総記法・分記法による記帳(サクッと学ぼう日商簿記1級の超入門 第7回)

はじめに

商品売買に関する記帳方法のまとめと「総記法」という書き方と「分記法」という書き方ですについて解説です。

まず、商品売買に関する記帳方法のまとめなのです。
日商簿記検定などで学ぶのは4つということでご紹介いたします。
税理士の簿記論などに出る可能性があるのはこの辺りです。

三分法と売上原価対立法

まず、三分法、三分割法、3級です。
「仕入」「売上」「繰越商品」の三勘定で記録する方法です。

2番目、売上原価対立法、これは2級で学びました。
商品を販売する都度、「商品」勘定から「売上原価」に振替えて、常に「売上」に対する売上原価を計上する方法です。
商品を仕入れたときに、仕入勘定で記帳するのが三分法、商品という資産勘定で仕訳するのが売上原価対立法、わりと税理士簿記論なんかはこちらが出ます。
最近は、日商簿記検定も出る傾向があります。あと税理士簿記論は、この他にも例えば、ちらっと昔見た記憶では、こういった話も若干あります。

基本的にこの4つを学んでおけばほぼ今の受験簿記上はだいたいこれで対応できる気がいたします。もっと言うと、分記法、総記法すらめったに出ないと思いますが、税理士簿記論にたまに忘れたころに出るということで見ていきましょう。売上原価対立法と三分法は大事です。

分記法の基本と応用

3番目、分記法。昔は日商簿記検定4級とかです。
3級では出ましたけど、最近は実践的ではないということで、大学の一般教養とか簿記の学問的な意味はあるので、分記法は入門段階でやると言われています。
分記法、「商品」勘定と「商品売買益」勘定を用いるやり方です。
有価証券売却益とか有価証券とか固定資産の売却などでこの考え方を使います。
売上原価対立法は入門に近いと思います。いろいろな考え方があります。

総記法の特徴と適用例

4番目、これが最初に悩むところで、昔は総記法もしっかりやっていて、質問が多かったと思います。総記法は分記法と基本同じ勘定科目を使いますが違いは何か。
分記法は販売したときに商品勘定は原価に記録して、商品売買益は売ったときに出すのです。

有価証券の売却処理を考えたほうが分かりやすいです。
総記法が面白いのは、貸方商品を売価で記帳するのです。
総額法というのですが、三分法も総額法と言って、売ったときに売価で記帳するでしょう。
それが商品勘定になったのです。貸方商品を原価にしないで売価で書くので違和感があるのですが、元々こちらは僕が読んだ本だと、古い記録で総記法による記帳は昔々商店でやられていたそうです。

総記法の記帳は、どうやらあるらしいと読んだことがあるけど、分記法はないという説もあるのです。分記法自体は実務に使われた形跡が見つからないという説があります。
絶対ではありませんが。僕が読んだ古い簿記の本では総記法の記帳例や総記法で書いた実務は見たことがある、実はそれはあるのではないかと。

分記法はもしかしたら空想上で学問的で実務では使えないのかなと。あえて言うなら、有価証券と固定資産の売却損益で使っているのが分記法です。
商品売買で分記法を使うのは、毎日大量に取引するのに売上が分からないから使いづらいという噂があります。

1番と2番と4番は総記法なのです。売上を売価で記録する。
3番の分記法だけ売上を原価で記録するのです。なので、実践的ではない気もします。
初心者向けと言われます。僕からすると初心者向けは売上原価対立法だと思っているのだけど、それはいろいろな見方があるから、一応、教養として知っておきましょうということです。

では見ていきましょう。本題です。
まず商品売買に関する記帳方法まとめをしました。

三分法と売上原価対立法の復習

今度は三分法と売上原価対立法という3級、2級の復習をしましょう。

まず、仕入・売上・期末在庫に関する記帳の比較としまして、取引例の確認なのですが、三分法と売上原価対立法どちらも同じになりますが、1番、商品10個を仕入れた。1個10円で100円で仕入れました。2番目、商品10個のうち9個を売りました。

1個在庫が残っています。売価は15円です。1個あたりの粗利は5円です。三分法は原価の把握ができないという前提です。あるいは不要です。

小さい商店を想定する、あるいは情報処理システムもそこまで出来ていないという状態です。原価の把握は不要です。当期仕入高を把握しましょうと。売上原価対立法は何かというと、原価を都度把握できる製造業みたいなものです。工業簿記です。タイムリーに損益を把握したいときは売上原価対立法です。

ただ、小さい商店とかはそこまでやる必要はないので、三分法でざっくりやったほうが手間はかかりません。期中の手間はかからない。365日、毎日原価を把握していられないので三分法のほうが期中は楽です。

最後の1日だけ決算調整で実地棚卸をして、三分法では10個を例えば繰越商品に振り替える。これは必須です。三分法は実地棚卸は必須です。やらないとまずいです。

逆に言うと帳簿棚卸は要らないのです。売上原価対立法は原価を把握するのだから、帳簿棚卸をやらないとまずいです。その代わり実地棚卸はしなくてもいいのです。

実務上はやりますが売上原価対立法は帳簿棚卸だけでオッケーです。
帳簿棚卸は期末残高をもって棚卸とみなしましょう。実際に棚卸をしないやり方もあることはあります。

一応会計監査上、上場企業は実地棚卸も省略はダメです。必ずやってください。

帳簿棚卸も実地棚卸をしなくても仕方ない場合もあるので、帳簿棚卸があると代替することもあることもあります。
売上原価対立法、理論上は実地棚卸をしなくても、帳簿で分かるから、決算できます。
でも三分法は実地棚卸をしないと原価が分からないから絶対にします。

それをふまえて今の事例を仕訳します。
三分法、借方仕入100、貸方現金100。売上原価対立法、借方は商品です。
9個売りました。9×15円なので135。貸方売上135、借方現金135。

これは三分法も売上原価対立法も同じだけど、売上原価対立法の違いは2行目です。10個×9で90円。借方売上原価90、貸方商品90をやりましょうということになります。

売上原価対立法は、振替えて決算整理仕訳は必要ない。だから実地棚卸をしなくていいのです。

理論的には。三分法は実地棚卸をしないとまずいです。
逆に言うと、商品棚卸をして10個残っているから差し引き差額を全部売上原価にしましょうというやり方です。棚卸計算法と言います。2級の原価計算でやりました。

期中の継続記録法と棚卸計算法があったはずです。柴山式ではやっていますけど、たぶんやっていると思います。棚卸計算法でいいのです。ざっくりでいいのです。

ただ理屈を言うと、商品を入れたかたちを作って継続記録法でやっておきながら期末で実地棚卸をやって棚卸原簿を出しましょうというのが一番正しい勘定です。そういった勉強になります。
三分法は繰越商品仕入の調整が必要です。売上原価対立法は要りません。この違いです。

総記法と分記法の解説

では3番目、総記法と分記法にいきましょう。同じ事例でいきます。商品10個、原価10円を仕入れました。借方商品100、貸方現金、ここは同じです。問題は2番目、商品9個を売り上げたときに9個×10円でやるのが分記法です。

貸方商品90、あとは現金135も入ってきますので、その差額を商品売買益でいきなり原価に振り替えます。売上原価対立法との違いです。

毎回、売上の都度原価を把握しているケース、取引数が少ないといいです。もし経営能力がない小さい会社、例えば美術品とか貴金属とか、1個が100万円とか50万円とか高ければ原価を把握できます。

個別法ですけども、やることはあり得るかなと思いますが、現実問題、分記法で商品売買を記録することはまずないでしょう。だってすぐに計算して売上高を出しにくいから。
商品90、借方現金135、差額が商品売買益。有価証券売却益に近いでしょう。

総記法が面白いのは、商品勘定で総額を出してしまうのです。
総記法は原価の把握です。商品の貸方に売価、これがポイントです。

分記法は原価で把握、取引総額を重視しない、有価証券の売買など、こういう形です。問題は分記法は決算整理前T/Bで100-90で商品10と出て、商品売買益45が出てるから全く問題ないです。

隠れているけど、決算整理前T/Bで商品売買益が出ています。なので、決算整理仕訳なし、分記法はあとが楽です。

でもその都度、原価を把握できるかという問題があります。
できないだろうという前提でいくと、全部売価を入れます。貸方に残高が出るのが総記法のポイント、だいたい問題はこっちです。

税理士試験でたまに忘れたころに出るのだけど、皆さんびっくりしますけど、別になんてことないです。

だいたい試験の先生は貸方に出したがるのです。貸方に商品勘定、資産マイナスはおかしいんじゃないみたいな。
総記法は売価を右に書いているから、そうなります。在庫が少なければ。そうすると100-135で35をどうするか。
最後、在庫が分かっているから、残高が10になるようにすればいいのです。
10と35を足して45です。45を借方に加えて10にする。
あるいは売買益が分かっていれば売買益を足せばいいです。

貸方商品売買益45。期末の在庫が10になるように借方を調整すればいいです。それだけの話です。借方が例えば35だったら貸方商品25にするという形もありますし、借方貸方どちらでもいいです。

だいたい受験のときは貸方に出ます。あとは期末の在庫が10になるようにします。
35+10で45を借方に書けば、貸方に10が残るようにしましょう。

最後、前T/Bの分記法、借方商品10になるように調整しましょうと。
その相手勘定は商品売買益というようになります。ということで決算整理は分記法と同じになります。

だいたい借方商品いくら、貸方商品売買益いくらとなるように仕訳しますから、このように考えていただければいいかなと思います。
決算整理後は分記法と同じ借方商品10、商品売買益45が出ますので、それを分かっていただけばと思います。

試験に出る可能性はかなり低いけど、こういうのもあるので、出たときに、どひゃっとならないようにしましょう。特に税理士簿記論はまだまだ出る可能性があるので注意してください。

まとめ

最後にまとめです。商品売買に関する記帳方法です。
まず三分法、3級でやりました。「仕入」「売上」「繰越商品」の三勘定で記録する方法です。売上原価対立法は2級でやりました。
商品を販売する都度、「商品」から「売上原価」に振替え、常に「売上」に対する売上原価を計上する方法です。
今勉強したのは分記法と総記法で、分記法は「商品」勘定と「商品売買益」を用います。
総記法は少し変わっていまして、販売時に売価で、資産勘定や「商品」の貸方に記帳するという面白いやり方ですが、今回の計算例を通じて理解を深めていただければいいと思います。

次です。三分法と売上原価対立法です。借方商品で売上、繰越商品、これがポイントです。売上原価対立法は、商品を減らして売上原価に振替える。
決算仕訳なしです。総記法と分記法の違いは何かと言うと、総記法は貸方に商品を売価で記帳する。これが変わっているので、決算整理前T/Bで商品勘定が資産なのに貸方にくるという状況になります。

だから最後に決算整理が必要になるということです。これを分かっていただければいいと思います。分からなかったら、そんなものかなで結構です。

柴山式簿記講座受講生 合格者インタビュー
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