会社の増資(サクッと学ぼう日商簿記1級の超入門 第1回)

今回は増資というテーマを中心に見ていきたいと思います。

純資産会計に関する主な論点

まずは、純資産の表示の4つについてみていきましょう。

1つ目は、株主資本です。これには、資本金、新株式申込証拠金、資本剰余金、利益剰余金、自己株式の5つを含みます。

2つ目は、評価換算差額等です。これには、その他有価証券評価差額金、繰延ヘッジ会計、土地再評価差額金の3つを含みます。

3つ目は、株式引受権です。これは株式報酬制度において「事後交付型」と呼ばれる株式の付与をする場合に用いられる勘定科目です。

これには、2019年の会社法改正によって、上場企業の取締役報酬としての株式発行に金銭の払い込みを要しなくなったという背景があります。

また、株式報酬制度とストックオプションと比較したとき、将来の業績アップに向けたインセンティブであるという点は共通していますが、株式報酬制度は株式が対価となり、報酬は事前型・事後型の2通りあるが、ストックオプションは新株予約権が対価となり、報酬は事前型という違いがあります。

4つ目は、新株予約権です。

次に、純資産会計の主な重要論点は次の8つについてです。

1 純資産の部の表示を覚える
2 新株の発行(増資)
3 自己株式の取得と処分
4 増資と自己株式の処分
5 利益剰余金の配当と処分
6 新株予約権(発行者/取得者)に関する会計処理
7 新株予約権付与社債に関する会計処理
8 分配可能額の計算

増資の基本処理

増資の基本的な仕訳の仕方についてみていきましょう。

1.株式〇〇株を1株につき✖✖円で募集し、払込を得たとき、

(借方)別段預金 ✖✖✖ (貸方)新株式申込証拠金 ✖✖✖

という仕訳になります。

2.割り当てられなかった部分について返還したとき、

(借方)新株申込証拠金 ✖✖✖ (貸方)別段預金 ✖✖✖

という仕訳になります。

3.払込期日に申込証拠金を資本金と資本準備金に振り替えるとともに、別段預金を当座預金にした(会社法既定の最低額(1/2)を資本金とする)とき、

 (借方)新株申込証拠金 ✖✖✖ (貸方)資本金 ✖✖✖
                     資本準備金 ✖✖✖
という仕訳になります。

自己株式の取得と処分

自己株式とは、発行した自社の株式を買い戻したもののことです。増資の反対、つまりは出資の払い戻しと考えることができます。

では、なぜ自己株式を取得するのか、その意義について見ていきましょう。

まずは、株主への利益還元になります。財務分析をする際に配当と自己株式の取得を合わせて還元性向がわかり、株価が高い状態で買い戻すと、株主の還元につながり、株主は喜びます。

次に、世の中に浮遊している株数が減ります。世の中に出回る株が減るので、値段が上昇して買収対策(M&A対策)につながります。

そして市場で買える株数が減少するため、株価が上昇します。この3つが自己株式を取得する意義になります。

次に、自己株式の取得の仕訳についてみていきましょう。

1.自己株式を取得したとき、

  (借方)自己株式 ✖✖✖ (貸方)現金預金 ✖✖✖

という仕訳になります。

2.自己株式を償却したとき、

  (借方)その他資本剰余金 ✖✖✖ (貸方)自己株式 ✖✖✖

という仕訳になります。

3.自己株式を処分(=売却)とき(処分差益)

  (借方)現金預金 ✖✖✖ (貸方)自己株式 ✖✖✖
                   その他資本剰余金 ✖✖✖
という仕訳になります。

増資と自己株式の処分

新株発行と自己株式の処分を行った場合をみていきましょう。

1.自己株式の簿価<発行価額のとき(処分益)

  (借方)現金預金 ✖✖✖ (貸方)資本金 ✖✖✖
                   自己株式 ✖✖✖
                   その他資本剰余金 ✖✖✖

という仕訳になります。処分益が出ると、その他資本剰余金で処理しています。
また、資本準備金が貸方に入るときもあります。

2.発行価額<自己株式の簿価(処分損)

(借方)現金預金 ✖✖✖ (貸方)資本金 ✖✖✖
                 自己株式 ✖✖✖

という仕訳になります。処分損は資本金を減らすことによって処理します。

会社の増資あるいは自己株式に関する勉強において、少しでも参考になれば幸いです。

柴山式簿記講座受講生 合格者インタビュー
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