収益認識の手順(サクッと学ぼう日商簿記1級の超入門 第9回)

収益認識基準の概要

収益認識基準の論点例を見ていきましょう。
今回の説明では、収益認識の手順について見ていきます。
これは最初によく学ぶことですが、その前にそもそも収益認識基準って何なのって話に関しましては、「スッキリ学ぼう、日商簿記2級の「超」入門の第9回」で収益認識についてあらましを触れていますので、よかったらこちらも復習と思って見てください。

このスッキリ学ぼうシリーズでは、3級2級1級で似たような論点を同じ回である程度できるだけまとめて勉強していただくことになっていますので、1級を学習中の方もこの論点に関する3級レベル、2級レベルの前提知識は何かな?ということを復習しやすいように、回をそろえてやっています。
まとめて見ていただくと、こういう流れで同じ論点ができるのだと、横断的に見ていただくという趣旨もあります。
第9回の日商簿記検定2級のスッキリ学ぼう、契約資産・負債のところを見てください。
そうすると理解が深まります。
収益認識基準の概要をふまえて、今回は収益認識の手順などの論点を紹介しています。

収益認識の手順は5ステップあります。
今回の説例に出ています。
そしてつぎ、顧客との契約から生じた債権、契約資産について学びます。
さらに売上割戻し。引当金になったり、いろいろあるわけです。
加えて、返品権付き販売。これも試験によく出たりします。
その5、重要な金融要素消化仕入契約、商品券、カスタマー・ロイヤルティ・プログラムなど、いろんなバリエーションがあります。

このあと工事契約などいろいろありますが、こういった論点例の中から今回はまずどのテキストでも最初に学ぶような収益認識についての手順について見ていきましょう。

顧客との契約から生じた債権と契約資産

まず論点に派生する知識として、今回関係しそうな用語について解説します。
まずここで大事なのが、顧客との契約から生じた債権。売掛金です。
まどろっこしい言い方をしていますが、顧客との契約から生じる債権でも売掛金が基本です。
理論対策になりえるので、これは10回くらい読んで欲しいです。言葉的には難しい言葉を使っていますが、こういった言い回しに慣れて欲しいです。

財またはサービスと交換に受け取る対価に対する権利のうち、無条件のもの。
売掛金など。ざっくり言うと対価に対する法的な請求権確定します。
強制力があるから、請求書を渡してあとはもらうだけ。くれなかったら損害賠償を請求できます。
一応、法的には裏付けがありますので。法的根拠が強い権利です。

それよりもう少し弱い権利で契約資産があります。仕掛金のようなものです。
顧客との契約から生じた債権は完成品、製品勘定、工業簿記で製品とするならば、仕掛品が契約資産です。
財またはサービスと交換に受け取る対価に対する権利なのだけど、そのうちの売掛金以外です。

顧客との契約から生じた債権除く、ということは未確定なものです。
一応、売上あげるけど、売掛金としてまだ確定していないもので、売掛金の仕掛品みたいなものです。
未完成で、半製品、半売掛金みたいに思っていただければいいです。

この言い回しは、もしかしたら税理士の財務諸表論や会計理論で聞かれる可能性がありますので、知っておくといいと思います。
顧客との契約から生じた債権、財またはサービスと交換に受け取る対価に対する権利のうち無条件のものが売掛金で、顧客との契約から生じた債権以外のものは契約資産です。
売掛金の一歩手前です。

契約負債について

では次に契約負債を見ていきましょう。
財またはサービスを顧客に移転する企業の義務に対して、企業が顧客から対価を受け取ったもの、または対価を受け取る期限が到来しているもの。
ここは前受金とは違います。

受け取る期限が到来しているものは前受金ではありません。前受金と違うのはこのあたりです。
対価を受け取ったものは前受金とも言えますので、おおむね前受金と契約負債は重なります。

従来、前受金として処理されてきたものが、今は契約負債として処理されることが今は一般的になってきています。
あとは問題文の指示に従って処理しましょう。
前受金という勘定を使ってはいけないかと言うとそうではありません。

前受金勘定も使う余地があるので、問題文の指示、実務上も意識してください。
別に前受金は絶対まずいというわけではありません。

今、支配的な考え方として収益認識基準の場合は、契約負債をまず連想します。
あとは前受金、前払金なども問題文の指示によってあり得るのだなと思ってくれればいいと思います。

収益認識の手順

次です。収益認識の手順として
ステップ①顧客との契約の識別
ステップ②履行義務の識別
ステップ③取引価格の算定
ステップ④取引価格の各履行義務への配分、1級レベルの試験に出てもおかしくないので、今回やってみます。
ステップ⑤履行義務の充足による収益の認識。

収益認識の事例検討

収益認識の事例検討です。まず1番、識別しました。どういう契約か。
顧客との販売契約に該当するものをします。期首です。

1年のスタートです。履行義務は2つあります。
商品販売と保守サービスです。これが履行義務の識別です。ちゃんと区別を認識しました。

保守サービスは2年です。そしてステップ③取引価格の算定、取引価格は18,000円です。
ステップ④の価格配分で18,000円を配分しましょう。④価格配分がポイントになります。

独立販売価格と言って、本来第三者と取引した場合、一般の市場価格はどれくらいかと言うと20,000円です。
商品の販売15,000円、保守サービスの時価が5,000円で合計20,000円が本来の市場に出回っている一般価格なのです。

今回は一対一の取引で、実際の取引は少しおまけしますよ、ということもありますので、18,000円です。市場で何も考えずにやったら、定価は20,000円なのです。

もっと言うと、15,000円と5,000円を足したのです。15,000円の販売価格と保守サービス5,000円をセット価格で割り引いたかもしれません。

セット価格が18,000円なのかもしれません。親子関係とか親しい関係なくてクールな関係で普通に取引したら15,000円の商品、5,000円の保守サービスは独立販売価格です。

それを単純に足すと20,000円です。それをまとめて18,000円、セット価格でやります。これを配分しましょう。

商品は取引価格18,000円で、15,000/20,000で15/20としましょう。13,500円で、保守サービスは18,000円かける5,000/20,000、5/20ということで4,500円です。

従って今回の取引価格15,000円は時価だけど、13,500円としましょうと、これが配分です。

取引価格の各履行義務への配分をしました。13,500円が商品の販売です。
保守サービスは4,500円としました。これをふまえて仕訳をしましょう。

履行義務の充足と収益認識①、商品販売13,500円と役務サービス4,500円を計上します。借方は売掛金18,000。貸方は売上13,500は商品の引渡しで、役務サービスは期首で全くサービスを提供していませんから、契約負債ですということです。

前受金のようなものです。4,500。昔なら前受金です。
決算整理前残高は借方売掛金18,000、貸方契約負債が4,500。前受金に相当します。
手付金みたいなものです。売上13,500、商品販売です。
次です。4,500のうち当期分の収益認識をしましょうということで、4,500かける24か月分の12か月で半分です。
2,250だけ契約負債の取り消しでマイナス、貸方売上2,250となります。

まとめると、決算整理前では売掛金18,000に対して、役務サービス2年分で契約負債4,500、売上13,500で引き渡しました。

決算整理で12か月経ちました。期首から12か月経ったので24分の12か月で半分の契約負債を取り消して、貸方を売上にしました。
今回は売上勘定でやっています。内容によっては役務収益みたいなことがありますが、今回は売上勘定としておきましょう。

これは会社の判断です。問題文の指示で行ってください。
13,500と2,250で15,750の売上、契約負債が4,500から2,250に減って、15,750と2,250を足して18,000が売掛金となります。
決算整理後と決算整理前で違いが出てきます。

まとめ

1級レベルとして、収益認識基準の論点例、1番、収益認識の手順は今回の説例です。
2番、顧客との契約から生じた債権、契約資産の話、それから売上割戻し、返品権付き販売、重要な金融要素、消化仕入契約、商品券、カスタマー・ロイヤルティ・プログラムなど。顧客との契約から生じた債権、契約資産は今回のテーマでもあります。

次に収益認識の手順です。
1番、顧客との契約の識別をしましょう。
2番、履行義務の識別をしましょう。
3番、取引価格の算定をしましょう。
4番、今回これがポイントでした。
取引価格が決まったら18,000×15,000/20,000とか取引価格の各履行義務への独立販売価格に応じて配分しましょうということです。
5番目として、履行義務の充足による収益の認識をしましょうということです。

あとは収益認識の事例検討ということで、商品の販売15,000が独立販売価格。本来市場で買ったらこの金額です。
時価です。保守サービスは時価5,000で合計20,000です。
18,000×15/20で13,500円というふうに商品は配分。
保守サービスは18,000×5/20で4,500円で配分しました。
あとは仕訳です。借方売掛金18,000、貸方売上13,500で最初は契約負債4,500を1年後に24か月分の12か月で2,250が契約負債で貸方が売上というふうにやることをご理解いただけたらと思います。

短期間で一気にやってきましたが、ぜひ今回の収益認識の手順は非常に重要でこのあとにいろいろなバリエーションを学びます。

そのときの基本中の基本となる話なので、しっかりとご理解いただくと収益認識に関するいろいろな問題を解くときに参考になると思います。

柴山式簿記講座受講生 合格者インタビュー
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