オリエンタルランド、時価総額1兆円超(日経12*10*30*19)

(注)オリエンタルランドのバランスシートと株価総額の図を、次のURLでご覧いただけます。

→http://ameblo.jp/studyja/entry-11397783749.html

(図版だけ見たい場合はこちら)
→http://voice-seminars.com/merumaga20121106.png

10月29日の東京株式市場で、東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドの株式時価総額が1兆92億円になったそうです。

これは、2000年8月以来、12年ぶりの1兆円超えだとか。

ディズニーランドなどの集客力の強さを背景に、今後の業績上方修正を期待して投資家が買っているだろうとの見方を紙面ではしています。

ここで、みなさんが目にする会社のバランスシート(貸借対照表)における「純資産(かつては資本の部)」と、どのように違うのか、について、かんたんにご説明したいと思います。

基本的には、株式時価総額もバランスシートの純資産も株主の持分をおおむね意味している、という点では共通しています。

たとえば、2012年9月30日時点のオリエンタルランドの純資産は4,046億円でした。

この数値の計算根拠は、会社が所有している会計上の資産6,278億円から、借入金や社債などの負債2,232億円を引いた残高です。

これが、最終的に、会計帳簿に記録されている株主の持ち分4,046億円となるわけですね。

ここで注意が必要なのは、借方(左側)に表示されている資産合計6,278億円の算定根拠です。
時価のある上場株式などは、おおむね決算日時点の時価で評価されていますが、それ以外の、たとえば建物とか土地とか棚卸資産のような事業活動で使用・消費などされる事業資産については、それらを取得した時点、つまり「購入した過去の日付における評価額」をもとに表示しているケースが多々ありますので、資産合計は、いわば「時価と原価の混合数値」なのですね。

こういったわけで、バランスシートの資産合計は、おおむねの目安にはなれど、細かく見ていくと、「なんだかよくわからない数字の塊」とみることもできなくもないです。

このような資産合計から負債を引いた差額なので、計算結果としての純資産も、「だいたい(過去の)原価ベース」の数字が多くの部分を占めています。

総資産の半分以上は、原価ベースで会計上の調整を加えた額です。

ここ、結構会計を知らない人には誤解を招きやすいところなのですね。

「資産総額は、会社が持っている資産の時価合計ではない」ということです。

さらに、バランスシートは原則的に過去の記録の集大成であることが多いですから、将来の成長性などを資産評価に加算するなどということはありません。

ここに、投資家にとって「将来情報としてのバランスシートの限界」があるのです。

そこで、会計上のバランスシートは、あくまで「現在から過去の数値の集積」として参考にとどめておき、投資評価としては、会社の業績(損益計算書)と将来の成長予測をからめてはじき出した「将来獲得できるだろう現金収入(キャッシュ・フロー)」を予想し、それらを将来十数年または数十年分を足した額のかたまりとして、会社の事業評価をするのです。

将来のキャッシュの塊が会社の将来資源(=投資家にとっての資産総額)であり、そこから現時点で評価した借金などの負債による支払い負担を引いた差額が、理論上の企業買収価値の上限であり、それが理屈では株式時価総額に等しいはずなのですね。

そのさいに、過去の蓄積である会計上のバランスシートより、1.5倍とか2倍くらいには将来の予測を考慮した株式時価総額が大きいことが、会社が資本市場で評価を得ているかどうかの判断基準になるでしょう。

オリエンタルランドの場合、株式時価総額(10/29)が1兆92億円で、直前のバランスシート上の純資産が4,046億円ですから、2倍以上の将来性を投資家が感じているといえます。

これらの差額6046億円は、いわゆる無形の資産(インタンジブルズ)の根拠になるものだ、などといわれることもあります。

なお、11月2日3面の日経新聞に、日本の電機業界の厳しい状況を表現するために、パナソニック、シャープ、ソニーの株式時価総額が2兆円ちょっとなのに対し、サムスンの株式時価総額がなんと14兆円以上だという比較事例を出した記事がありました。

ちなみに、パナソニック・シャープ・ソニーの3社合計時価総額は、2007年前半は16兆円あったそうですから、わずか5年で、なんと8分の1にまで下がったというショッキングな事実がこの時の記事でわかりました。

さすがに私も、一瞬わが目を疑いましたが…。

たった5年で14兆円もの株式時価総額を失った日本の電機大手ですが、その間に失ったものは株式市場からの評価だけではないのかもしれません。

いまや10年ひと昔などと、悠長なことは言っていられない時代になりましたね。

柴山式簿記講座受講生 合格者インタビュー
商品に関するご質問・ご相談はこちら