値下げ合戦が店の首を絞めるプロセス

【ゲーム理論と価格戦略の末路】

●ノーベル経済学賞に輝いたゲーム理論

経営戦略の代表的な3類型として、①低価格戦略 ②差別戦略 ③ニッチ戦略(焦点絞り込み戦略)が有名です。

商品やサービスの質に差がない場合、差別化しようとしてもなかなか言いアイディアが出ません。ライバルとの違いを出すには、そうとうな知恵を絞らなければなりませんね。

また、市場や顧客層を絞り込んで、スキマ市場を攻めるにしても、多くの経営者は躊躇しがちです。できるだけ多くのお客を相手にした方が儲かるのでは?と考えてしまう傾向がありますね。絞り込むにはほかの多くを捨てることにつながるので、ふつうは勇気が必要となります。

その結果、規模の大小を問わず、多くの経営者なり営業担当者は値下げをして売ろうという思考に陥ってしまう傾向があります。

値段を下げて売る方が、お客さんに手っ取り早くアピールできるからですね。

では、市場において、各社が値下げの誘惑に負けて低価格戦略に流れてしまった場合、どのような状況が起きるかを、事例で見ていきましょう。

人間の行動が、立場が異なる相手にどんな影響を与えるかを整理、推察する手法に、「ゲーム理論」というものがあります。

「安くなったら買う」といった単純な分析ではなく、「安くなって、品質がおちたら」「安くなって品質が上がったら」「高くなって品質が上がったら」など、複数の要素を組み合わせて、どんなことが起きるかなどを推察するためにも用いられます。

フォン・ノイマンという数学者が構築し、その完成度を高めたジョン・ナッシュという数学者などが、1994年にノーベル経済学賞を受賞しています。

●値下げをめぐる4つのパターン

例えば、あなたがある地域で飲食店を経営していたとします。
 (※新型コロナの影響などの特別な要因はここでは無視します。)

その地域では、自分のお店のほかにライバル店がひとつあり、2つのお店で外食のお客さんを奪い合っているとしましょう。
あなたの店もライバル店も、スタートは一食あたり1000円の単価で販売していました。また、一ヶ月における地域の平均来店客数は1600人とし、どちらの店も800人のお客さんに売り上げているとします。

あなたの店も、ライバルの店も、それぞれ月間の売上は1000円×800人=80万円ですね。このあと、両者とも売上アップを図るために、値段を下げるべきかどうか検討しているところでした。

具体的には、いまの客単価1000円を900円に下げてみようかどうか悩んでいます。どちらも900円で売ったらどうなるか、予想します。
その結果、つぎのような結果が予想されたとします。この予測はあなたの店もライバル店も同じです。

ケース1 どちらか一方の店が900円に値下げすると、100人のお客さんがライバル店で食べるのをやめてこちらの店に来る。
 
ケース2 両店とも同じ単価ならば、一ヶ月あたりの来店数は800人ずつで同数となる。

これをゲーム理論で考察してみましょう。
結果は図のとおりとなります。
値下げ合戦が店の首を絞めるプロセス

※各ケースにおける飲食店マーケット(市場)の規模(2店の売上合計)

①どちらも値下げしない:自店80万円+他店80万円=160万円
      ↓
②他店が値下げをする :自店70万円+他店81万円=151万円
③自店が値下げをする :自店81万円+他店70万円=151万円
      ↓
④どちらも値下げをする:自店72万円+他店72万円=144万円

以上を見ると、ベストなのは①の組み合わせで、「どちらも値下げしない」というパターンです。

しかし、お互いが協力関係になく、それぞれが勝手に自分の利益だけを追求するならば、おそらく自分だけでも値下げしようとして、ケース②またはケース③のようになる可能性が高いです。

そうなると、値下げをしなかったほうの店が70万円という売上にまで下がり、下の売上よりも10万円も儲けが減ってしまうことになります。

そうなったら、やられた方のお店側にとっては悪夢です。

その結果、最終的には、さいしょ値下げしなかったお店も対抗してすくなくとも同じ額までの値下げにまで踏み切るはずです。

こうしてはてしない値引き合戦がはじまります。
こわいですね~。 

もしもおたがいが協力し合うことができるならば、不毛な値引き競争に陥らずに済んだことになります。

このように、互いが非協力的な関係にあるとき、それぞれが自分の利益を考えて行動した結果、ぜんたいとしては最も望ましくない水準で均衡状態が安定してしまう、という困った事態が起こってしまうのです。

これがゲーム理論のひとつの帰結なのですね。

●相手と協調することで、全体として望ましい結果になることもある

大事なポイントは、あなたとライバル店が自分の利益だけを追求して値段を決めないことが、結果として両者のメリットとなるケースがある、ということです。

同じ競争をするなら、客単価を下げる方向の値引き合戦ではなく、メニューの充実や料理の味の改善、あるいはサービスのクオリティーアップなど、お客様の満足を高める差別化戦略で、お互い競い合うほうが、結果として双方Win-Winとなるような気がしませんか。

それによって、もしかしたらお客さんの満足度もグーンとアップして、客単価が1000円から1200円のようにアップすることも考えられますからね!

柴山式簿記講座受講生 合格者インタビュー
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