パナソニック最終赤字7800億円に?(日経12*2*4*1)

パナソニックは2月3日に決算発表を行い、2012年3月期の連結最終損益が7800億円と過去最大級の赤字になる見込であると予想しました。

日本のルールでは、損益計算書上、利益は5段階で表示されます。

1.売上総利益…売上高から売上原価を引いた利益。粗利益。
       製品そのものの収益力とか強みを表す指標です。

2.営業利益…売上高から売上原価と販売費・管理費を引いた利益。
       本業がどれだけ稼ぐ力を持っているかを表します。

3.経常利益…営業利益に財務取引の収支などを加減した利益。
       本業と財務取引(株の売買や借り入れなど)から得られ
 る経営成果です。日本の財務分析上、期間比較・企業間比較などで非常に重視されます。

4.税引前利益…経常利益のほか、臨時・異常な損益を加減した利益。
税金を払う前の最終的な経営成果を表します。

5.当期純利益(最終利益)…税引後に残った利益。
配当の財源の増加分を表します。企業のトータル的な実力の指標です。

このうち、配当の財源の増減をあらわす最終損益において、2012年3月末に7800億円もの損失を見込んでいる、というのは並大抵ではないですね。

2000年以降、3000億円以上の巨額赤字になるのは、2002年3月、2009年
3月、につづき、これで3度目です。

では、過去の大型赤字決算における売上高、税引前利益とともに比較してみましょう。

2002年3月期
売上高       7兆0738億円
税引前利益      ▲5377億円
最終利益       ▲4277億円
※自己資本比率41.8%

2009年3月期
売上高       7兆0765億円
税引前利益      ▲3826億円
最終利益       ▲3789億円
※自己資本比率43.5%

2012年3月期(予想)
売上高        8兆0000億円
税引前利益       ▲8200億円
最終利益        ▲7800億円
※自己資本比率33.3%

以上を見るとお分かりのように、過去2回の巨額赤字とは、深刻度が違います。

売上が過去2回の大型赤字に比べて8兆円と大きいですが、税引前の赤字が以前のケースより数千億円も高い。対売上比にして10%超です。

また、特筆すべきは自己資本比率の著しい棄損です。

以前は、巨額赤字があっても、40%を超える自己資本比率があったので、再建のために資金を投下できたかもしれません。

しかし、今回は30%台前半と、以前に比してかなり厳しい財務安全性となっています。

これは、厳しい見方をすると、三洋電機の統合のマイナス面によるものが多きいでしょう、おそらく。

あきらかに資本効率(総資産に対する利益を稼ぐ力)が落ちています。

この間、経営環境の急激な変化というエクスキューズはありますが、それにしてもかつてのV字回復の勢いが再び取り戻せるのか、心配なところではありますよね。

ちなみに、2002年の4277億円の最終赤字の翌年度は最終赤字が194億円に激減し、2年後には逆に421億円の黒字に急回復し、「松下のV字回復」と称賛されました。

ただし、この時は自己資本比率41.8%という高い財務健全性が背景にあったことを忘れることはできません。

今回の苦境をどう乗り切るか。

パナソニックのこれからの動向に、注目が集まると思います。

柴山式簿記講座受講生 合格者インタビュー
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