ライツイシュー(株主割当増資)が広まる(日経13*5*21*15)
ライツイシューという資金調達方法が最近脚光を浴びています。
このライツイシューという形の資金調達の日本第1号案件とされているのは、2010年(平成22年)3月に47億円を調達したタカラレーベンです。
その後2012年10月のADワークスは上場型のライツイシュー第2号となっています。
この間、約2年の間があります。
あまり積極的に活用されていなかったようですね。
しかし、2013年になって、活用例がゾロゾロと出てきました。
3月:クレアHD
4月:IRジャパン、フォンツHD
5月:日本エスコン、Jトラスト、メガネスーパー
(資料:日経新聞)
ここにきて一気に6件ですね。
もともとこの制度、当初は手続き期間が長いなど、使いにくい側面があったようですが、そういった部分を整備した成果もあるのではないか、といわれています。
ここで基礎知識です。
ライツイシュー
既存の株主に、新株予約権を無償で割り当て、その権利行使をしてもらうことで増資を行う方法です。
もしも、既存の株主が全員(100%)権利を行使したら、増資後もまったく株主間の持ち株比率は変わりませんので、増資の前と後で、それぞれの株主にとっての不利益はほぼないです。
※ここでの不利益の種類
(1)他の株主が株数を増やし、自身の持ち株比率が下がる
(2)(1)に関連して、自身の持ち株あたりの利益が減る。
(希薄化のデメリット)
また、一部の株主にだけ権利を与えるのではなく、株主ぜんたいに権利を割り当てるため、一部の株主に有利な発行で株式を割り当てる場合の面倒な制約・手続がいりません。
なお、ライツイシューには、権利行使されなかった新株予約権を証券会社が引き受けるコミットメント型と、引き受けないノンコミットメント型の2つがあります。
タカラレーベンとADワークスはいずれもノンコミットメント型でした。
4月に実施するIRジャパンは、我が国事例としてはじめてのコミットメント型です。
各株主が新株予約権を行使して払い込みをしてきた場合、株式の発行会社のバランスシートは、増資として資本金を増加させます。
(取引例)100億円を増資し、払い込みを受け、すべて資本金として計上した場合。
バランスシート (単位:億円)
現金預金: 100 資本金: 100
現在、日経平均が15,000円を突破するなど、株式市場が活況であることも後押しの一因となっていると思います。
ちなみに、いわゆるストックオプション(役職員などへの労務の対価としての新株予約権の付与)とライツイシューは、どちらも新株予約権の付与ではありますが、その制度の趣旨や背景が異なってきますので、この機会に比較して考えてみると、いっそう理解が深まることでしょう。