法人税率の引き下げ、ようやく各党の公約に(日経12*12*11*5)

衆院選で経済活性化が選挙の焦点になっていましたが、法人税率の引き下げを公言するようになっていたようです。

これまでは約40%だった法人税の実効税率を約35%に下げる流れにはなっていますが、国際的にはまだ高い方なので、さらに下げて国際競争力を高める必要があるのではないか、という考え方です。

ここで基礎知識です。

法人税率と法人実効税率って、どこが違うのでしょうか。

法人税は、国が法人企業から徴収する法に基づいた税金です。

国に治める税金を「国税」といい、地方に治める税金を「地方税」といいますね。

もともと法人税は所得税の一部でした。

明治20年に所得税が創設されましたが、そのとき法人への課税は見送られています。

法人に対して課税を行うようになったのは明治32年で、第一種所得(法人所得)が創設されました。

その後、時を経て、法人税が所得税から独立したのは昭和15年(1940年)です。

あまり知られていませんが、給与に対する源泉徴収が始まったのもこの年ですよ。

このころの時代背景を考えれば、何のために徴収されたかは…

おわかりですよね~。

「だって、戦争にはお金がかかるんだもん…」
源泉徴収と年末調整は、世界でもまれにみる、大大大成功した「高性能の税金徴収システム」です。

…いや、私たち国民にとってではないですよ。徴税側の立場で、です。

だから、戦後の混乱を完全に脱却しても「源泉徴収」と「年末調整」という、極めて民主主義の根幹を脅かすであろうシステムが、いまだに続いています。

これ、選挙で問題にしても、だれもピンと来ないかもしれませんが…

ああ、そうやって今年も「年末調整」という名のもとに、簡単・便利なコンビニ的納税方法に流されて国民が政治への関心を奪われてしまうとは…

…話がそれました(かなり政治的には財源確保という観点から本質かつ触れてほしくない話だと思いますが)。

さて、法人税のお話でしたね。

一時期、法人税率が37.5%なんていうときもありました。

それが徐々に下がってきて、今では25.5%に復興特別法人税10%を期限付きで課されますので、合計して28.05%となります。

これは原則ですが、多くの会社が該当するであろう資本金1億円以下の中小法人では、年間所得800万円までは15%になりましたので、復興特別法人税10%を合わせると、16.5%ですね。

法人税は、現状、所得(税法上の利益ですね)に対して28.05%または16.5%かかります。

以上に対して、法人実効税率とは、
「所得に対して法人が支払う税金の比率」です。

所得を課税の対象として納税する税金としては、法人税のほかに住民税と事業税がありますね。

つまり、法人が支払う法人税・住民税・事業税の所得に対する負担の割合を実効税率というのです。

住民税がたとえば標準で「法人税の17.3%」であったり、事業税が所得に対してざっくり2%~5%程度だったりして、これらを足すと、従来は40%くらい、これからは当面35%くらい、というイメージでお考えいただけたらと思います。

法人実効税率は、現状として、おおむね35%前後に今後はなるよ、というお話です。

このように「法人税率」といった場合と、「法人実効税率」といった場合では、その意味するところが随分変わってくるんだなあ、とご理解いただければ幸いです。

ちなみに、法人税の負担額は、損益計算書の一番下から2行目のところに表示されます。

「当期純利益(当期純損失)」のすぐ上ですね。

【表示例】
損益計算書
売上高 ×××
売上原価 ×××
販売費・一般管理費 ×××
営業外収益 ×××
営業外費用 ×××
特別利益 ×××
特別損失 ×××
税引前当期純利益 ×××
法人税等 ××× ←ここです!(法人税+住民税+事業税)
当期純利益 ×××

以上、これからの政治の一つの争点となるかもしれない法人税のお話でした。

柴山式簿記講座受講生 合格者インタビュー
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