商品売買と原価率の計算(サクッと学ぼう日商簿記1級の超入門 第8回)

はじめに

今回は、仕入勘定と手元商品の流れの関係、原価率の基本的な考え方、実際の計算例と仕訳例を見ていきたいと思います。

仕入勘定と手元商品の流れ

まずは仕入勘定と手元商品の流れについて、事例を元に見ていきましょう。
仕入勘定は期首商品が100万円だとしましょう。当期の仕入が800万円でした。
ここまでの段階で決算整理前残高試算表では、期首商品の部分が繰越商品100、当期仕入高は800仕入勘定です。

この段階の仕入勘定は当期の購入高になります。売上原価ではないということです。
これも3級の復習になります。

当期の売上は1,000です。従って仕入れの800と比較して売上総利益を200みたいに出したくなりますが、もちろん間違いです。

購入高と引渡し額の販売価格、これは数量がありません。
仕入れが何個か分かりませんし、販売の数量とは一致しません。

従って費用と収益が同じ数量で一致しないので対応しないと言います。
費用と収益の対応関係が崩れていると言います。これを修正します。

期末商品が150なので、この150を修正して、実際の引渡し数量に見合った売上原価を出さなければいけません。売上原価の算定をします。

資料を見ますと、4番目、期末商品150なので、決算整理前残高試算表上は、繰越商品100、これは期首の残高、当期仕入が800、そして期末の商品残高が150あって、これをふまえて売上1,000だから、これに見合った売上原価を算定して原価率を出す必要があります。

この手元商品の流れ、このボックスを書けるようになってください。
これが簿記1級レベルの商品売買の合格力を身に付けるポイントになります。

期首商品を移しました、繰越商品です。決算整理前100、当期仕入800を移しました。
期末商品150を右下に書きました。2級の工業簿記のボックスに似ています。
材料勘定の動きに近いです。

左側に100と800でインプットが900、アウトプットの期末の在庫150を差し引きするといかがですか。これが引渡し高です。この引渡したものの原価とぶつけられるのが、同じ引渡し数量で売上が1,000になります。

100+800で900。900-150は差し引き750。差し引きで売上原価を出すのが手元の商品の流れを求めるときのポイントです。これが1級の商業簿記の商品売買に関する一つの壁になります。

ここがちゃんと分からないで勉強をすると商品売買が苦手になりやすいので注意してください。手元商品の流れは大事です。

3回書いて練習して、この手元商品の流れを自分で白紙に書けるようにしておきましょう。
これがポイントになります。

では、こういった形で750が出ました。1,000と比較して原価率75%、こんなふうに出すことができます。

原価率の基本的な考え方

次です、原価率の基本的な考え方をこの機会に押さえておきましょう。
まず原価率です。売価を100%あるいは1.0とした場合の原価の割合を原価率と言います。売上高原価率。そして、売価に対する利益の割合を利益率と言います。

そこで考えて欲しいのは、売価というのは原価と利益の合計です。
あるいは売価-原価が利益です。この関係でいきますと、売価率を100%とすると原価率と利益率を足したものが売価率です。
あるいは売価率から原価率を引けば利益率なので、この関係を知っておきましょう。

図で見ていきましょう。まず売価125円としましょう。そして原価100円ならば、差し引き25円の利益です。
この場合、原価率は100÷125です。これは80%、原価率80%です。

そして利益率は25の利益割る125の売価なので20%。これは結構大事です。実務的にも使えますので原価率と言った場合は、売価に対する原価の割合。あるいは利益率と言ったら、売価に対する利益の割合です。

2つ目です。これは私も実務で、社員研修や社長さんのコンサルをしたときに、結構混同されている経営者の方とか職員の方がいらっしゃるので、これはしっかりと学んでみてください。
もう一つは利益付加率とあります。これは結構混同しやすいので注意してください。
利益付加率あるいはマークアップ率や値入率と言います。

これは簿記用語でよく使いますので知っておいてほしいです。では意味を確認しましょう。さっきは売価を100%としましたが、今度は原価をベースに考えます。

原価を100%、あるいは1.0とした場合に利益を付加するときの割合です。原価に何%利益を乗せますか。これをマークアップ率とか値入率と言います。これは日商検定1級の工業簿記原価計算の中のマークアップ率が出ることがあります。

あとは本支店会計です。本店の仕入れた商品に対して10%の利益を付加しますという言い方を本支店会計の内部利益でやりますので、このマークアップ率、値入率、利益付加率をぜひ知っておいてください。

原価+利益=売価。原価を1とすると、1+利益0.3で1.3とか1.2とか、よく本支店会計の内部利益が1級の場合に出たりします。売価です。売価を125とすると、原価を100とします。

さっきの原価はベースではありません。売価125を100%としました。なので、原価率80%、利益率20%だったけど、今度は原価を100%とします。

原価100%利益25%なので1.25です。原価×1.25が売価と考えていただければいいと思います。この利益付加率がもしピンと来なかったら、動画を止めて2回、3回見直してみてください。
このマークアップ率あるいは利益付加率と原価率の関係を苦手にする人が多いので注意してほしいと思います。

計算例と仕訳例の理解

簡単に計算例と仕訳例を見ていきましょう。
次の資料をもとに、①決算整理仕訳を行い、②原価率と利益率を求めなさい、ということです。では決算整理前残高試算表、繰越商品130、仕入750、この範囲において分かることは期首繰越商品残高130で、今回は一般販売でシンプルな形なので、当期仕入は多分750です。

売上1,200、期末商品残高160、これをふまえて手元商品を見ていきましょう。
手元商品の流れを書けるようになってほしいです。みなさん、何度も練習をして白紙にこの手元商品の流れを書けるようになることが、まずは日商簿記検定1級の商品売買を得意にする第一歩です。

まずは期首商品、繰越商品130、仕入750、そして期末商品160なので差し引きします。
差し引きが売上原価との対比になります。130+750で880。880-160で720。

したがって、1,200と720を比較すると、差し引き売上総利益、粗利益は480です。売上1,200-売上原価720の480が売上総利益になります。得意先に引き渡すのが720。
それに対する売価が1,200。差し引き粗利益、売上総利益は480。これだけ儲けが出ましたということになります。

これをふまえて最初の問題はどんな問題だったかと言うと、決算整理仕訳を行い、原価率と利益率を求めましょうということです。

決算整理仕訳は3級レベルだからいいと思いますが、原価率と利益率を見ていきましょう。720の原価と480の売上総利益を覚えていますね。

まず仕訳は借方仕入130、貸方繰越商品130。期末商品残高160なので、借方繰越商品160、貸付仕入160。これはいいですね。

そして原価率は60%。720売上原価÷1,200で、60%です。そして利益率は、480売上総利益÷1,200で40%ということです。これとは別に利益付加率というものがあるということを知っておいてください。

決算整理後残高試算表はどうなるかというと、繰越商品130が期末で160、仕入勘定、当期の仕入が750だったのが、売上原価720に変わりました。720と1,200の比較で60%が原価率とご理解いただければいいと思います。

ちなみに、利益付加率を出すのに、40÷60で割り切れないと思います。0.666なので0.67で67%の利益を付加する、結構大きいですね。720×1.67で1,200になります。

利益付加率は480÷720で0.6666となりますので、今は簡単に四捨五入して0.67としましょう。そうすると1+0.67で1.67を720に掛けましょう。

だいたい1,202で合います。利益付加率1.67倍、大きいです。原価率60%は粗利が高いということを知っておけばいいと思います。

まとめ

まとめをしましょう。仕入勘定と関連勘定の状況です。繰越商品100、仕入800、これが期首です。手元商品の左側です。

そして期末商品150を差し引きして750の売上原価を出したらこれを売上と比較して原価率を出しましょうということでした。
引渡し高に対する原価と売価の比較が原価率だということを知っておいてください。

あとは、原価率の基本的な考え方としまして、2つありました。
原価率は売価を100とした場合、原価÷100で原価率80%です。売価を100とした場合、利益÷売価で利益率20%となります。これはみなさんがよく見る原価率です。

もう一つは、利益付加率あるいはマークアップ率、ないしは値入率と言います。
利益付加率については、原価を100%として利益÷原価で1.25です。25%ということです。

最後に計算例ということで、決算整理仕訳をして原価率を求めました。
決算整理後残高試算表は仕入勘定の売上原価720÷1,200で60%です。あとは1,200から720を引いて480。480÷1,200で40%の利益率です。参考までに利益付加率は480÷720で0.6666となり、67%原価に対して利益を付加しているということも参考になさっていただければいいと思います。

今回は第8回ということで、地味ですけど、商品売買と原価率の計算に関するこれを知っているかどうかで1級も結構得点が変わってきますので、ぜひ足元の地道な計算ですが、実務でも使える利益付加率、あるいはマークアップ率、値入率と原価率の関係をぜひこの機会にしっかりと整理して実務にいかしてください。

柴山式簿記講座受講生 合格者インタビュー
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