パナソニックが特定融資枠で6000億円調達可能に(日経12*10*16*1)

本日の日経朝刊を見ますと、1面でパナソニックが三井住友銀行など4行と特定の融資分け契約を結び、総額6,000億円までの資金調達を機動的に行えることになった、と報じられています。

これは、かなり大きな金額規模でして、2012年度第1四半期末時点での総資本額(負債+資本)6兆4327億円の約10%にあたります。

複式簿記の入門知識として知っていただきたいことを申し上げますと、

「資産合計」と「負債+資本」は、原理的に一致します。

資産は、いうなれば調達した資金(負債+資本)の具体的な運用の姿ということができます。

たとえば、200億円を借り入れで調達し、100億円を資本金と利益で調達しているとすれば、合計300億円が資金調達額の総額であって、別名「総資本」とも呼ばれます。ときには単純に「資本」とも呼ばれるので、慣れない人には混乱を招くもとになるのですが…

「資金調達額総額としての意味の資本」=簿記上の負債+資本

ともいえます。

また、会社の所有者は株主なので、企業=株主(自己)と考えれば、株主から預かった調達額(簿記上の資本)を自己資本、株主以外から預った調達額(おおむね簿記上の負債)を他人資本と呼んだりもするのです。

簿記会計の用語って、ビミョーに混乱させやすい名称になっていて、ちょっと困りものですね(笑)。

バランスシート
(資産の部)                (負債の部)

                (純資産の部) =株主資本+その他

   ↓                      ↓
【総資産(運用面)】            【総資本(調達面)】

今回のパナソニックの話は、バランスシートの右側(貸方)における総資本(調達)に焦点を当てたものだということがお分かり頂けると思います。

会計の話題は、バランスシートの視点で見ると、資産=運用面で見ているのか、資本=調達面で見ているのかの区別がつくだけでも、ちょっと「プロっぽい」感じがしませんか?

ともあれ、資金調達は、ビジネスを維持・拡大するときの第一歩であり、できるだけ迅速かつ低コストで調達できるにこしたことはありません。

今回パナソニックが締結した融資枠契約は、一般にコミットメントラインとも呼ばれるものです。

一定の上限以内ならば、必要に応じて審査せずに貸しましょう!という企業にとっては迅速な資金調達につながる、ありがたい契約といえます。

いっぽうで、金融機関側では、コミットメントラインの設定により手数料収入がはいります。

ちなみにこの手数料収入、信用を与えている事に対する報酬であり、「利息制限法」やいわゆる「出資法」における「みなし利息」ではないか、という議論がありまして、必ずしも枠いっぱいまで借りるわけではないでしょうし、「元本ゼロとか借入が少ない状態でみなし利息なら、まずいっしょ!?」といった感じで、かつてはコミットメントライン契約の大きな懸案事項とされていたようです。

それが、「特定融資枠設定に関する法律」(平成11年3月29日施行)の第一条で
「この法律は、特定融資枠契約に係る手数料について利息制限法(昭和二十九年法律第百号)及び出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律 (昭和二十九年法律第百九十五号)の特例を定めることにより、企業の資金調達の機動性の増大を図り、もって国民経済の健全な発展に資することを目的とする。」
と規定されたことで、みなし利息の例外として認められ、実務の利便性が高められたのですね。

要は、融資枠設定の報酬自体が、「名前を変えた利息やんけ、自分~」みたいな突っ込みがあったので、それに対する法的対処をしたと考えられているわけです。

こうした背景を知っておくと、時事ニュースって面白いですよね。

なお、新聞記事の話では、パナソニック自体の格付けが下がった場合に、社債やコマーシャルペーパーなど、直接金融(資金の出し手と調達者が直接お金をやり取りする形の資金調達パターン。反対は間接金融(例)銀行借り入れ)をする場合の格付け引き下げ対策になる、ということです。

もしも格付けが下がれば、必然的にその後発行される社債の発行条件が悪くなり、調達コストの上昇(金利アップなど)が想定されます。

昨今の不透明な経済情勢からして、機動的な資金調達の手段をいろいろ持っておくことは、経営上のリスクを減らすという意味でも、非常に重要と言えるでしょう。

柴山式簿記講座受講生 合格者インタビュー
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