今の自分の思考や行動は、過去の積み上げの成果(結果)でもある。

私はここ数年、色々な方の仕事上の悩みや会社経営の悩み、ひいてはプライベートの課題や悩みについてもカウンセリングすることがあります。

「仕事に集中できない」「会社経営に邁進できない」と言う経営者がいらっしゃいますが、その背景には「プライベートの未解決事項」「会長である親との関係」「自分の子どもとのコミュニケーションが上手くいっていない」など、色々な理由があるのです。

ですから、仕事だけではなくて365度全範囲の生活の中での心配事や未解決事項、あるいは自分が意識しないで影響を受けている大本の原因を自覚せずに、あさっての方向の的外れな対策があるのです。

今の自分の思考・行動は過去の積み上げの成果でもあります。
つまり、過去の環境や過去の人間関係を何十年と積み上げてきた末に今の自分がいるわけですから、自分が知らず知らずのうちに環境から影響を受けているのです。

過去に関わった影響力のある人物との関係で、その人物の言葉や考え方が自分のことのように思えて、本当は自分はそう思っていないのに「それが正しいのだ」と思い込んで、人の価値観で行動して上手くいっていないケースがたくさんあります。

私がコンサルでよくやるのは、今の自分の問題を今のこととして考えないで、遡って「なぜそういう思考になったのか」という根本的な意識に働きかけるという、カウンセリング的な話をします。

社長さんのお父さんの仕事の価値観、お母さんの教育の価値観など、そういったところまで踏み込んで聞いてみると「たしかにそのことが今の自分に影響を与えていて、固定観念や色眼鏡で部下を見ていました」ということが結構あります。

そこに気づくと自覚するので、そこを変えていくと自分自身の主体的な本当の価値観というのがわかってきます。

つまり、かつて自分に対して影響力のある親や学校の先生、友達、親友などが言っていることを聞いているうちに、それが自分の価値観だと錯覚しているケースがあるのです。

それを引き剥がすというのも結構重要なことなのです。
これは自分に限らず周りの人も皆そういうリスクを背負っています。

上手くいくケースもありますが、知らず知らず自分の価値観と思い込まされていて、しかしそれは本来の自分の考えていることではないというケースもあります。
人に合わせているうちにそうなってしまうのです。

そこで、時にワークとして私がやっているのは、部屋を少し暗くして落ち着いた状態で、フィーリング音楽などを流して自分の過去と向き合うという作業をしてもいます。

これは深いワークなので、場合によってはじっくり時間をとって落ち着いた環境でやってもらいます。
ある意味で深層心理に関係するので、騒がしい状況でやっても出てこないのです。

例えば、今の自分が子どもとの関係で失敗することがあります。
子どもが悩みを言ってくれない、すぐに言い争いになる、子どもが実は学校でいじめられていることを言ってくれないなど、色々なことがあります。

言ってくれないのは自分と子どもの問題だと思うかもしれませんが、実は違うのです。
自分がかつて小さかった頃に親からされたことが、自分なりのフィルターを経て子どもに下りているのです。

そういう歪んだ状況で子どもが思ったように話してくれない、子どもがメンタル的に落ち込んでいる、あるいは配偶者との関係でコミュニケーションが上手くいかない、兄弟でもいがみ合うことがあります。

「あいつばっかり親から優しくされている」といった兄弟間の妬みは、お互いそう思っているケースがあるので面白いです。

自分は自分で「弟ばっかり」と思うし、弟は弟で「お兄ちゃんばっかり」となることもあります。

お互いが「自分ばっかり損をしている」と思いがちですが、よく見ると皆そう思っているのです。

なぜかというと、相手の事情が見えないからです。
それは、これまで生きてきた中で自分に対して力を持っている親や兄弟や年長者など、そういった人の強制的な価値観の刷り込みがあるからなのです。

例えば「おまえは出来が悪い」「おまえは足が遅い」とずっと言われていたら本当に遅くなってしまうのです。

本当はもっと明るい人のはずなのに「おまえは引っ込み思案だ」と言われ続けると、引っ込み思案だと思い込んで、引っ込み思案になってしまうのです。

あるいは、本当はチャレンジングで好奇心旺盛な子だったのに、見た目がたまたま大人しそうなだけで「おまえは大人しい」「おまえは行動力がない」と言われ続けたら、本当に引っ込み思案になってしまいます。

私は実際にそういうケースを見たことがあります。
ですから、周りの言葉というのは“凶器”になり得るのですが、恐ろしいことにその自覚がないのです。

両親もそうだし、周りの大人もそうだし、友達もそうです。
それをはね返すだけの強さなんて普通はないので、言われた通りに考えてしまうのです。
これが誰かの価値観の借り物のような状況です。

しかし、「自分はそんなことはない」と皆思っているのです。
私だって親や兄弟や学校の先生の言葉など、良いことも悪いことも含めて影響を受けています。

深層心理のところというのは、良いものも悪いものも区別なく受け入れてしまうのです。
その柔らかいスポンジの部分で何を受け止めたかが大事になります。

マイナスの話をすると、例えばよくあるのが、子どもとの関係が上手くいっていない、あるいは部下との関係が冷ややかになっていたりすることがあります。

「部下が本音を言ってくれない」「同僚とは表面上の付き合い」「上司からは信頼されていない」と思っているケースがあります。

その場合、その源流は相手が悪いと思ってしまうのです。
しかし、そうではなくて自分が変わるしかないのです。
それは影響の輪だからです。

どちらか一方が100パーセント悪いのではなくて、だいたい50対50ぐらいだと思えばいいのです。

半分は自分にも原因があるのなら、その半分の自分の原因の部分を変えれば必然的に相手も変わってくるのです。

影響の輪の中の範囲でしか自分で行動を起こせないのです。
自分は無自覚でやっているけれども、それは色々な影響を受けています。

例えば失敗があったらすぐに小言を言われたり怒られることがあります。
普通は失敗ばかり目に付くので、振り返ってみると褒められたことよりは怒られたことのほうが多いのです。

今日のコンサルで面白かったことがあるのですが、お母さんには叱られてばっかりだったというイメージを持っている人がいます。

10のうち叱られた割合と褒められた割合を聞いたら、9対1どころか99対1と言っていました。

本当は違っているかもしれませんが、99パーセントは怒られて、1パーセントぐらいしか褒められた記憶がないという印象を持ってしまっているのです。
これがポイントです。

お母さんは半々のつもりで言っていたのかもしれませんが、言われた側の子どもというのは怒られているほうが印象が強いので、これをずっと引きずってしまうのです。

そうすると「ミスをすると叱られる」という刷り込まれてしまうので、失敗を恐れてしまうのです。

大抵の方はこのパターンです。
だから「ミスを恐れるな」と言っても響かないのです。

お母さんからは怒られますし、お父さんからはゲンコツをもらっていたかもしれません。
あるいは、お父さんは頑固だしプライドもあるので、言ったことを曲げないことがあります。

たまたま勘違いで間違ったことで怒ったとしても、あとで「ごめんね」と言えないお父さんもいます。

それから、照れもあるのでお父さんが褒めることが少ないです。
「うちの父からは褒められたことがない」ということを自慢げに話す人がいますが、褒めないことが良いのかはわかりません。

本人に影響を与えるからです。
実はそれが上司が部下を褒められない原因になっているかもしれないのです。

今は承認や褒めることが大事だと言われていますが、そもそも自分の親から褒められていないので、他人を褒めることなどできるはずがないのです。

自分が親からやってもらっていないことを会社でやるのは無理です。
そこが自己啓発やセミナーに行ってもできない原因の1つなのです。

そもそも、できる人は自己啓発に行く必要はありません。
どうして「褒めなさい」「認めなさい」と言わなければいけないかというと、それができないからです。

なぜできないかというと、自分が子どものときにやってもらってないケースが多いからです。

ですから、自分がどういうふうな扱いを受けていたか、親との見つめ直す必要があります。
もちろん愛情はあったはずなので良いこともあるでしょう。

しかし、親というのはその愛情を素直に表現できないのです。
その部分をくみ取ってあげる必要があります。
私の子どもも私に対して不満を持っています。

その「不満を持っているのだな」ということから逃げずに直視して、愛情はあるはずなのになぜそうなったのかということを考えてみます。

照れ隠しもあるかもしれませんが、頑固で褒めない、あるいは「お金は怖いものだ」ということが刷り込まれます。

例えば、自分が家族で旅行に行きたい、あるいは自分が何か習い事をしたいという場合はお金がかかります。
そうすると、自分が寝たあとに両親が相談するのです。

「入会金はいくらなのだ」「用具を揃えるの大変だよね」「試合に出るのに移動費もかかるよな」「遠征したらどうなるのだ」「じゃあ、もっとお父さんの小遣い減らさなきゃ」というふうにお金のことで色々と話し合って、険悪になる可能性があります。

それを子どもが聞いたらどう思うでしょうか。
「僕が『野球やりたい』なんて言わなきゃ良かった」というふうになってしまうのです。

もっと悪いケースでは、「おまえなんかいなきゃ良かった」ということを親に言われた方もカウンセリングでいらっしゃいました。

それを1回でも言ったら子どもは覚えています。
怒りに任せてそれを言ってしまったら最後なのです。

何十年かの間に感情に任せて言ってはいけない一言を言ってしまうケースもありますが、そういう言葉は子どもは覚えています。

言った親は覚えていないのですが、子どもはずっと覚えています。
そういう経験がどこかであったときに、子どもというのは親に反発しやすいのです。

だから話さなくなってしまうのです。
それを見て親は「子どもが自分に話をしてくれない」と悩むのです。

これがお互いの齟齬です。
振り返ってみると、自分が親になったら子どもにも同じことをやるのです。
こういうのは親から子に引き継いでいってしまうので、どこかで止めなければいけません。

自分が親とのコミュニケーションで「こういうことをされて嬉しかった」ということもありますし、「こういうことをされて悲しかった」ということをきちんと振り返って、メンタル的なことを確認すると自分が変わることがあります。

だから、誰かとの関係が上手くいかなくて悩んでいるとしたら、そのルーツを辿ると親御さんとの関係で同じようなことがあることが結構あるのです。

「なぜ親との関係を見るのですか?」と聞かれることがあるのですが、そこが源流だからなのです。

人によっては「いや、私が聞きたいのは子どもとの関係だ」「私が聞きたいのは部下のマネジメントについてだ」と言うのですが、そこではなくて、その前の段階が問題なのです。

部下ができないと思って言っているから、テクニックが使えないのです。
それは大本を辿ると、親が自分を信用していないと思っているからです。

目上の人間が自分を信用しているのが当たり前だということを何十年もの親との関係で刷り込まれている人が、部下を信用するわけがないです。

だから、いくらテクニックを学んでもできないのです。
そこにきちんと向き合って理解した人が変わっていくのです。

ですから、テクニック以前に、自分のメンタルの源流が親との関わりできちんと発展できているかどうか、あるべき人間関係になっているかどうかを見ることが大切です。

実は、そうはなっていないケースが多いのですが、なっていなくても良いのです。
なっていないということに気づくことが大事なのです。
気づけば転換することができます。

自分が子どもの頃に体験したことを、大人になってそのまま自分の周囲に対してもやっていることがあるのです。

だから、20歳までの親との関わりというのがすべての基本なのです。
そこに向き合うことが大切です。

感受性が豊かな若い頃にはスポンジのように良いことも悪いことも吸収しています。
ですから、慎重な父親、だらしない父親、酒臭い父親、そういうものもすべて吸収するので、それが嫌になってしまって色々な部分で理解し合えなくなることが多いのです。

今の人間関係というのは、ルーツを辿ると自分の親や、場合によってはさらに祖父・祖母との関係でどうだったかということまで考える必要があります。

それが考えられると、もっと広い気持ちで自分の性格を見つめることができるようになります。
これは深いワークなので、体調が良いときにやることをお勧めします。

「自分が部下を信用していないのは、自分が親父から信用されていないことに対しての反発もあったのだな」ということがわかってくると面白いです。

「聞く力」や「ラポール」など、質問のテクニックではないのです。
そこをいくらやっても改善などしません。

自分が生まれてからの人間関係を振り返ってルーツを辿ってみると、自分の思考のクセがわかって、本来やりたかったことがわかります。

いかに他人の価値観で自分が変わってきたかがわかります。
人の価値観で生きるのはやめましょう。

つらいことなのかもしれませんが、そうやって自分の価値観を振り返るというのはとても良い作業です。

今の自分の思考・行動は、過去の環境や人間関係の積み上げの成果でもあるということを意識してみるだけでも違います。
ルーツを知るということも大事な自己啓発かと思います。

そもそもの自分のあり方が、本来自分の理想とするところと違う価値観からスタートすると、どんなにテクニックを使っても間違った価値観になってしまうし、長い目で見て自分のためになりません。

非常に根本的な話ですが、参考になさってください。
私はいつもあなたの成功・スキルアップを心から応援しています。
ここまでご覧頂きまして誠にありがとうございました。

柴山式簿記講座受講生 合格者インタビュー
商品に関するご質問・ご相談はこちら