会計検査院が、民間の調査員を登用(日経12*1*9*30)
会計検査院が2009年度に採用した特別チームの働きにより、独自の視点にともなう調査の結果、約173億円もの無駄を指摘し、一定の成果を収めたそうです。
2012年1月9日の日経朝刊30面に出ていました。今回はめずらしく、社会面に関する話題ですね。
ここで基礎知識です。
【会計検査院】
日本の行政機関の一つで、憲法上の独立機関です。
国の収入収支の決算は、すべて毎年会計検査院がこれを検査し、内閣は次の年度に、その検査報告とともに、これを国会に提出しなければなりません。(憲法90条)
そもそも憲法はぜんぶで103条あり、このうち人権に関する条文は40条までです。
じつは、国の統治や財政などに関する条文の方が多いんですね~。
(参考:憲法の章立てと条文の構成)
前文
第1章 天皇(第1条~第8条)
第2章 戦争の放棄(第9条)
第3章 国民の権利及び義務(第10条~第40条)
第4章 国会(第41条~第64条)
第5章 内閣(第65条~第75条)
第6章 司法(第76条~第82条)
第7章 財政(第83条~第91条)
第8章 地方自治(第92条~第95条)
第9章 改正(第96条)
第10章 最高法規(第97条~第99条)
第11章 補則(第100条~第103条)
第4章~第6章が、憲法の学習領域の中でも、いわゆる「統治機構」と呼ばれるものの中核をなしています。
三権分立というモンテスキューの言葉を思い出しますね。
立法(国会)・行政(内閣)・司法(裁判所)が相互にチェック・アンド・バランスの機能を維持することで、国の安定的な運営が成り立つ、というざっくりとした理解ができます。
やはり国際的に「一つの国」として認めてもらうには、法治国家としての必要条件とも考えられる六法(憲法・刑法・民法・商法・民事訴訟法・刑事訴訟法)の整備は欠かすことができません。
もちろん、憲法はすべての個別法令の頂点に立つ根本規則として位置づけられるでしょう。
じつは、この会計検査院、憲法90条で思いっきり明文化されていますので、仮にその存在を廃止しようとしたら、なんと「憲法改正問題」にまで発展してしまうんですね~。
これは、他の行政機関とまったく異質な存在ということがわかります。
さらに、憲法90条第2項では、
「会計検査院の組織及び権限は、法律でこれを定める。」
と規定されていますので、法形式上は内閣からも独立の地位にあります。
ここで、会計という言葉がついていることから、なんとなく財務省の下部組織であるかのようなイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんが、上記の話からもわかるように、三権(立法・行政・司法)のいずれからも独立した機関です。
というわけで、会計検査院の検査は、利害にとらわれず、厳格に実施することが期待されます。
そうはいっても、昨今の厳しい経済の荒波にもまれて、市場競争の海で鍛え抜かれた民間人によるチェックがあるのとないのとでは、検査結果の違いは歴然ですね。
たとえば、新聞記事の事例を少し見てみますと、独立行政法人を検査していた調査官は、自身がメーカー技術畑の出身で特許出願の経験があり、それを生かして外部に支払って入る業務委託費の二重払いを指摘したそうです。
その額にして、約2700万円のムダ発見。
監査法人出身の公認会計士などもいたりして、なかなかのつわものぞろいの特別調査チームですね。
任期3年の間、彼らが指摘したのは2010年度決算までで計10件、総額約173億円といいますから、一定の成果を上げたのだと思います。
今年の春に任期が終了するそうですが、今後の制度のゆくえは、未定な部分が多いとのこと。
増税論議が活発化している昨今、納税者の理解を得るには、こういった会計検査の機能アップにともなう経費削減のアピールがさらに必要になるはずなので、ぜひぜひ民間からの調査官の登用の道を広げる議論、どんどんすすめて歳出マネジメントをレベルアップしてほしいですね。
個人的には、国債発行が40兆円以上なので、理想としてこれをせずにすむよう、歳出の継続的かつ徹底した見直しの努力を続けていただきたいな、と思います。