中国が為替予約規制で資本の海外流出を防止
中国人民銀行が1日に、人民元の為替売り予約に際して、利用者の負担が大きくなるような規制の導入を一部の銀行に通知したそうです。
具体的には、10月15日から顧客が元売りの為替予約を行う場合に、銀行が残高の20%を「危険準備金」として人民銀行に預ける義務が生じる、というものです。
この準備金は無利息ですので、銀行にとっての商品ともいえる資金が一部拘束されることになり、収益性が落ちます。
人民元がそのような為替予約の売り取引を規制する背景には、8月11日に輸出の刺激策として元の切り下げに踏み切ったことがあげられます。
その後、将来的にいちだんと元が下落することを見込んで、さらに元の売り予約が増えることを嫌っての動きではないかと考えられるのですね。
ここで基礎知識です。
<為替予約>
為替予約とは、将来のある一定期日の取引において、ある通貨と他の国の通貨に関する交換比率(為替レート)をあらかじめ決めておく取引です。
たとえば、一か月後の取引を見越して、銀行と1ドル120円で1万ドルを売る約束をしたとします。
そうすると、一か月後に、約束通り1万ドルを銀行に売り、1万ドル×予約レート120円=120万円の現金を受け取ります。
そのとき、予約実行日の直物為替相場が、115円のドル安になっていれば、1万ドル×115円=115万円を市場から調達して、銀行に120万円の為替レートで売ればいいので、5万円の為替差益を手にすることができますね。
いっぽう、反対に1ドル123円とドル高に振れたら、逆に市場から123万円でドルを買ってこなければならないため、3万円の為替差損になってしまいます。
こうかんがえると、為替予約取引はバクチにもなりえることがわかります。
もちろん、その前提として、すでに1万ドル相当の売掛金を持っているなど、外貨の実物資産を裏付けて持っているならば、予約日の直物レート(実際の取引レート)で市場から外貨を調達せずとも1万ドルの売掛金が現金として入金されてくるので、それを円に換えるだけですから、手取りが減るだけで円の持ち出しはなくなります。
けっきょく、為替予約は、貿易取引などによる外貨の実物資産などがあって、はじめてリスクヘッジになるのですね。
そのいっぽうで、予約実行日に直物レートで調達することを前提に、為替予約を行うような投機取引(バクチのような取引)もじっさいに存在します。
こういった側面を理解しておくと、為替予約などのデリバティブ取引(金融派生取引)のイメージがわきやすいです。
今回の人民銀行の措置は、元の売り予約を規制する方向の動きですので、過度の元の下落は望ましくないと考えての行動だと思います。
なお、会計的には、為替レートの変動により生じた損益は、基本的に「為替差損益」として、損益計算書の営業外収益または営業外費用に計上され、経常利益の計算要素となります。
ご参考までに知っておいてくださいね。
以上、人民銀行の為替予約に関する規制のお話でした。
(日経15*9*2*1)