その他有価証券の評価差額と税効果の関係について

今回の「頑張ろう日商簿記検定1級合格」は、有価証券、特にその他有価証券の期末評価について、税効果会計の適用の考え方と併せてマスターしていただきたいと思っています。

簿記2級で学習する売買目的有価証券の期末評価と、法人税等支払の関係について考えてみると分かりやすいです。

税金の支払に関しては、税率30パーセントするならば、期末に売買目的有価証券が100だけ増えたとして、売買目的で1,000万円有価証券を所有していて、1,000万円の取得原価が1,100万に値上がりしたと考えます。

その場合、売買目的有価証券という勘定科目を使っても良いのですが、ここは貸借対照表の表記を使って有価証券とします。

(借方)有価証券100 (貸方)有価証券評価益100 となります。
有価証券評価益は損益計算書の純利益のプラス(営業外収益)になります。

この純利益のプラスに対して、税率30パーセントが法人税として支払われます。
ですから、(借方)法人税等30 (貸方)未払法人税等30 となります。

これは費用項目で、純利益のマイナスになります。
有価証券評価益が純利益のプラスですから、それに対して税率をかけた分が純利益のマイナスとして法人税等になります。

このように純利益として有価証券評価益が計上されれば、純利益のマイナス(費用)として法人税等を考えることができます。

一方、その他有価証券の場合はどうなるかというと、これも貸借対照表の表記を使って投資有価証券とします。

(借方)投資有価証券100 (貸方)その他有価証券評価差額金100 となります。
その他有価証券は短期的に時価の変動によって利益を得るという短期的な売買を予定していませんから、利益が実現したとは考えません。

ですから、貸方はその他有価証券評価差額金となります。
これは会計基準上では純利益ではなく、その他の包括利益というカテゴリーになります。

そうすると、これに対して税率30パーセントをかけたものは純利益のマイナスとなる法人税等という費用にはできません。

評価差額金のマイナスということで、(借方)その他有価証券評価差額金30 (貸方)繰延税金負債30 となります。
これはあくまでも会計上のズレの調整なので、貸方は繰延税金負債になります。

もしこのその他有価証券をこの時価で売却すると100の売却益は出るけれども、それに対して法人税が30パーセントかかるので、その30パーセントは将来の税金の支払の見込み額ということで、繰延税金負債という項目で処理します。

確定した未払い税金ではないので、先ほどの未払法人税等とは違います。
有価証券の評価の貸方が純利益ならば、税金の支払は(借方)法人税等になりますが、ここは税効果会計ということで会計上の調整になります。

ですから、貸方が評価差額金というその他の包括利益ならば、借方も評価差額金という包括利益の項目で減らすことになります。

その結果、まとめると、借方の投資有価証券100は良いのですが、貸方は繰延税金負債30という負債が来て、評価差額金70というのは実はいったん貸方100という評価の差額をあげて、そこから法人税の支払の見込みに伴う評価差額のマイナスになります。

100-30という差し引きでその他有価証券評価差額金70という金額が求められると思っても良いわけです。

このようなプロセスの考え方を持っておくと、色々と応用が利きやすいと思います。
ぜひ参考になさってください。

私はいつもあなたの日商簿記検定1級合格を心から応援しています。
ここまでご覧頂きまして誠にありがとうございました。

柴山式簿記講座受講生 合格者インタビュー
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