予定配賦(2級工業簿記)
今回は「予定配賦」について解説します。
以前、「配賦」という言葉を学んだことがあると思いますが、配賦には大きく分けて「予定配賦」と「実際配賦」という2つの方法があります。
前回は実際配賦についてお話ししました。
実際配賦では、実際に発生した製造間接費を実際の操業時間で割って配賦率を求めましたが、今回は「予定配賦」に焦点を当て、その原理と実務上の重要性について詳しく見ていきたいと思います。
予定配賦は、原価管理において非常に重要な手法で、実務でも頻繁に利用されます。
予定配賦を理解しておくことは、企業のコスト管理に役立つだけでなく、試験対策としても非常に大切です。
予定配賦は、製造間接費を事前に予算として決めた基準で配分する方法です。
これにより、事前に計画した金額をもとに製造間接費を各製品や部門に配分することができます。
まず、予定配賦の基本的な概念を説明します。
予定配賦では、あらかじめ予算などで「予定の製造間接費」を決め、その金額を基準操業度で割ることで、予定配賦率を算出します。
この予定配賦率を用いて、各月の実際の操業時間に予定配賦率を掛けることで、製造間接費が配分されます。
これにより、事前に予測した金額で配賦を行い、原価を管理することができます。
予定配賦にはいくつかの関連用語があります。
たとえば、「実際配賦」や「予定配賦費率」、「製造間接費」などが挙げられます。
また、予定配賦を行った結果、実際に発生した製造間接費と配賦額との差異が生じます。
この差異を「原価差異」と呼び、その中には「予算差異」と「操業度差異」の2つの種類があります。
これらの差異については、別の機会に詳しく説明することになるでしょう。
次に、予定配賦の具体的な計算方法について説明します。
予定配賦では、まず「予定の製造間接費」をあらかじめ予算として決めておきます。
次に、その製造間接費を基準となる操業度で割り、予定配賦率を求めます。
この配賦率を使って、実際の操業時間に基づいて製造間接費を配分します。
実際の操業時間は毎月異なるため、予定配賦率を用いて、常に一定の方法で製造間接費を各製品に配分することができます。
例えば、ある企業で次のような予算案があるとします。
予定変動費率:1時間あたり700円
月間予定固定費:600,000円
基準操業度:500時間
この場合、まず予定固定費を基準操業度で割り、1時間あたりの固定費を求めます。
600,000円 ÷ 500時間 = 1,200円です。
次に、予定の変動費を加えます。1,200円(固定費) + 700円(変動費) = 1,900円が予定配賦率となります。
その後、実際の操業時間にこの予定配賦率を掛け算して、各製品に配分される製造間接費を計算します。
例えば、No.10の製品の操業時間が210時間、No.20の製品の操業時間が240時間だったとします。
この場合、それぞれの製品に対して予定配賦率1,900円を掛けます。
No.10:1,900円 × 210時間 = 399,000円
No.20:1,900円 × 240時間 = 456,000円
これらを合計すると、製造間接費の配分額は855,000円となります。
この場合の仕訳は、製造間接費の貸方に855,000円、仕掛品の借方に855,000円となります。
予定配賦は、製造間接費を計画的に配分するための方法であり、実務や試験において非常に重要です。原価管理を効率的に行い、予算に基づいた経営判断を行うために、予定配賦の考え方をしっかりと理解しておくことが求められます。
この方法を使いこなすことで、より精緻な原価計算が可能となり、企業のコスト管理を強化することができます。