総資産利益率(ROA)
ROAという、非常に重要で基本的な財務分析テクニックを
取り扱っています。
この機会に、ぜひ、基礎知識を身につけてください。
まずは財務分析の「はじめの一歩!」総資産利益率(ROA)
そろそろ、一年半ぶりにROAの話題を取り上げようと思っていたところ、
ちょうど良い日経記事が出たので、「よっしゃ!」という感じです。
やっぱり、財務分析を語る上で、このROAを外すわけにはいきません!
では、まずROAの定義です。
ROA(Return on Assets)とは、「総資産利益率」とも呼ばれ、
「企業の所有する総資産が、どれだけの利益を一年間で生んだか」という
判断指標のことです。l
計算式は、「純利益/総資産」(%)です。
バランスシート
―――――――――――――――――
(資産) | (負債) ←他人資本(銀行などから調達)
現金預金 ×××|
売掛金 ×××|--------
建 物 ×××| (資本) ←自己資本(株主の出資+利益)
: : |
―――――――――――――――――
総資産 A |負債・資本 A
=== ===
↓
↓
↓ 損益計算書
↓ ―――――――――
↓ 売上高 ×××
↓ 売上原価 ×××
↓ : :
↓ ―――
・→当期純利益 R
===
上記の図を参考に、解説していきます。
株主(自己資本)や株主以外の者(他人資本)により投下された資本が、
企業内でもろもろの資産(財産)「A」として運用され、その結果どれだけ
の利益「R」を生み出したか、という関係を、上記の図は表しています。
ROA=(R/A)×100(%)
では、ここで数字を使って簡単に計算してみましょう。
X社のバランスシート (億円)
―――――――――――――――――
(資産) | (負債) ←他人資本(銀行などから調達)
現金預金 ×××|
売掛金 ×××|--------
建 物 ×××| (資本) ←自己資本(株主の出資+利益)
: : |
―――――――――――――――――
総資産 800 |負債・資本800
=== ===
↓
↓
↓ 損益計算書(億円)
↓ ―――――――――
↓ 売上高 ×××
↓ 売上原価 ×××
↓ : :
↓ ―――
・→当期純利益 48
===
上記のようなバランスシートと損益計算書の状態の場合、
総資産(A)は800億円、当期純利益(R)は48億円ですから、
(48億円/800億円)×100=6%…X社のROA
となりますね。
このROAは、「会社に投資した額(総資産の額)に対する利回り」という
意味合いも強いので、他人資本である借入金の金利の利回りと比較して考える
分析の方法が、よく採用されます。
たとえば、現在の借入金の利息が年利3%とするなら、この借入れで会社に
資金投下し、資産運用をして事業活動の結果、3%を超える純利益を獲得でき
なければ、その事業自体、効率のよい投資対象として考えることができません
よね。
だから、経営者の立場でも、取引相手としての立場でも、まずはこのROAを
サッと計算し、「2%くらいじゃあ、現状の金利負担もまかなえないレベルの
収益性だから、もっと資産を圧縮しなきゃ!」などの判断ができるわけです。
まずは、「その会社のROAと借入れの利回りを比較」すると言う観点が
大事です。
次に、資金調達手段(借入れなど)の利回りとの比較だけでなく、
同業種における平均値との比較も大事です。
上記のX社の事例なら、ROAが6%と、現行の金利水準を上回っていたと
しても、X社が属している業種における平均的なROAが6.5%のような
場合なら、相対的な競争上、資産効率および収益性の観点から言えばライバル
に劣っている、という判断をすることになります。(実際には、そんなに高い
業界平均のROAというのは、あまり考えにくいです。)
ちなみに、黒字の中小企業の場合などは、2-3%程度がおおむね平均となる
のではないでしょうか。
なお、ROAは、財務分析の入り口として非常に重要な指標なのですが、
その分析をさらに一歩すすめると、
1「総資産に対して、十分な売上高を上げているか」という営業力の側面、
2「売上高に対する利益率は高いか」という収益性・コスト体質の側面
の2つの要素に分解して考える必要があります。
具体的には、売上高回転率という財務比率と売上高利益率という財務比率の
組み合わせが有名です。
まあ、入門段階では難しいかもしれないので、あまり深く考えずに、
まずはROAの意味だけでも知っておきましょう。
ただ、そのあたりの詳しい話は、実践上大いに役立つ側面もありますので、
会員制CDセミナーの方で、一歩踏み込んでフォローいたしますね。
http://bokikaikei.net/2007/04/cd.html