固定資産の耐用年数の変更(サクッと学ぼう日商簿記1級の超入門 第6回)

会計学における変更の種類

耐用年数の変更に関する考え方は会計学に関係する話です。
定額法による場合の処理、定率法による場合の見積りの変更、耐用年数の変更に関する処理の勉強をしていきます。

まずは会計学に多少関係する話で全体的なイメージを持っていただきたいと思いますので、この理論的な話を少しやっていきましょう。

まずは耐用年数変更に関する考え方です。そもそも論なのですが、会計上の変更があります。

会計手続きをする上で、大きく変更する場面が3つ考えられます。
これは理論的な話で、テキストにもよく出てくるのですが、まず1つ目は会計方針の変更というものがあります。

2つ目は表示方法の変更で、3つ目が今回のテーマとなる耐用年数の見積りの変更に関係する会計上の見積り変更があります。
今回のテーマの耐用年数の変更は、この会計上の見積りの変更にあたります。

まず今回のテーマでありませんが、基礎知識として知っていただきたい会計方針の変更から簡単にご説明しましょう。

これは何かと言うと、財務諸表の作成に当たって採用した会計処理の原則及び手続の変更とありまして、例えば有名なところでは棚卸資産に関しまして、先入先出法から総平均法また移動平均法への変更、あるいは売価還元法とかいろいろあります。

そういった先入先出法や平均法による会計処理の方法を会計方針と言います。
会計処理の方法について、会社が選んだものが会計方針。会社が選んだルールのことを会計方針と言います。

代替可能でいろいろなやり方があります。一番わかりやすいのは先入先出法を使うのか平均法を使うのか、経理自由の原則でどちらを使ってもいいのです。

あちこち変えると一貫性がなくて比較できないので、一回決めたらずっと継続しましょうという継続性の原則というのがあるのですけど、とりあえず一旦決めましょう。

我が社はどれを採用するか、採用したものを会計方針って言います。
財務諸表の作成方法です。会計処理の原則及び手続きを変更する場合は正当な理由がないと簡単に変えてはいけないのです。コロコロ変えたら比較しづらいでしょう。

継続性の原則というものが別途あります。会計方針です。会社が採用した会計手続きの原則及び手続きのルールです。

2番目、表示方法の変更というものがあります。財務諸表や注記の表示方法の変更です。
分かりやすい例でいくと、昔、私の監査の現場であったケースでいきます。
例えば貸付金です。1本、1億円でずっと貸付金があって、中には関係会社貸付金とか役員貸付金というのも無いことは無い。

1億とか10億に比べたら、10万円とか微々たるものです。
最近、関係会社の役員にポーンと5千万円を貸した、1億円を貸したというふうに、貸付金の中の存在感が高まった場合、これ区分掲記って別項目にしてわざわざ役員貸付金とか変えた方がいいのではないかなということもあり得ます。

科目を区分掲記するとか、表示の名前を変えるのです。関係会社、株式関連会社とかいろいろあります。

そういった科目の表示方法はある程度幅があるのです。今まではこうだったけど、違う方向に変えたとか、表示方法を変えたとか区分を変えたとか、配列を少し変えたとか、そういった場合は表示方法の変更なので、注記になる可能性があります。これはあり得そうです。

会計上の見積りについて

それから3番目、会計上の見積りの変更が今回のテーマです。後述ということで次のページを見ていきます。

会計上の見積りとは何か。資産・負債・収益・費用などの額に不確実性、これはあります。

減価償却と引当金などもそうです。将来のことなんて誰も分かりません。不確実性がある場合において、財務諸表作成時に入手可能な情報、今知りえる範囲で作ったものは見積りと言います。

合理的な金額を算出すること。この文章は大事なので5回くらい読んでください。理論対策になります。会計学で出る可能性があります。

資産・負債・収益・費用などの額に不確実性がある場合において、財務諸表作成時です。
過去の一時点の時に正しければいいです。状況は変わりますから。
入手可能な情報は、3年経ったら変わります。状況が変化したらそれは見積りの変更であって、それは未来に向けて変更するのです。過去に遡って遡及的に修正することはありません。これがポイントなのです。

物によっては遡及的に修正することもあります。特に日商簿記検定1級で出るのは、先入先出法だったのだけど、例えば3期前から総平均法に変えて、遡って遡及的に修正することになると、期首の利益剰余金の変更とか、そういったものは計算問題に出ます。遡及的な処理、修正があり得ます。

だけど会計上の見積りは、過去のその時のデータが正しかったらそれは尊重しましょうと。遡って遡及的に修正しないのが、この会計上の見積りの特徴です。

理論上、過去に遡ってやるという考え方もあるのです。 でも今の我々の制度は見積りは、その時の正しい判断は限られた合理的な判断だから尊重しましょうと。

会計上の見積りが変わったのが今年なら、変更時の修正はします。遡りません。
当期の修正をします。将来の期間にも影響を及ぼす場合は、将来の数字も変わります。

今回の耐用年数はずばりこれです。将来に渡って変わります。変更した当期、翌期以降も影響します。過去は遡らない。
当期から先を変更しましょうというのが、会計上の見積りのポイントです。

会計上の見積りの変更が将来の期間にも影響する場合は、変更した期から将来の期間にわたって会計処理します。耐用年数の変更はこの場合に該当します。

これとの違いは、先程言ったみたいに、会計方針が変わった場合、遡って利益剰余金を修正するという問題もあります。柴山式のほうで出していますが、それは棚卸資産で出るパターンが多いです。
耐用年数の変更は将来に向かうので過去には遡りません。これは大事なところです。

耐用年数変更に関する具体的な処理

では2番目、理屈は分かりました。どのように仕訳して計算するのですかということをやってみます。定額法による場合の処理です。まずは、定額法による場合の耐用年数変更に関する処理、見積り変更です。変更後の残存耐用年数にもとづいて定額法を適用します。

残りの年数で割ったりします。
例です。備品50,000円。耐用年数10年。残存価額0円。このパターンを知っておきましょう。
残存価額があった場合は、残存価額を引きます。3年経過しました。50,000÷10年だから、1年で5,000です。
5,000円×3年だから15,000円だけやっています。残り35,000が未償却残高です。
年間5,000で15,000円が償却済み、15,000円の減価償却累計額を引いて、差し引き35,000が未償却残高、または帳簿価額、簿価となります。

4年目の期首に残存耐用年数が10年から3年経っているから本当は7年のはずを5年にしましょうということです。

2年短縮しました。これがポイントです。残り7年から5年への見積り変更です。

技術革新があって、残り7年も持っていられないと、5年経ったらスクラップしましょうという耐用年数の短縮というのはだいたい設備で代替品、類似製品が出てきたのです。7年使おうと思っていたけど新しいいいものが出たので、早く買い換えなきゃいけない、技術革新があると耐用年数の短縮は実務的にあり得ます。

どんどん技術革新をして、当初7年使えると思ったのが、もう今年新製品が出たから買い替えたいと。

5年経ったら廃棄して早く取り替え投資をしましょうとなったら、耐用年数の変更で、短縮があります。延ばすことは普通ないです。だいたい縮めます。
7年から5年に縮めました。50,000÷10年×3年で15,000円です。昔のやり方です。
50,000から15,000引いて35,000。割る5年です。
7年だったら5,000円だけど、短くしたので7,000円に上がりました。それまでは5,000円だったのが7,000円に減価償却を増やしました。これが大体のパターンです。
見積り変更後の減価償却は当期から来期全部7,000円にしましょうということです。過去に遡りません。これが定額法です。

会計処理を見ていきましょう。
取引の例、取得後3年たち、4年目の期首に残高耐用年数を5年に変更しました。
取得原価50,000、耐用年数10年(当初)、残存価額0円、償却方法定額法です。
まずは期首の累計額は15,000です。5,000×3です。50,000-15,000の35,000割る残り5年で7,000円です。借方減価償却7,000、貸方減価償却累計額7,000です。これは分かりやすいでしょう。定額法は計算しやすいのです。

もう一つの定率法にいってみましょう。少し計算は込み入っていますが、考え方は同じです。
定率法による場合の耐用年数変更に関する処理です。変更後の残高耐用年数にもとづいて定率法を適用しましょう。考え方は同じですが計算が少し面倒です。
そこだけ気をつけてください。

備品50,000円。耐用年数10年。残存価額0円。10年ということは200%償却率定率法なので、定額法の2倍です。ということは10分の1年、耐用年数で割るから0.1です。
問題文に出ると思います。定額法の償却率は2倍してください。昔は250%もありましたが、今は試験に出ると200%が多い気がします。

0.1の定額法の償却率を2倍です。0.2です。50,000円の0.2なので1年目は10,000です。
2年目は10,000を引いて未償却残高50,000-10,000で40,000×0.2で8,000円になります。
このように計算します。

50,000の10年、残存価額0で3年経過します。200%定率法なので、0.2です。定額法償却率は0.1です。×2なので0.2です。
1年目、50,000×0.2で10,000円。2年目、50,000の取得原価-1年目の減価償却費10,000を引いて40,000。40,000×0.2は8,000円。

3年目は、1年目と2年目の減価償却費の累計額なので、50,000引く1年目の10,000引く2年目の8,000で18,000引いて32,000。32,000×0.2は6,400。これが3年間です。
3年後の減価償却累計額は、1年目の10,000と2年目の8,000と3年目の6,400を足して24,400。この状態で計算しましょう。

取得後3年たちました。4年目の期首に残存耐用年数を5年に変更しました。
取得原価50,000、耐用年数10年(当初)、残存価額0円、償却方法200%定率法です。
0.2というのは5年の定額法です。×0.2で0.4で新償却率を使います。ここまで24,400円の減価償却累計額は計算が終わりました。
3年経って24,400でした。50,000から24,400を引くといくらですか。25,600。25,600×0.4です。5年の200%新償却率です。0.4をかけて10,240。そして借方減価償却費10,240、貸方減価償却累計額10,240です。

やることは定額法と変わらないのですが、計算過程が少し複雑になるのがポイントです。ちょうどいい問題だと思うので、これぐらいスパッとスムーズにできるようになっていただいて、1級の本試験会場に行ってください。これは本試験レベルに近いのでできるようになっていただければと思います。

まとめとポイント

まとめです。まず耐用年数の変更に関する考え方です。
会計実務における変更は3つありました。まずは会計方針の変更、2つ目は表示方法の変更、そして3つ目が今回のテーマとなる見積りの変更、会計上の見積りです。会計上の見積りとは何か、これはできれば5回、10回と読んで頭になじませて欲しいのですが、資産・負債・収益・費用などの額に不確実性ある場合において、財務諸表作成時に入手可能な情報に基づいて、その合理的な金額を算出することを会計上の見積りと言います。

代表例としては引当金の設定に関する見積りとか耐用年数の見積りです。会計上の見積りの変更が将来の期間に影響する場合は、変更した期から将来の期間にわたって会計処理をします。

過去に遡って遡及はしませんというのがポイントです。耐用年数の変更はこの場合に該当します。

次に定額法による場合の処理です。期首の段階は、減価償却累計額と備品を差し引きして未償却残高に年数を割る、あるいは定額法の償却率を使います。

期首の累計額を求めさせる問題が出ることが多いと思うので、計算は定額法はシンプルです。期首の累計額を求めるところまで、要求されることがあるので注意してください。
これが出たらラッキーです。1級レベルだと期首の15,000を出させます。

定率法の場合です。定額法は毎年減価償却費が変わるから厄介です。
3年なら3年、1回ずつ丁寧に償却の計算をして累計額を出して、今回は3年間24,400です。50,000-24,400で、25,600。新償却率は0.4なので×0.4で10,240とやりましょう。
期首の累計額を出すことを想定して1級レベルは、耐用年数の変更を準備しておきたいです。ぜひ頑張ってください。

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