第143回1級の講評と感想 【がんばろう!日商簿記1級合格511】

がんばろう日商簿記1級合格、今回は第143回簿記1級の講評と感想をお話したいと思います。
昨日は第143回の日商簿記検定がありましたが、簿記1級を受験された方、大変お疲れさまでした。

手応えを感じた方やそうではない方など、色々な方がいらっしゃると思いますが、ここまでがんばったご自身を褒めてあげて、次のステップに向けてがんばってください。

まずは全体的な講評としては、今回の出題の中で難しい印象を受けたのは会計学の第二問の在外子会社です。
ここは出来がすごく悪いかもしれないので、配点が低い可能性があります。

多くの専門学校は第1問の理論が5点、第2問の在外子会社が9点か10点、第3問の工事契約が10点から11点という配点になると思いますが、もしかしたら在外子会社を5点にして理論を10点にした場合は点数の状況が変わる可能性もあります。

理論は1点×5か所というイメージがあるかもしれませんが、在外子会社の出来があまりにも悪いかもしれません。

公認会計士の勉強をされている方でもてこずる論点があるので、在外子会社に関しては5点の可能性もあると思っています。

そうすると第1問が10点、第2問が5点、第3問は10点という可能性もないわけではありません。

そうなると、理論が5点のとき14・5点だった人が、理論がプラス4点ぐらいになって、18点や19点と、一気に4点ぐらい上がる可能性があります。

自己採点で70点いってなくても、このへんの配点のさじ加減で70点を超える可能性がありますので、あまり先入観をもたずに、冷静に結果を待ちましょう。

それ以外は、リーズナブルで標準的な問題だと思っています。
したがって、合格率は10パーセント前後だと思っています。

工業簿記・原価計算が特別難しいというわけではないので、48点ぐらいまでは得点できそうな問題です。

工業簿記は22・3点取れそうですし、原価計算は上手くいくと満点も取れそうな可能性があるので、そうなると45点以上が結構出る可能性があります。
ここで点数を稼げる可能性がありますので、少なくとも40点以上を目標にしたいです。

商業簿記の量が多いので、時間切れになって、商・会で30点、工・原で40点で70点というやり方もあります。

自分のできる範囲でしっかり取って、目標は商業簿記が17点前後で会計学は15点ぐらいだと思うので、合わせて32点ぐらいです。

工業簿記は20点以上で、原価計算も20点以上が目標ですが、原価計算はもう少し得点できるかもしれません。

すべて合わせて72点、もう少しできる方ならば80点以上を狙うというのが現実的な得点戦略です。

商業簿記は損益計算書などで、一つ一つを丁寧に解いていけば25点中17点ぐらいは取れる気はします。

会計学は14・5点ぐらいだと思うのですが、理論の配点が変わった場合は18点や19点になる可能性があります。

ただ、会計学の理論に関して、5番目の四半期報告書の実績主義というのは、昔から会計士試験などの財務諸表論で出ていました。

中間財務諸表というものが昔あり、「予測主義」「実績主義」という言い方がありました。昔は予測主義でしたが、今は実績主義というやり方です。

実績主義は簿記1級の会計理論ではそこまで手が回らないと思うので、5つのうちの4つ、「希薄化」というのは柴山式のテキストならば最初のページの1株あたりの当期純利益など、結構出ています。

丁寧にやっていれば今回の理論は5つのうち4つ取れる可能性があります。
「使用価値」「減損会計」「時価ヘッジ会計」「希薄化」「移転損益」という言葉はすべてテキストに書いてあるので、丁寧に読み込んだ方は5つのうち4つは狙えます。

ここの配点が5点なのか10点なのかで違ってきますが、10点の配点が来た場合はボーナスになりますから一気に4点ぐらい上がります。
在外子会社がどういう出来かにもよって、みんなができない可能性もあります。

商業簿記は量が多いので、1個1個丁寧にやっていって部分点を拾い集めて17点ぐらいかと思います。
実際に私の周りで受験した人が自己採点で17点ぐらいでした。

会計学は配点によっては19点ぐらいになる可能性もありますし、理論が5点で第2問が9点で第3問が11点ぐらいだと、14点か15点かと思います。

工業簿記・原価計算についてですが、工業簿記は実際総合原価計算で、製造間接費は正常配賦という形で、しっかりとテキストや過去問などをやっていればそれほど驚くような問題ではなく、標準的なレベルで私は良い問題だと思っています。

今回は会計学以外は標準的なレベルで、会計学の特に第2問の在外子会社だけが難しいという印象なので、全体的には実力を測るにはちょうどいい良問だと思っています。
このレベルを維持していただけると日商簿記検定の1級の受験生はチャレンジする意義があるのかなと思っています。

この問題ならば会計学の第2問の難しさも目をつぶることができますが、配点はあまり大きくしないでほしいと思っています。

第2問の在外子会社の問題は10点配点だときついので、個人的には6・7点か、5点でもいいと思っています。

簿記1級の合格率は15パーセントぐらいでいいと私は思っています。
受験生の裾野を広げるという意味では、それほど難易度を損なわないレベルで合格率を15パーセントぐらいに維持するのがいいのではないかと思います。

原価計算については品質原価が出ましたが、昔出題された本格的な品質原価計算というよりは、少し意思決定を絡めたマイルドな問題になっています。
基本的なところを問う良い問題です。

私の周辺で受験した人に聞くと、「満点を狙えるかもしれない」とのことでした。
工業簿記は1個か2個間違える可能性はありますが、原価計算は場合によっては満点が出るかもしれませんので、工業簿記・原価計算は45点ぐらいの得点で受かる方も柴山式では出てくるかと思っています。

しっかりと対策をすれば安定的に高得点が狙えます。
今回は会計学の第2問の在外子会社について怖じ気づかないことが大事という気がします。

会計学については少し難しい問題が出たので、資料をアップロードしたのでご覧ください。

会計学の第2問の設問1の①、のれんの106,920という模範解答がありますが、この数字はどうやって出したのかということと、⑤の為替換算調整勘定の33,105というのは少し特殊な出し方です。

設問2は23,625という為替換算調整勘定です。
これは無視してもいいぐらいです。

いずれ柴山式の講座を受ける方も、過去問集を出したときに解説しますが、どうしても難しいというところだけワンポイントでお話しますと、のれんの計算は外貨ベースでのれんを出します。

990というのは外貨ベースで、例えば、元々純資産は資本金が1,300ドルで利益剰余金が支配獲得時は500ドルで1,800です。
プラス、評価差額は税効果後に300あります。

ということは、1,300+500+300で2,100ドルあります。
2,100×0.6なので、1,260です。

このときの取得は2,250なので、1,260-2,250ドルで950ドルです。
990÷10年で99なので、990-99で891が残高です。

これに対してCR(決算日レート)をかけると106,920になります。
大変ですが、これができるとアドバンテージになります。

為替換算調整勘定を簡単に説明すると、S社B/Sが板書に出ていますが、資本金が1300×HR、ヒストリカルレートで1,110のうち143,000、利益剰余金も一つ一つ丁寧にヒストリカルレートで辿っていくのです。

500×HR110、これは支配獲得時、1年間で700×利益×AR(平均レート)115で80,500で、足す55,000、そこから発生時レートの配当100×112円で11,200を引きます。
評価差額まで、支配獲得時で300ドル×110円で33,000です。

こういったものを全部足して、時価ベースで、諸資産120×4,200で504,000です。
これは支配獲得時です。

負債もCR(決算日レート)です。
純資産はHRです。

したがって、HRの純資産とCRの純資産の差額ということで、為替換算調整勘定は非支配者持分を含んで23,700です。

この23,700の純資産から生じる為替換算調整勘定と、のれんにも為替換算調整勘定が出ます。
ここが会計士レベルで、簿記1級では難しいところです。

990×HR、支配獲得時は110で108,900で、そこから平均レートで償却します。
そして11,385、差し引き97,515というのは、発生時レートベースです。
97,515に対して決算日レートが891×120=106,920です。

これがバランスシートに出てくるのですが、これとの差額で9,405です。
9,405の、のれんから出てくる為替換算調整勘定と、S社の純資産が出てくる為替換算調整勘定23,700を足して、合計33,105です。

これが問1の⑤です。
なかなかできないと思います。

うちで勉強している会計士の受験生で短答式合格レベルの人が見ても「これは難しいですね」と言っているので、やはり難しいです。

もう1個、連結会計上の為替換算調整勘定23,625ですが、これは何かというと、33,105というのは、S社の子会社の純資産の為替換算調整勘定で、非支配者株主持分に入っています。

つまり40パーセント入っていますので、純資産の40パーセントの分を引いて、23,625です。
S社の純資産から生じる為替換算調整勘定というのがあります、これはテキストでも若干やっていますが、そのうちの0.6掛けの持分とのれんを足したものです。

ややこしいのでできなくてもいいです。
どういうことかというと、23,700というのは非支配者株主持分の40パーセントを足しています。

23,700から親の持分だけを抜き出すと、14,220とのれんは親会社の持分なので、9,405を足して23,625です。
これが設問2の為替換算調整勘定で、これができたら素晴らしいです。

これはできなくてもいいですが、資本金143,000だけはできてほしいです。
非支配者株主持分も出せることは出せますが、資本金は取ってほしいと思います。
のれんはできるかもしれないので、これができたらアドバンテージです。

しかし、為替換算調整勘定の33,105と設問2の23,625はできなくてもいいです。
今回の会計学の第2問は、狙うならばのれんの金額と資本金と非支配者株主持分の3つで、最低限資本金だけは取ってほしいです。

会計学の第2問は難しい部類に入りますが、それ以外は比較的正しい努力が反映されますので、会計学は足切りが若干怖いですし、商業簿記もイージーミスをたくさんするときついかもしれませんが、丁寧にやっていけば70点台の点数が狙えると思います。

良い問題も多いので今後の復習に役立ててください。
以上で第143回簿記1級の講評と私の感想を終わりにします。
お疲れさまでした。

柴山式簿記講座受講生 合格者インタビュー
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