決算書は「利益4姉妹」の性格にあわせて活用!(日経13*4*2*17)

4月2日の日経17面、中ごろの囲み記事で「わかる財務」というシリーズものの連載がはじまったようです。

第1回は、「決算書こう読む1」だそうです。

サブタイトルは、「利益、大別すると3つ」となっていました。

簡単にポイントをいいますと、決算の流れをつかむうえで、とりわけ重要なのが、営業損益・経常損益・最終損益(純損益)の3つだよ、という主張ですね。

1. 営業利益 … 本業のもうけ
2. 経常利益 … 総合的な収益力
3. 純利益 … 最終的なもうけ

このように考えられます。

事例として、サッポロHDの2012年12月期決算の数値が出ていました。

売上高 4924 億円(前期比 +10% )
営業利益 144 億円(前期比 ▲24% )
経常利益 136 億円(前期比 ▲19% )
純利益 53 億円(前期比 +70% )

新聞紙面での解説では、「本業の苦戦で営業利益と経常利益は減っているが、土地売却益(特別利益)の計上などで純利益が急増するケースもある」というコメントでした。

たしかに、一理ありますね。

※なお、偶然ですが、2013年4月1日にリリースした柴山塾4月号のテーマは、まさにこの「サッポロHD」でした。上場企業の決算書を毎月、
生分析する活きた財務分析講座です。

柴山塾→ http://bokikaikei.net/2006/07/post_62.html

ここで、損益計算書(P/L)の表示形式を、簡単にご紹介いたします。

損益計算書
1. 売上高
2. 売上原価
  売上総利益…A
3. 販売費及び一般管理費
  営業利益…B
4. 営業外収益   
5. 営業外費用
  経常利益…C
6. 特別利益
7. 特別損失
8. 法人税等
  当期純利益…D

以上、ほんとうは損益計算書の上で表示される利益は4種類あります。

この時の連載記事では、売上総利益を除く営業利益以下の3つが、とりわけ財務分析をする上では重要だといっているのですね。

ちなみに、この3つの中で、どれか一つだけを取り出して分析しようとしたら、どれがいいのか?

こたえは、「分析の目的による」が正解です。

会社の営業力を知りたいならば・・・・・・・「営業利益」
会社の総合的な実力を知りたいならば・・・・「経常利益」
会社の配当財源がどれくらい増えたかは・・・「当期純利益」

をそれぞれ見ればいいでしょう。

営業利益は、営業関係の仕事の人が見るのにいいでしょうし、経常利益は、経営者ないしコンサルタントなどが興味を持つところですし、当期純利益は、配当の額を気にする株主と、株価に興味がある投資家が注目します。

このように、会社とのかかわりの持ち方が異なると、チェックすべき利益が変わってくるのですね。

以上の3つを「利益3兄弟」とするならば、売上総利益を加えた4つは、さしずめ「利益4姉妹」といったところでしょうか。

では、新聞記事では仲間外れにされた売上総利益は、情報としての価値が劣るのでしょうか。

いえいえ、そんなことはございません。

売上総利益は粗利ともいわれ、商品の売価から原価を引いただけという意味で、たしかに荒削りな利益といえなくもないので、じゃじゃ馬をならすのに似て、扱いが難しそうな印象を受けます。

しかし、営業利益以下のように、さまざまな経費項目などの雑音が入らないため、見方によってはかなり「ピュアな奴」なんですね。

簿記の世界では『帳尻を合わせる』という言葉がありますね。

損益計算書を作る時は、頭=上から順々に計算していって、一番下で計算を合わせますが、分析をするときはお尻から…いやいや、下から上に見ていくのが、実践的なセオリーです。

・「当期純利益」は人生経験豊かで面倒見のいい長女、

・「経常利益」はバランスがよく、場の空気を読める次女、

・「営業利益」は馬力があって一直線でわかりやすい三女、

・「売上総利益」はまだ人生の機微がわからず純粋で甘えん坊の四女、

といったところでしょうか。

…はい、ここまでで柴山の「妄想が暴走状態」は終了です。

たとえ話はここまでにしまして、売上総利益の使い方です。

ここは、一切の不純物がない純粋な「製品そのものから得られる利益」ですね。

製造業を除けば、「付加価値」と同義です。

つまり、その製品そのものからもたらされる価値でありまして、これが売上高に対して高い比率を占めているほど、製品の競争力が高いと考えられます。

たとえば、仕入原価60円の物を100円で売れれば粗利は40円、粗利率は40%ですが、もしも製品の魅力が乏しくなって80円でしか売れなくなれば、粗利は20円、したがって粗利率は25%(20円÷80円)にまで下がってしまいます。

つまり、「同じ仕入値段でも、より高く売れる製品は、粗利が高い」といえますので、製品の競争力が高い、と一般的に判断できます。

☆今日のポイント

「売上総利益率は、製品の競争力を判断するものさしである」

ご参考になさってください。

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