シャープ、融資の担保にパイオニア株を提供(日経12*9*4*9)
シャープは9月3日に、所有するパイオニア株3000万株を銀行に担保として差し入れたとする大量保有の変更報告書を出しました。
変更報告書によれば、8月28日にみずほコーポレート銀行と三菱東京UFJ銀行にパイオニア株を1500万株ずつ、合計3000万株を担保提供したとのことです。
28日のパイオニア株の終値ベースで計算すると、時価にして約63億円になります。
このような融資の担保として財産を提供した場合、会計上の処理はどうなるのでしょうか。
現実的には、貸借対照表の各項目に関する補足事項の一つとして、注記事項のところに開示されますね。
ここで、基礎知識です。
財務諸表の作成に際しては、注記の手法がしばしば活用されます。
注記とは、財務諸表本体の記載内容に関連する重要事項を、財務諸表の本体とは別の場所に言葉や数値を用いて記載したものです。
これによって、財務諸表の本体は表示の簡潔性(みやすさ)を維持しながら、そこに書ききれない重要な情報を注記事項として補足的に開示し、詳細表示という趣旨も達成できるように配慮されているのですね。
これは、企業会計原則という会計の根本規則における「明瞭性の原則」という考え方を基礎とする制度です。
【明瞭性の原則】
「企業会計は、財務諸表によって、利害関係者に対し必要な会計事実を明瞭に表示し、企業の状況に関する判断を誤らせないようにしなければならない」とする原則のこと。
ここでのポイントは2つです。
1.必要な会計事実を「明瞭に表示」すること。
2.利害関係者が企業の状況に関する「判断を誤らせない」ように
すること。
明瞭表示には、簡潔な表示と詳細表示という、一見相反する価値観が混在していますが、それを「本体の簡潔表示」と「注記の詳細表示」というかたちで、上手に使い分けているのですね。
もうひとつは、利害関係者(=財務諸表の読者)が、会社に関する判断を誤らせないこと、ということがミソです。
積極的な意味としては、利害関係者の理解に資する情報は、ガンガン開示しましょうと理解できますが、消極的な意味としては、利害関係者の理解を誤らせないならば、多少の許容範囲はあってもいいんじゃないの?的な発想もありということですね。
この点、「利害関係者の理解を誤らせない範囲」での、簡便的な処理・表示が認められている場合があります(重要性の原則)。
今回のシャープにおける担保提供有価証券については、詳細表示の観点から、財務諸表の注記事項として開示されることになるでしょう。
借金の担保として、どんな資産が物件の制限を受けているのか、という「制限物権」に関する情報は重要ですから。
貸借対照表や損益計算書など、本体に関連する項目の関連情報のほかにも、注記事項として開示が要求されているものはいろいろとあります。
たとえば…
・継続企業の前提
・重要な会計方針
・1株あたり利益
・重要な後発事象
などですね。
以上、今回は、あまり普段脚光の浴びない「注記事項」について触れてみました。