三越伊勢丹が営業利益300億円(日経13*5*11*14)
三越伊勢丹ホールディングスは、5月10日に2014年3月期の連結営業利益が前期比13%増加の300億円になる見通しを発表しました。
2期連続の過去最高益です。
旗艦店の改装で衣料品の売上が拡大したり、独自企画商品による採算性改善も寄与していたようです。
まだ業績が上昇する余地もあるとのことですから、好調さがうかがえますね。
売上高は1兆2800億円と4%増加します。
三越伊勢丹の単体でも200億円の営業利益を見込み、12%も増える目算です。
ただし、経常利益は330億円の予想で4%の減少見込みです。
その理由は何かというと、旧三越の統合に伴なって発生していた負ののれんの償却が前期で終了したため、過去5年間にわたって営業外収益を130億円強増やしていた主な要因がなくなることが大きいようです。
負ののれんというのは、一般に、買収先の会社の時価純資産(時価ベースで評価した資産と負債の差額)に対し、買収価格が低い場合に生じる差額です。
たとえば、その会社の土地などの資産の時価総額が1000億円だったとして、負債の時価総額が600億円だったとすれば、差し引き400億円が時価の株主持分(純資産)となりますね。
この場合、常識的には400億円の時価ベースの持分なのですから、400億円で買収すれば等価交換となって、経済合理性があるように感じられます。
しかし、会社は買収された後に資産を売却処分することは想定されていないのが普通です。
つまり、買収先の会社は売却処分せずにそのまま営業を続けることによって、将来的にさらに成長するとか、あるいは買収した企業との統合で相乗効果(シナジー効果ともいいます)を得ることができるかもしれません。
となれば、買収に当たっては将来の成長性や相乗効果に見合った分を評価して、追加で買収価格を増やすのが多いパターンです。
この追加評価分がのれんとなり、無形資産をほんらいは形成するのですね。
しかし、旧三越の買収のケースのように、買収時点では株価が低いなど、将来性などに対して悲観的な評価がなされている場合には、その時点の時価純資産よりも買収価格が安くなっていることがあります。
たとえば400億円の時価純資産を300億円で取得するとします。
この場合、差額の100億円が負ののれんと言って、安く買った分として収益に計上されるのです。
ちなみに、今の会計ルールでは、負ののれんは発生した年に一括して特別利益というところで計上されます。
しかし、今から5年ほど前、経営統合した当時(2008年頃)には、まだ
現在の会計ルールとは異なった取り扱いをされていたので、負ののれんを複数年にわたって少しずつ収益化するという償却計算を行っていたのですね。
(当時は、負ののれんは20年以内の年数で償却=徐々に収益化するというやり方でした。)
いずれにせよ、安く買ったケースですから、経営統合に伴って、安く買った分だけ収益が出ることになります。
それが、経営統合した当時の会計ルールに従い、複数年にわたって少しずつ営業外収益として計上していた、という処理がとられていたのです。
もしも現在の会計ルールで同様の負ののれんが生じたら、その年にぜんぶ特別利益として一括計上していたことでしょう。
今は、毎年のように何らかの会計基準が頻繁に変わるので、ある大きな経済事象がどの年度に発生したかによって、処理が変わることがありえます。
あまり毎年ひんぱんに会計ルールが変わると、どうも処理に一貫性が保てなくなりますし、現場の経理担当者の方も、振り回される形になって苦労が絶えませんね。
今回は、三越伊勢丹の2期連続営業最高益更新とともに、負ののれん償却による経常利益の増加減少が終了するという興味深いテーマをご紹介させていただきました。