売上割戻(変動対価)(サクッと学ぼう日商簿記1級の超入門 第10回)

はじめに

まず1番目、収益認識の手順に関して確認しましょう。これは復習にあたります。
全部で5つのステップがありました。

まずは1番、顧客との契約を識別しましょう。2番目、その契約について履行義務を識別しましょう。そして3番目、取引価格の算定をします。

これが今回のテーマになります。そしてこの取引価格を各履行義務への配分をしますということです。

そして5番目、履行義務の充足によって収益の認識をするという、この5つのステップは王道ですので、何度も見て、なんとなくイメージしていただければと思います。

今回はステップ3の取引価格の算定について見ていきましょう。取引価格の算定と変動対価についての基礎知識です。

取引価格と変動対価の基礎知識

これは収益認識に関する会計基準というところから、基準の本文を一部引用させていただく形で見ていきましょう。ここでは字数の制限上、収益認識基準と略して書かせていただきましたが、収益認識に関する会計基準と読み替えてください。

取引価格とは、財又はサービスの顧客への移転と交換に企業が権利を得ると見込む対価の額(ただし、第三者のために回収する額を除く。)自分のためにやっているものということです。

収益認識基準47項です。次です。取引価格の算定にあたっては、変動対価、契約における重要な金融要素、顧客に支払われる対価などの影響を考慮する。影響があった場合は、取引価格が上がったり下がったりするということです。

この変動対価が今回のポイントなのですが、これについて定義を見ておきましょう。
もしかしたら会計学も理論対策になるので、キーワードをしっかり覚えておきましょう。

変動対価とは何か。顧客と約束した対価のうち変動する可能性のある部分をいう(収益認識基準50)。
事例を適用指針から取ったのですが、変動対価が含まれる取引の例としましては、値引き、リベート。値引きリベートは、わりと売上割戻に関係することです。返金、インセンティブ、業績に基づく割増金、ペナルティー等の形態により対価の額が変動する場合や、返品付きの販売等、これも簿記1級では出てきます。返品券付きの販売とかです。

売上割戻の仕訳の基本

では次に、売上割戻、変動対価にあたる部分の仕訳を見ていきます。
まず売上割戻の簡単な定義です。この定義は昔からありました。

一定期間に多量または多額の取引をしたときに行われる商品代金の一部免除等を売上割戻といいます。
売上割戻に相当する部分については、取引価額に含めないで返金負債として処理する。これがポイントです。

売上割戻における仕訳の具体例

例えば、売掛金100、100円相当の売上を上げました。そのうち10%は将来、かなりの確率でリベートとして戻しますと、お値引きしますという感じになる可能性があるので今は売上にしないで返金負債という負債にしておきましょうと。
売上のマイナスなのです。これはあとで少し分解します。

借方売掛金100、貸方売上90、貸方返金負債10。このパターンをまずは覚えておきましょう。
借方売掛金、貸方売上、貸方返金負債、この仕訳のパターンをイメージしておけば結構いろいろと応用が利きますので、まずは仕訳の型を覚えましょう。

では実際の取引例を見ていきましょう。売上割戻の仕訳。5月1日に商品200個、1個10円を掛け売りしました。借方売掛金2,000です。
5月中に500個販売した場合、販売額の5%をリベートとして支払う条件になっている。これがいわゆる売上割戻の予定です。この条件が達成されると見込まれています。

実際には達成されていないのだけど、売上を2,000としないで、このうちの5%だから、2,000×0.05だから100です。

100円をリベートほぼ確実だろうと思ったら、売上にしないのです。取り消してしまうのです。返金負債100とやって1,900円、95%相当はもう確定しているからこの分だけ売上にして、100のリベート支払うだろうなっていう確率が高いものは返金負債という形で処理しましょう。これを覚えてください。

借方売掛金2,000、貸方売上1,900、そしてリベート支払うことが確実と見込まれているものについて返金負債100とします。
借方売掛金、貸方売上、貸方返金負債、この3つの仕訳パターンをイメージとして覚えておきましょう。

ではこの仕訳を2つに分解します。一旦全額売上として考え、借方売掛金2,000、貸方売上2,000とした。

そしてリベート支払いが確実と見込まれたものについては、売上を取り消して借方に売上100、貸方返金負債というふうに、相手勘定を売上の修正として考えるとこの返金負債は分かりやすいです。あとはお金を払ったときも返金負債で払います。

借方返金負債、貸方に現金になると思います。返金負債は相手勘定です。また、売上の修正だと思っていただくと分かりやすいかなと思います。その結果この2つの仕訳を合体させると、借方売掛金2,000、貸方は売上2,000-100で1,900、返金負債は100と、相手勘定を売上で考えると分かりやすいです。

返金負債は売上の修正みたいな感じでイメージを持つと、この仕訳を2つに分けるとイメージが湧きやすいです。よかったら覚えてください。

まとめ

まとめです。
まずは1つ目収益認識の手順について復習ということで確認しました。ポイントです。
収益認識の手順、ステップ①顧客との契約の識別、ステップ②履行義務の識別、ステップ③今回のテーマです、取引価格の算定で特に売上割戻の話です。それからステップ④取引価格の各履行義務への配分、ステップ⑤履行義務の充足による収益の認識があります。

2つ目、取引価格の算定と変動対価について基礎知識です。
取引価格とは、財又はサービスの顧客への移転と交換に企業が権利を得ると見込む対価の額(ただし、第三者のために回収する額を除く。)をいう。収益認識基準の47項です。
変動対価とは、顧客と約束した対価のうち変動する可能性のある部分をいうということを覚えておけばいいでしょう。

あとは売上割戻の仕訳です。変動対価です。まずは一旦売掛金2,000ですべて売ったと考えましょう。
リベートの支払いに含まれるものについては売上を取り消して、借方売上100貸方返金負債100という形で、この2つの仕訳が1つに合体したものが、借方売掛金2,000、貸方売上1,900、貸方返金負債100と考えていただくと分かりやすいかなと思います。

ぜひこういった一連の流れを自分なりにイメージして問題に取り組んでみてください。

柴山式簿記講座受講生 合格者インタビュー
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