ソフトバンクがイー・アクセスを株式交換で買収(日経12*10*2*3)
ソフトバンクは10月1日、イー・アクセスを完全子会社とする旨の発表を行いました。
→http://webcast.softbank.co.jp/ja/pdf/20121001_01/20121001_01.pdf
ソフトバンクと言えば、最近、iPhone5の発売があったことを受けて、高速データ通信「LTE」の周波数(通信容量)の確保が非常に重要な経営戦略として浮かび上がっていました。
もともと、つながりにくいというネガティブな評判も聞かれていました。
それに加えてiPhone5向けの周波数の争奪戦という側面も加わり、「企業と企業の統合によるシナジー効果(相乗効果)」よりも、「イー・アクセスの持つ電波を『株式時価総額の3倍という値段』で買った、という印象が強いですね。
ここで基礎知識ですが、
株式交換とは、
買収先の株式と当社の株式を交換し、相手の発行済み株式数をすべて所有することで、完全親子関係(100%子会社)とすることです。
相手の株式をすべて取得する際の対価として、自社の株式を交付(与える)わけですが、そのやり方として代表的なのは次の2つです。
1.新規に株式を発行して、資本金を増やす。
2.すでに取得している自社株を相手に交付する。
そのさい、発行した株式の時価と買収で受け入れた子会社の時価純資産との差額は、連結決算上では「のれん」として無形固定資産に表示されます。
のれんは、今の日本の会計基準では、20年以内に償却という会計手続で徐々に費用に振り分けます。
今回の買収価格を見ると、1株52,000円とイー・アクセスを評価しているので、買収発表直前の株価15,000円前後とくらべて、3倍以上の評価額となります。
買収価格の総額で、1800億円程度とかなりの巨額投資ですね。
PBS(一株あたり純資産)は24,190.80円であるため、これと比較しても2倍以上の開きがあります。
最悪、1800億円の半分近くがのれんとして計上されても不思議ではないと予想します。
そうなると、900億円÷20年としても、年間45億円の営業利益の減少が、予想の業績に織り込まれますね。
もちろん、イー・アクセスの買収による増収・増益効果が期待できるのでしょうから、その増益幅が50億円以上ということになれば、のれんの償却負担をカバーできるでしょう。
ちなみに、買収発表後、イー・アクセスは前日終値の15,070円から19,070円とストップ高を記録しました。
いっぽう、ソフトバンクの株価ですが、こちらは前日終値の3,160円から反対に3,105円へと、株価を下げています。
市場は、「少々割高な買収値段じゃないの?」というリアクションをしているように見えます。
おもしろい両者の株価の反応の違いですね。
以上の観点から、しばらく、ソフトバンクとイー・アクセスの動向から目が離せなくなりましたね。