東芝が過去の決算訂正で利益2130億円減少
東芝は18日に、新しい経営体制と過年度の決算修正に関する発表を行いました。
「新経営体制及びガバナンス体制改革策並びに過年度決算の修正概要
及び業績予想についてのお知らせ」
→ http://www.toshiba.co.jp/about/ir/jp/news/20150818_2.pdf
これによりますと、社外取締役4名と公認会計士1名および弁護士1名からなる経営刷新委員会を設置し、オブザーバー数名とともに、今後の経営体制及びガバナンス体制について集中討議したそうです。
そのなかで、前半の経営体制に関する話題はともかくとして、後半の過年度決算の修正(途中経過)について、言及してみたいと思います。
2008年度から2014年度第3四半期までの税引き前損益の修正過程につき、
概要を次の通りまとめてみました。
1.修正前の税引き前利益
2008:△2597億円
2009:272億円
2010:1947億円
2011:1454億円
2012:1596億円
2013:1809億円
2014:1349億円(※9カ月累計)
期間合計:5830億円(A)
2.修正後の税引き前利益
2008:△3400億円
2009:△100億円
2010:2100億円
2011:600億円
2012:800億円
2013:1800億円
2014:1900億円(※9カ月累計)
期間合計:3700億円(B)
3.修正差額(B-A)
3700億円-5830億円=△2130億円!!
なんと、直近6年9カ月の累計で、2130億円もの利益が水増しされていたとは…
2009年度は、272億円の黒字が100億円の赤字に転落しています。
利益がプラスかマイナスかでは、企業評価が大きく異なります。
これがもしも意図的だとしたならば、悪質ですね。
ほかにも、1000億円近い利益の減額修正が複数年にわたって存在しています。
経営責任および監査責任があらためて注目される状況だと思います。
なお、過年度の損益の修正が、当期の決算書の、どの部分に影響するかについて、この機会に考えてみましょう。
当期の損益計算書は、あくまで「当期の収益・費用の発生」しか計上できませんので、過年度の損益は過去に発生したものとして、損益計算書に計上されません。
ではどこに出るか…
こたえは貸借対照表(バランスシート)の純資産の部にあります。
「利益剰余金」という表示科目です。
たとえば、東芝の決算短信を参考に、2014年12月31日時点の2014年度第3四半期末の利益剰余金を確認してみましょう。
*****東芝のバランスシート(一部)
*****2014年12月31日時点
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(資産の部)****|(負債の部)
***:******|***:
**********|(純資産の部)
**********|***:
**********|利益剰余金6904億円
**********|***:
過去からの損益計算書で計上された利益のうち、社内に留保されている蓄積額としての利益剰余金は、6904億円ありました。
その後、18日に発表された通りの修正が行われたとして、過年度の損益が2130億円減少したとするならば、想像される修正後のバランスシートにおける利益剰余金は、次のとおり4774億円あたりになると思われます。
****修正後の東芝の予想バランスシート(一部)
*****2014年12月31日時点
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(資産の部)****|(負債の部)
***:******|***:
**********|(純資産の部)
**********|***:
**********|利益剰余金4774億円
**********|***:
バランスシート上の利益剰余金(6904億円)のおよそ30%にものぼる2130億円という巨額の過年度損益修正は、東芝の投資家に帰属する株主持分に大きな影響を与えることになると考えられます。
業績の過年度修正は、バランスシートの利益剰余金に影響を与えることになる、ということをこの機会に知っておいてください。
(日経15*8*19*3)