2*17)
2014年12月1日に塩野義製薬がユーロ建ての新株予約権付社債発行を発表しました。
「2019年満期ユーロ円貨建転換社債型新株予約権付社債の発行に関するお知らせ」
http://www.shionogi.co.jp/company/news/2014/qdv9fu000000lvqx-att/141201_3.pdf
これによると、社債発行の手取り金は約200億円、払込期日および発行日は12月17日とのことです。
額面は1000万円です。
新株予約権というプレミアムが付されており、新株予約権付社債の発行価額が103.0%である点と、ゼロクーポン(利払いなし)である点が、特徴的ですね。
償還期日は2019年12月17日なので、5年満期です。
転換型なので、もしも新株予約権が行使されて、株式が発行された場合には、投資家の側では、払い込んだ社債の金額が、そのまま株式の代金に転用されるので、新たな払い込みが発生しない、ということですね。
ちなみに、転換価格は4,180円です。
社債を買った投資家は、2015年1月5日から2019年12月3日までの間に、4,180円の価格で社債を株式に転換できる、という条件になります。
で、気になる発表時(12/1)の株価ですが、終値で3,050円でした。
なお、12月1日における塩野義製薬の発表時刻ですが、転換型新株予約権付社債の発行が16:30発表、転換価格等の発行条件の発表が21:25です。
12月1日15:00に取引を終えた時点での塩野義製薬の株価が3,050円なので、それをふまえた転換価格の決定です。
この点は21:25の発表でも触れられており、転換価格のアップ率は、
(4,180/3,050)-1=0.37049… つまり、37.05%です。
これより株価が上がるとなれば、転換権の行使がなされることになりますね。
そして、この発表を受けた翌日(12/2)の塩野義製薬の株価は、やはり上がっています。
終値は3,190円と140円アップし、上昇率は4.59%になりました。
こういった情報を社内で知っている人が、裏で株を仕込んでいたら、インサイダーになるわけですね。
ちなみに、2014年3月31日の塩野義の株価は、1,864円でした。
7月末は2,226円です。
そして現在は3,190円?
9月1日の段階でも2,400円ですね。
10月の中旬くらいで2300円台、11月にはいると2,900円を超えてきます。
かなり順調すぎる株価の上昇っぷりです(笑)。
3月末からすると2倍が見えてきた感じっすねー。
どの段階でこういった財務戦略が決まったかわかりませんが、事前にわかっていたらウハウハになります。
まあ、内部の人はそういったズルはいかんよ、というわけですね。
この機会に、塩野義製薬の財務体質を見てみましたが、これは優秀でした。
自己資本比率80.1%でROE9.42%とは、恐れ入り谷の鬼子母神です。
確かにこれなら4000円くらいの転換価格でもいけそうな気がしてきますねー。
高い自己資本比率で10%レベルのROEという意味がおわかりでしょうか。
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⇒ http://bokikaikei.net/2014/11/112729122.html
ただ、塩野義製薬の2015年3月期における予想一株利益は、2014年3月期(124.85円)に対して大幅に減少し、89.58円となってしまいます。
一株当たりの利益がずいぶんと下がりますね。
ざっくり25%を超える下げ幅です。
これは株価にいい影響があるとはいいがたい。
こういったことから、自己株式の取得をすることも同時に発表しています。
つまり、転換社債型の新株予約権付社債を発行し、その資金を自己株式の取得に充てましょう、というストーリーなのですね。
たとえば、総資産5700万円、自己資本4600万円のバランスシートがあったとしましょう。
バランスシート (単位:万円)
(資産) 5,700 (負債) 1,100
(資本)4,600
社債は負債の一部なので、200万円の社債を発行したら、次のように資産200万円の増加と負債200万円の増加が両建てとなります。
バランスシート (単位:万円)
(資産) 5,900 (負債) 1,300
(資本)4,600
さらに、この200万円の資金を自己株式の取得に充てると、これは資本の控除科目なので、次のようになります。
バランスシート (単位:万円)
(資産) 5,700 (負債) 1,300
(資本)4,600
自己株式△200 (資本の内訳科目)
バランスシート (単位:万円)
(資産) 5,700 (負債) 1,300
(資本)4,400
このように、自己株式の取得は自己資本の額を引き下げるので、結果としてROE(自己資本利益率)を引き上げ、1株当たり利益も引き上げることにつながるのですね。
もともと自己資本比率が8割あるので、少々の負債増加はへでもない!という感じでしょう。
以上、塩野義製薬の財務戦略に関する時事ニュースのお話でした!