米デルがMBOで非上場化(日経13*2*6*1)

米パソコン大手のデルが5日に発表したところによりますと、創業者のマイケル・デルCEOと米投資ファンドのシルバーレイク・パートナーズがデルの全株式を共同買収し、株式を非公開にするとのことです。

買収総額は244億ドル(約2兆2700億円)ですから、相当な金額が動くわけです。

2000年初めごろは、ビジネスモデルの超成功例というかたちで、あちこちで絶賛されていたデルですが、スマートフォンやタブレットの普及という市場環境の大きな変化に押された形でパソコン市場の様相が激変したのが大きかったですね。

ハード商品を前面に出して一時代を築いた企業ですが、まだ10年かそこいらで、株式非公開という戦略を取らざるを得ないほど追い込まれる今のマーケットの変化の速さがうかがえます。

数年前の成功体験があっという間に陳腐化するのですから、経営者はほんとうに息つく暇がありません。

ここで、MBOについて、考えてみましょう。

【MBO】Management Buy-Out の略語。
経営陣により株式または事業用資産を買い取って実務面のトップとしてだけでなく、所有面においても会社を支配すること。

経営陣による株式の過半数の取得などの手法が代表的。

会社の所有者(オーナー)は株主です。

株式を公開している上場企業は、会社の支配権を表す株式が世間に散在しています。

したがって、上場企業の経営者は、一般的に見て「株主から雇われの身」というイメージです(厳密にいうと、雇用者ではなく経営実務の委託先なのですが…)。

上場企業では、投資家(将来の株主候補)や現在の株主の監視の目が厳しく、ちょっとでも投資家たちの意にそぐわない行動を経営者が取ろうとすると、すぐに「株価下落」という罰による報いを受けるプレッシャーと背中合わせなのですね。

こうなると、経営者が独自の経験とセンスでトライしてみたい!と思っている戦略や、迅速かつ勇敢なトライをしようにも株主の理解を得るのに時間がかかったり、理解を得られず株が売られて株価急落なんていうことになり、制約が多いために窮地を脱出する大胆な手が打てなくなる可能性があります。

特に、昨今のデルを取り巻く経営環境は急速に悪化しており、これについて権限を集中して経営陣のかじ取りを大胆かつ繊細かつスピーディーに行う必要性が高まっていると想像できます。

なお、今回のデルのように、企業を買収しようとすれば、相当な資金量が必要になります。

となると、経営陣の自己資金では足りなくなるのが通常ですから、金融機関からの融資やMBOファンドなど、外部資金を活用して買収を実現させることになります。

今回は株式の非上場化で現経営陣に経営の決定権を集中させ、厳しくなったマーケット環境から脱出するための意思決定迅速化がMBOの主な目的と想像されますが、これ以外にも、事業承継対策としてMBOを利用するケースも考えられます。

つまり、高齢化した創業オーナーが、引退するさいに、現在の経営陣に経営権を引き継ぎ、一定の創業者利益を享受するという成果を実現するためにMBOを使うのですね。

この場合には、投資資金を出す金融機関やファンドにとって、収益性・安全性などの財務体質が良好と判断できるかどうかや、その企業のマーケットが成長しているまたは安定的に推移している、さらには現経営陣とオーナー創業者との経営手腕に大きな格差がないなど、いくつかの要件を満たす必要がありますが、それでも要件を満たした場合には魅力的な事業承継手段の一つとなりえます。

この機会にMBOという用語に慣れ親しんでいただきたいと思い、取り上げてみました。

柴山式簿記講座受講生 合格者インタビュー
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