社債の発行・償却原価法(サクッと学ぼう日商簿記1級の超入門 第2回)

社債の基本

社債とは設備投資などの事業資金を必要とするときに、企業が長期資金、1年を超えて2年、3年、場合によっては10年、超長期では20年、30年もあるかもしれませんが、長期資金を調達するために発行する債券のことです。

社債の発行方法ですが、一般的には機関投資家向けに1億円以上などの高額で発行されますが、最低100万円程度に小口化したかたちの個人向け社債を発行することもあります。

上場企業ではよく発行されますが、中小企業で発行することもあります。
私に募集の募と書いて私募債というのもあります。私がお付き合いしているコンサルティング先の数十億規模の会社でも社債を発行するケースがありますから、ポピュラーな資金調達方法です。

債券という言葉が出てきました。債券の券は、権利の権ではなく、証券の券です。チケットの債券です。

事業に必要な資金を投資家から借り入れるために発行する証券のこと、証書のことです。
国や企業などが発行します。一般に利払いがあります。そして期日と言いますが満期になったら返済、償還されます。

参考までに一般教養として、発行する組織の違いによって債券の呼び名が変わってきます。例えば国が発行すると、皆さんおなじみの「国債」と言います。

これは国の借金が何百兆などと言った時に、この国債をイメージします。地方自治体が発行すると「地方債」と言います。

東京都や神奈川県、横浜市など色々あります。そして国と地方を合わせて「公債」と言います。国債と地方債を合わせて公債と言います。

その他に会社が発行すると「社債」と言います。皆さん聞いたことがあるかもしれません。

デリバティブな金融商品の投資商品で公社債投資信託と言います。公債と社債を合わせて公社債と言います。社債は会社が発行する債券、公債は国債と地方債を合わせたものです。

国債は国が発行する債券、地方債は地方自治体が発行する債券です。それぞれ資金が必要なときに発行します。

社債を発行するメリットを、背景知識として知っておきましょう。このYouTube講義は普段の専門学校や柴山式もそうですが、受験に必要な簿記の知識の他に、皆さんが興味を持てるような前提知識も少し織り込んでいきたいと思っています。

社債を発行するメリットがあるのです。例えば銀行からお金を借りる場合、銀行から条件を厳しく決められて、返済方法など自由度がなかったりします。

銀行借り入れに比べて、返済方法や資金の使い道などについて会社に自由が認められているのです。結構やりやすいです。一方、株式発行と言って、株主に株式を発行してお金を調達する増資などの場合があります。株主は会社にとって最高の意思決定機関ですから一番力が強いのです。

物言う株主などと最近は言われていますが、株主が経営に口を出してきます。株主からの経営への干渉が嫌な場合は、社債のほうがいいです。

社債の性格は借用証書を発行しますので負債です。借り入れと同じように借用証書を発行して将来返済義務を負います。

償還日になったら満期償還しますので、発行時は貸借対照表の固定負債になります。やはり短くても2年だったりするので固定負債と表示されます。

1年以内だったらワンイヤールールと言いますが、1年以内に償還予定の社債ということで流動負債になります。借入金もそうです。

5年の返済期限のものも、2年、3年が経ってあと1年以内に返済予定のものは借入金ということで、流動負債になります。また社債は投資商品として譲渡可能です。

社債はいろいろおまけが付きますので、実は魅力的なのです。バリエーションがあって発行しやすいのです。

今回、日商簿記検定1級の社債の主な論点として、8つ取り上げてみました。
他にも細かいものがありますが、大まかにこの辺りを抑えておくと勉強しやすいと思います。1.社債の発行は割引発行、平価発行、打歩発行の3つがあります。

それぞれの仕訳について少し確認します。2.利息、クーポンの支払い、約束通りの利息、額面に2%払うなどの支払いです。年に1回や2回など条件が出ます。3.償却原価法による評価、利息法と、4.減価償却による評価、定額法、減価償却の反対のようなものです。

額面に近付けていくという減価償却のような感じです。5.社債発行費の処理、昔は繰延資産などと言われたものです。これは別途、皆さんお持ちのテキストや柴山式の講義などで学んでください。6.社債の買入償還、満期前に買入を償還します。7.社債の抽選償還、昔私が受験生のころ重要な論点だったけれども、今は昔ほど出なくなりました。

でも、一応やっておく必要があります。8.新株予約権付社債、これは大事です。おまけが付いています。新株を発行要求できる権利があります。

以上8つのテーマを書きましたが今回は、1.社債の発行、2.利息(クーポン)の支払い、3.償却原価法による評価(利息法)4.償却原価法による評価(定額法)を取り上げていきたいと思います。

社債の発行

社債の発行ついて、まず割引発行を見ていきましょう。
だいたい社債は100円1口で考えます。100円あたり98円など、100円を1単位で考えることを知っておいてください。額面総額10,000円の社債を9,800円で発行しました。

意図的に金額を少なくしました。割引発行です。200は実質金利の調整と言われています。9,800で払い込んでもらって、例えば2年後に10,000で返せば200の利息がつきます。

貸方社債9,800、借方現金9,800です。考えてみてください。額面10,000で9,800に少し安くなりました。値段が下がっています。もしこれが9,700で発行したらどうでしょうか。

社債の金額が9,700に下がるけど利息は300です。日経新聞などで見たことはありませんか。金利が上がると社債の価額が下がると聞いたことはありませんか。

額面が決まっているから安くなればなるほど、差額が増えて金利が上がる、利回りが上がると価額が下がります。取得原価が下がるということは価額が下がります。

債券の価額が下がるということは差額が広がるので金利が上がります。これは日経新聞にも出ますからメモをしておいてください。債券とは金利とその時価は反比例します。

10,000に対して9,900ならば金利は100です。9,800に下がったら金利は200に拡大しますから、金利が増えれば価額は下がると思ってください。

逆に金利が減れば価額は上がる。その関係を知っておいて欲しいです。1級の知識になりますが、こういうのを知っておくと日経新聞を読みやすいです。
なぜ金利が下がると価額が上がるのかというとそういうことなのです。額面との差が縮まったりするからです。

次、平価発行にいきましょう。額面10,000の社債を10,000で発行しました。借方現金預金10,000、貸方社債10,000です。そして打歩発行と言って、おまけがついていたりすると、逆に高くなることがあります。

これは税理士試験でも出たことがあります。会計士も出る可能性があります。1級で出る可能性はあまりないけれど、知っておいたほうがいいです。

高く発行することは実務上あります。新株予約権などいろいろおまけがついて、条件がいいと高くなることがあります。

借方現金預金10,200、貸方社債10,200で10,000に向けて減っていきます。額面10,000の社債を10,200で発行した。
これはうまみがあるのです。打歩発行という読み方も知っておいてください。

このように3つの発行方法があります。一番メジャーで試験に出るのは、割引発行です。9,800から10,000に少し増やしていく、調整していくことを償却原価法と言います。

利息(クーポン)の支払い

次、社債の発行の事例です。額面10,000の社債を9,800で発行しました。借方現金預金9,800、貸方社債9,800です。クーポン利率、約定利率1.8%で利払い3/31です。

1年後、利息は10,000×0.018です。借方社債利息180、貸方現金預金180です。では総勘定元帳です。借方現金預金9,800、貸付社債が9,800です。

貸付現金預金180、借方社債利息180という状態になります。イメージはよろしいでしょうか。

決算手続きとして発行価額と額面の差額200を社債の償還期間3年で償却します。定額法のようにして10,000に近づけます。金利を少しずつ成長させる感じです。

例えば、10,000-9,800で200。200÷3年で割り切れないので四捨五入して67とします。
1年目が67で2年目も67、最後3年目は66です。9,800から3年かけて10,000にして最後借方社債10,000、貸方現金10,000で返済します。利息の支払いと考えましょう。

利息は2つあります。現金で払う利息と、1年間で社債を増やすことによって払う利息です。180+67で247の利息、社債利息を計上すると思ってください。

償却原価法による評価(利息法)

償却原価法の音読を10回くらいやってください。1級の対策で大事なことです。社債以外でもこの償却原価法は使いますから、大事なので繰り返し読んでください。

償却原価法とは、社債の発行価額が額面の金額と異なっている場合、その差額は「利息の調整分」として、償還の時期まで毎期「一定の方法(利息法または定額法)」で、貸借対照表の「社債」金額を加算または減算する方法です。

実際に満期保有目的の有価証券はこれに関係する話ですし、資産除去債務でも関係します。償却原価法の考え方はいろいろ出てきます。

貸付金の債券も債券額と違う金額で譲渡や、買い取ると差額を調整します。貸倒引当金の設定で、キャッシュフロー見積法と言って、貸倒引当金債券のときにも出てきます。
償却原価法の考え方はあちこちで出ます。

償却原価法による評価(定額法)

定額法です。発行価額と額面の差額を毎期の期間に応じて均等になるように、「決算整理処理」でやります。大事なのでアンダーラインを引いておいてください。

このあとの利息法は決算整理ではありません。期中にやります。この違いを知っておいてください。

では取引を見ていきましょう。③決算整理事項、社債につき、償却原価法(定額法)による期末評価修正を行います。200÷3なので67にします。3年目は引き算で66に調整します。

借方利息67、貸方社債67です。社債利息は、借方180+67で247が社債利息ということを知っておいてください。ここまでが定額法によるやり方です。

ではもう一つの利息法です。原則のやり方です。直前の社債簿価(9,800)に対して実効利率で社債利息を計上します。現金で払った利息と社債を増やす利息の合計が、直前の社債簿価の一定率になる。これが理論的なのです。本当はこちらが望ましいです。

9,800×0.025です。直前の社債簿価に対して一定利率で増やしていったほうがすっきりします。定額法は毎年同じだからそうはいきません。9,800に67を足すと2年目は9,867で、それと247では利率が変わります。

定額法は利率がどんどん減っていくのです。それが理論的ではなく若干理不尽だと思います。利息法は必ず一定させます。

9,800×0.025で実効利率は245です。245-180で65を増やします。9,865となります。2年目は9,865に0.025を掛けて、そこから180を引きますので、社債利息の合計額は直前の元本の2.5%に一定に保つという安定性があります。これが原則的な社債の評価方法です。

では見ていきましょう。今度は利払いに合わせます。決算日ではありません。利払い日ごとにやりますから、年に2回利払い日があったら、6か月の利払い日も償却原価法を適用します。

これが利息法と定額法の違いです。定額法は決算整理しかやりませんが、利息法は利払い日の都度やっていきます。この違いをメモしておいてください。

利息法は期中取引としてやります。借方社債利息65、貸方社債65です。先ほどの定額法は決算整理です。期中取引なのか決算整理なのか、この違いは大きいです。

定額法は利息法に比べたら、理論的に妥当性が低いですが、計算は簡便なのです。利息法が原則です。

直前の元本9,800×0.025で245を意識します。245を意識した状態でまずは利息を払っています。借方180、貸方現金180。245に対してこれをクエスチョンにしました。

これを計算しましょう。245と180の差し引きで65、これはステップ2です。借方社債利息65、貸方社債65です。2年後は9,800と65を足して、かける0.025です。

246.625だから247というふうに、必ず直前の元本に2.5%をかけると社債利息が合うように計算を調整して設定されます。そのように問題を作ります。実務でもそうです。

直前の社債元本に実効利率をかけて、払った金額の差額を求めるということを覚えておいてください。これは合否を分けるくらい大事な知識なのでしっかりやっていただければと思います。

利息法は期中取引で利払い日にやります。定額法の償却原価法は決算整理なので、利払い日とはあまり関係がありません。

まとめ

今回の授業のまとめです。
社債とは、設備投資などの事業資金を必要とするときに、企業が長期資金を調達するために発行する債券のことです。発行は3つありました。割引発行、借方現金預金9,800のように、額面10,000より低いです。貸方社債9,800です。

平価発行、借方現金預金10,000、貸方社債10,000で、償却原価は出てこなさそうです。3番は償却原価の逆をいきます。社債が減る方向にいくのですが、借方現金預金10,200、貸方社債10,200で額面より高い形の打歩発行です。

最後は社債の評価です。償却原価法、定額法です。200の差額を3年で均等に割る定額法です。減価償却の定額法のほうが簡単です。

決算手続きとして行います。そして利息法は原則で、直前の簿価×実効利率-約定で65を社債に増やします。利払い日ごとの期中処理ということを知っておいてください。

定額法は決算手続、利息法は利払い日ごとの期中取引でやるということを知っておくといいです。

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