ソフトバンクが子会社から500億円の受取配当金(日経13*3*19*19)
ソフトバンクは18日に連結子会社のモバイルテックから500億円の配当金を受取り、19日に効力が生じる旨との発表をしました。
(参考)
http://www.softbank.co.jp/ja/news/press/2013/20130318_01/
では、ソフトバンクの発表内容をサイトから引用させていただき、いっしょに検討しましょう。
連結子会社の配当決定に関するお知らせ
2013年3月18日
ソフトバンク株式会社
当社の連結子会社であるモバイルテック株式会社(以下「モバイルテック」)が、2013年3月18日、剰余金の配当について決定いたしました。
これに伴い、当社の個別決算に影響が生じる見込みとなりましたので、下記のとおりお知らせいたします。
記
1. モバイルテックの配当の概要
(1)配当金総額 50,002百万円
(2)効力発生日 2013年3月19日
2. 当社の業績に与える影響
当社は、モバイルテックの株式を100%所有しております。
当該配当の効力発生に伴い、当社は2013年3月期の個別決算において、受取配当金50,002百万円を営業外収益に計上する見込みです。
なお、連結子会社からの配当であるため、2013年3月期の連結業績に与える影響はありません。
ポイントは2つです。
(1)ソフトバンクの単独決算(親会社の決算書)では、貸借対照表上で現金預金が500億200万円増加し、同時に損益計算書上で営業外収益500億200万円増加する。
(2)ソフトバンクの連結決算(子会社を含めたグループ合算)では、グループにおける「内部取引」であるため、貸借対照表における現金預金の増加はなく、同時に損益計算書に置いて営業外収益の増加もない。
「???????なんのこっちゃ。」と思った方もいらっしゃったことでしょう。
これはまさしく日商簿記1級レベルの「連結会計」のお話です。
ほんと、日経新聞の会計記事って、よく1級レベルの知識がないと理解できない話題が良く顔を出します。
いいかえるならば、少なくとも1級インプットレベル(合否問わず)の知識がなければ、上場企業の決算をきちんと理解することは困難になってきているのかもしれませんね。
ここでは、超入門ポイントを解説します。
内部取引とは、「会計報告を行う組織内での取引」であり、外部に決算報告する際には、相殺して消さなければならないものです。
(取引1)
A社は、まったくグループ関係のないXの株式を5%持っていたため、X社から配当金10を受け取った。
<A社の仕訳>
(借方) 現金預金 (B/S) 10 (貸方) 受取配当金 (P/L) 10
<X社の仕訳>
(借方) 利益剰余金 (B/S) 10 (貸方) 現金預金 (B/S) 10
【A社グループ】
A社(親) B社(子)
※現金の増加と、受取配当金=営業外収益の発生!
配当金10
X社(外部者)
このように、X社が外部の者であれば、A社の単独決算でも現金の増加=受取配当金という収益の発生という認識をします。
では、次にグループ内の配当の受け渡しを見ていきましょう。
(取引2)
A社は、子会社B社(100%の株式を所有)から配当金10を受け取った。
<A社:個別決算の仕訳>
(借方) 現金預金 (B/S) 10 (貸方) 受取配当金 (P/L) 10
<B社:個別決算の仕訳>
(借方) 利益剰余金 (B/S) 10 (貸方) 現金預金 (B/S) 10
【A社グループ】
A社(親) B社(子)
※現金の減少、利益剰余金の減少10
※現金の増加と、受取配当金=営業外収益10(個別)
以上のように、A社(親)の個別決算上は現金10が増え、営業外収益が10発生しています。
しかし、上場企業の決算発表は「連結ベース」が基本情報ですので、A社の決算書とB社の決算書を合算してしまえば、B社の現金10の減少とA社の現金10の増加が同時にグループ内で生じても、けっきょくは資金の保管場所がB社から同じグループ内のA社に移動しただけ、と考えることになります。
となれば、A社の現金増加は、たんにB社の金庫から移動しただけですので、A社グループ全体の大きな目で見ると、A社グループはなんらトクをしていません。
よって、外部からの収益の受取はないのですから、当然、連結(グループ)全体の視点では、受取配当金という収益の貸方計上も取り消すべきとなります。
収益は貸方が発生ですから、それを取り消すには、反対側の借方に記帳すればよいのです。
<A社:連結決算の相殺消去仕訳(内部取引の相殺)>
(借方) 受取配当金 (P/L) 10 (貸方) 利益剰余金 (B/S) 10
これが、今回のソフトバンクの発表で言うところの、「なお、連結子会社からの配当であるため、2013年3月期の連結業績に与える影響はありません。」
という表現の本質なのですね。
いやはや、日経新聞の企業財務記事、なかなかレベルが高くて、読み応えがありますよね。