三井住友の航空機リース買収、OP監査役に責任(日経12*1*17*1)

まずは一番目の話題、「三井住友の航空機リース買収」です。

三井住友フィナンシャルグループ(三井住友FG)は、16日に英大手銀行のロイヤル・バンク・オブ・スコットランド(RBS)の航空機リース事業の買収に基本合意したとのことです。

買収額約5500億円(約72億ドル)ですから、巨額ですね。

2008年秋のリーマンショック以来、イギリス政府から公的資金の注入を受けてきたRBSがノンコア事業(非核事業部門)の売却を進めていました。

航空機リース事業の売却はその一環ということです。

この買収によって、三井住友FGと住商が共同で手掛ける航空機リース事業で保有する航空機の機体数が90機から約340機へと急増するようで、世界ランキングが15位から一気に4位にまであがるみたいですね。

そもそもリース事業は、資本の大きさが勝負を分けるところがありまして、たくさんの生産手段(この場合はリース物件の規模の大きさ)を持っている所ほど、市場のニーズに多くこたえられるでしょうし、一括購入などによる仕入代金(リース物件代)の低価格化が実現できます。

新興国の成長もあり、これから空輸サービスに対する需要はますます増えていくでしょうから、連動して航空機の需要も増えるはずです。

まさに成長市場に的を絞った投資ということで、FGにとっても戦略上、重要な契約になる可能性が高いですね。

なお、会計処理上は、リースの貸し手(リース業者側)では、
次の3つのやり方が会計基準において認められています。

(1)リース取引開始時に売上高と売上原価を計上する方法
(2)リース料受け取り時に売上高と売上原価を計上する方法
(3)売上高を計上せずに、利息相当額を各期へ配分する方法

ちなみに、三井住友FGは上記(3)の会計処理方法を採用しているようです(有価証券報告書の注記事項より)。

次に、本日2番目の話題、「オリンパス監査役に責任」です。

オリンパスの損失隠し問題に関して、監査役や監査法人の責任を調べていた専門家委員会による報告書が17日付でサイトアップされました。

報告書の日付は16日になっています。
⇒ http://www.olympus.co.jp/jp/corc/ir/data/tes/2012/

結論から申し上げますと、
●監査役はクロ
○監査法人はシロ

だそうです。

監査役は見逃しに対して責任があって損害賠償請求されるようです。

監査法人は「善良なる管理者の注意義務」に反していないそうで、こちらは責任なしとなりそうな雰囲気です。

12月6日の報告書では、監査法人に対して、「問題なしとはしない」と言っていたので、何か釈然としない感じがするのは、わたしだけでしょうか。

なお、善良なる管理者の注意義務とは、「債務者の職業や社会的・経済的地位に応じて、一般的に要求される程度の注意」です。

民法400条の規定が有名です。

つまり、監査法人の社会的・経済的地位に基づいて一般的に要求される程度の注意はしていたので、その範囲で発見でオリンパスの不正を発見できなかったのだから、監査法人にはこの意味での責任はないと考えます、という解釈ですね。

監査役がヤバい(特に財務諸表の開示に関連することで)と感じた時、公認会計士と何らかの意思疎通を図ることってなかったかなあ。
特に監査法人側でも、黒とは言わないまでもグレーくらいには思っていた節がありますしねえ。

監査役が責任なし、監査法人が責任なし、ならまだしっくりとくるんですが…。

まあ、調査委員会の調査と言っても、おそらくいろんな制約があったのではないかと思います(時間的制約、資料的制約など)。

だから、調査委員会の報告がすべての真実を明らかにしている、とは盲信しない方がいいようなきがします、個人的な意見ですが。

でないと、以前、渦中のときに「報告書」を信じて適正意見を出した監査法人と同じような状況に陥ってしまうかもしれませんしね~。

この件は、大王製紙の事件と並んで、「内部統制とは何ぞや?」を考える教材としては近年まれに見る良質なテキストですね(苦笑)。

内部統制が完璧な会社なんて、「幻想でありえね~!」と、世間が気付いたという点では、意義があったかもしれません。

しょせん、会社は「人の集まり」ですから。

さまざまな不十分さ・不満を抱えた中でひしめきあって、調整して、なんとか一定レベルを維持していく、というのが会社の現場の実態です。

柴山式簿記講座受講生 合格者インタビュー
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