JR東日本が支払利息の負担を大きく改善(日経12*10*10*17)
日経新聞の報道によりますと、JR東日本の2013年3月期における支払利息が、前期比で40億円減の970億円程度になりそうだとのことです。
2012年3月期の支払利息は、連結ベースで1,010億7200万円でした。
これが1年後には、40億円以上削減されるだろうという話です。
2012年3月期の営業利益がちょうど3,600憶円の規模なので、営業利益の1%強が改善されますね。
そもそも支払利息1,000億円というのがすごい割合なのでして、おおざっぱに計算しても、1000/3600=27.7%と、実に営業利益の3割近くも金利で消えていきます。
つまりは、それだけ資金調達に伴う利息の支払い負担が大きいということで、これはJRが大規模資本を必要とする鉄道会社であることの大きな特徴の一つと言えるでしょう。
新聞によりますと、1991年に新幹線設備を新幹線鉄道保有機構から買い取った際に「鉄道施設購入長期未払金」として約3兆1000億円の長期債務を負ったのだそうです。
前期末の残高が9,238億円と3分の1以下に縮小されましたが、その長期債務の平均金利が、なんと5.49%という、今の借入利率の常識からするとありえない高金利なのですね。
(今から何十年も前ならば、決して高くはないでしょうが…)
これは、私たちがふだん利用している電車の運賃にも影響しているのでは?と考えてしまいたくなるところです。
そのような高金利の資金調達から、今では徐々に、借入金や社債など、今の金利情勢にあった低金利での調達にシフトが進んでいます。
この点につきましては非常に良いことで、JR東日本の経営努力を讃えたいと思います。
たとえば、去る9月7日に発表した国内普通債の発行条件は、
第87回無担保普通社債(償還2022年9月27日)で年0.869%、
第88回無担保普通社債(償還2032年9月27日)で年1.751%です。
これと比較しても、いかに5.49%という支払金利が膨大な額になるかということが想像できますよね。
なお、企業の金利負担の大きさを判断する財務分析指標として、インタレスト・カバレッジ・レシオというものがあります。
インタレスト・カバレッジ・レシオ(損益計算書版)
(営業利益+受取利息+受取配当金)/支払利息=○倍
ここで、JR東日本のインタレスト・カバレッジ・レシオを連結損益計算書から導き出してみます。
<2012年3月期の連結損益計算書より>
※インタレスト・カバレッジ・レシオを仮にICRと略して表記します。
営業利益 360,024 百万円
受取利息 155 百万円
受取配当金 2,792 百万円
合計 362,971 百万円 …「利払い前事業利益」ともいう
支払利息 101,072 百万円
ICR:362,971÷101,072=3.59倍
一般に、事業会社の健全経営の指標としては、利払い前事業利益は支払利息の4倍以上と考えられます。
したがいまして、現在のJR東日本は、4倍にわずかに届かないものの、それほど悪いレベルではないな、と判断できますよね。
参考までに、比較数値として、今から16年前のICRを見てみましょう。
<1996年3月期の連結損益計算書より>
営業利益 401,872 百万円
利息配当金 2,573 百万円
合計 404,445 百万円 …「利払い前事業利益」
支払利息 279,671 百万円
ICR:404,445÷279,671=1.45倍!
支払利息のわずか1.5倍足らずしか、事業利益の余裕がなかったということです。
金利負担との関係で見たら、これはかなりヤバい状況でしたね。
ちなみに、当時の金利が営業利益に占める比率は…
279,671÷401,872=69.59…%
なんとなんと、営業利益の7割が金利で消えていたとは…
債権者を儲けさせるために営業していたような時代が長く続いていた、と…
その恩恵を受けたのは、いったい誰なんでしょう。
JR東日本に、毎日の如く電車料金を支払っているわたしたちにとっても、乗車料の使い道の一端を知るという意味では、興味深いデータと言えそうです。
5%程度の金利水準で資金調達をすると、営業利益を非常に圧迫するんだな、ということがわかっただけでも、企業経営者の方、高金利の借入の怖さがわかっていただけたでしょうか。
今回は、いろんな意味で、示唆に富んだニュースでしたね。