有形固定資産 耐用年数の延長(サクッと学ぼう日商簿記1級の超入門 第3回)
資本的支出と収益的支出の基礎知識
今回のテーマ、資本的支出と収益的支出につきまして、基礎知識をおさらいします。
まず資本的支出があります。これは3級、2級などこの下の級でも折に触れて出てくる言葉ではありますが、初心者のときや中級レベルときはピンときません。
皆さんは1級レベルで勉強の経験が積み上がっていますので、資本や収益という言葉は身近になっていると思います。
今の皆さん状態で資本的支出や収益的支出をいう言葉を聞くと、なるほどと思うかもしれませんので、しっかりとこの用語を覚えておきましょう。
資本的支出は固定資産の価値を高める支出です。
資本は来年以降も繰越すようなストックとしての支出です。固定資産の価値を高めます。
資本的支出の具体例と注意点
例として改良という言葉が出てきた場合は、だいたい資本的支出になります。
それから耐用年数の延長です。こういった修繕の支出でありながら、固定資産の価値を高めるような資産として計上する。
これは実務上とても大事です。税務調査などで、支出があったときに修繕費用として落としていたんだけど、実は資本的支出ではありませんかと言われて否認されます。
損金不算入みたいになると、建物みたいに固定資産に計上させられて、減価償却というので費用が減りますので、当然これは課税されます。
税金が増えますので、特に会計事務所の方が注意してほしいです。資本的支出と収益的支出はこれだけで一つの大きな議論テーマです。
これをテーマにしたセミナーとかあってもおかしくないぐらいで結構重要なのです。ぜひまずは1級レベルでも基本的な処理を知った上で、実務にまた応用してください。
まずは改良、耐用年数の延長みたいなものがあった場合は、建物みたいな資産の取得になります。ストックとしての支出なので、これは資本的支出と言います。貸方現金預金です。
収益的支出の具体例と仕訳
収益的支出は固定資産の機能維持のための支出なので、例えば補修、原状回復、ひび割れ、一部破損したものをセメントで直す、壁を塗る、あるいは定期点検などは費用です。
当期の経費、損金に落ちます。費用の発生で借方修繕費、貸方現金預金になります。
耐用年数の延長は日商簿記検定1級や会計士試験の担当とか、あるいは税理士の簿記論などでは出る可能性が若干あるのかなということで、耐用年数の延長は価値を高めることになります。
修繕を行うことにより、耐用年数が延びることがあります。その場合、耐用年数が延びた部分が資本的支出にあたるため、建物などの資産として会計処理します。有形固定資産となります。
そして耐用年数の延長部分の計算は、割と実践的で問題演習をして欲しいと思うのですけども、資本的支出は基本的に、支出額トータルかける、延長後の残存耐用年数、修繕からその後に最終的に延びた耐用年数分の延長した部分です。これを資本的支出としましょう。
延長してない従来部分の年数に見合った支出額は、いわゆる修繕費ですというやり方が、試験にたまに出ますので、出たら出来て欲しいです。
このあと1セットで延長後の減価償却も聞かれることがありますので、時間があったらここで取ればベストです。
耐用年数の延長に伴う仕訳と計算
問題文を見ていきましょう。耐用年数延長の仕訳例です。月割り計算をしてもいいのですが、分かりやすく期首にしました。
期首に建物を修繕するために180万円を普通預金口座から支払いました。貸方普通預金180万で問題は借方です。建物の耐用年数は40年で、当期首です。
たまに引っ掛けて期末までと言った場合は1年引いてください。期首か期末かちゃんと考えてください。
期末まで31年で期首に修繕するなら1引いて30年経っていると考えてください。31だと間違っています。
今回は素直に当期首までに30年経っていたためということで、40年のうち30年経っていますから、残り10年の段階で修繕をしましたということです。
これは親切なので全部書きました。普通はここまで書いていません。
実際の本試験の問題は多少引っかけがあります。合格率は10%ぐらいなので9割は落とさなきゃまずいので、落とすために少し不親切というか、資料を少し減らします。
残り10年と皆さんは考えます。この支出により建物の残存耐用年数が10年から30年へと、20年延長できた。これもすごく丁寧に書いています。普通はこの辺を全部抜いて、この支出によって建物の残存耐用年数は30年延びたと書きます。
あとは皆さんがその行間から、30-10で20年が延びた部分で、これを資本的支出にすると考えて欲しいです。修繕から仕訳を行いましょう。
そうすると180万のうち、借方建物はクエスチョン、借方修繕費クエスチョン、この計算が肝になります。
貸方普通預金180資産グループで、借方建物は元々1,200としましょう。
減価償却累計額は900なので、帳簿価額は現時点では300です。それを踏まえて借方建物、資産のクエスチョン、費用の収益クエスチョン、これをまず計算しましょう。
耐用年数の延長です。耐用年数の延長部分の計算方法です。支出額×延長年数/延長後の残存耐用年数です。
従いまして180万円が支出かける20年延長しますので30分の20です。10年から30年に延びています。
トータル30年のうちの20年で、30分の20です。修繕時から延長後の合計30年のうち20年分が資本的支出です。30分の20です。180万円×20年/30年で、120万円が資本的支出で建物勘定です。
残りの10万円、10年分の60万円が修繕費とします。
以上を踏まえて借方建物120万、借方修繕費60万という仕訳をすればOKです。
貸方普通預金180、借方資産で建物120、借方修繕費60に費用が落ちたということです。
資本的支出後の減価償却について
今度は減価償却しましょう。残存耐用年数延長後の減価償却という3つ目のテーマです。
資本的支出後の帳簿価額(未償却残高)÷残存耐用年数でいきましょう。
残存価額ゼロは簡単です。残存価額があればちゃんと引いてください。
通常は当初の10%など資本的支出についても書いてあったら全部引きます。
未償却残高÷残存耐用年数で、今回は既存の部分が1,200-900です。
当期首が900で、期首の修繕だから簡単です。差し引き300です。300と120の資本的支出を足します。
未償却残高①既存部分、元々あったのが1,200で減価償却累計額が900で、差引300が既存部分です。延長部分の120万を足すと420。420万円割る30年なので、年間14万円ずつ減価償却をして、30年経てば420万なります。この14万円を減価償却しますので、1,200-900=300万円です。
300万円に資本的支出の120を足して420です。420万÷30年で年間14万円が減価償却費なので、借方減価償却費14で費用です。貸方減価償却累計額14となります。
従って最後は減価償却累計額は914、建物は1,320というのが答えになりますので、これをしっかりとできるように3回ぐらい練習していただくと、耐用年数の延長に伴う減価償却まで基本的な処理をマスターしたことになりますので、ぜひ頑張ってやってみてください。