シャープが減資の報道で一時31%株価下落
シャープが11日の株式市場で株価が大幅に下落しました。
最近、新聞で報じられた減資のニュースにより、株式市場において、シャープの経営再建が不安視されたものと思われます。
※(参考例)毎日新聞のウェブ記事
→ http://mainichi.jp/select/news/20150509k0000e020200000c.html
これら報道によると、1218億円の資本金を1億円に減らす方針を決めたという内容だそうです。
6月下旬の株主総会で承認を受け、減資を実施する予定だとか。
たしかに、株式市場に与えるインパクトは大きいと考えられます。
じっさいに、11日の株価を見ると、
※11日のシャープの株価
・前週末終値258円
・11日
始値178円
高値210円
安値178円
終値190円
最大で80円(31%)もの株価下落となっています。
今後のことは不透明ですが、そもそもなぜ、減資を行うのか、について理解を深めるケーススタディーとはなりそうです。
減資とは、会社の資本金を減少させることです。
株主総会の特別決議という手続を経て実施されます。
減資にさいして現金を支払うのが有償減資、現金の支払いを伴わないのが無償減資です。
通常は現金を支払わない無償減資がおこなわれます。
だいたいが、経営が苦しい時に行われるからです。
じゃあ、どんな場合に実施するかというと、会社のバランスシートに繰越損失がある場合に、その損失を資本金と相殺してなくしてしまいたいときなどに減資を行うことがあるのですね。
たとえば、シャープの2014年3月期におけるバランスシートを見てみると…
*******バランスシート****(億円)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(資産)***17,724|(負債)***15,789
**********|(純資産)
**********|資本金*****1,218
**********|繰越利益剰余金*△208
**********|***:***
ここから2015年3月期の業績を加味するので、増減はあるでしょうが、おおむねイメージは湧いたと思います。
繰越利益剰余金△208億円が累積した損失なのですね。
これをゼロにするために資本金と相殺する、というお話です。
(参考イメージ)資本金がマイナス208億円だけ減ったと仮定
*******バランスシート****(億円)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(資産)***17,724|(負債)***15,789
**********|(純資産)
**********|資本金*****1,010
**********|繰越利益剰余金***0
**********|***:***
しかし、ならば200億円プラスいくらかといった感じで、そういったレベルの金額(それでも大きいかもしれませんが)なので、1200億円もの資本金を1億円まで落とす必要まではないように思いますよね。
いちおう、第3四半期(2014年12月)の決算発表では、当期の見込み損失が300億円なので、これがまるまる2014年3月期の損失に加算されても500億円程度となります。
そこで、その時の新聞報道を見ると、資本金1億円にすることで税制上は中小企業の扱いとして恩典が得られる、というお話です。
う~ん。
税制上の恩典と引換えに、信用であるとかブランドとか、失うものもけっして小さくない気がするのですが…
あくまで新聞情報をそのまま受け取ったらそういうイメージになる、というだけで、一次情報に触れているわけでもない立場としては、詳しくは判断しかねる、といったところが実情でしょう。
いずれにせよ、株式投資家は新聞記事の情報をある程度参考にせざるを得ないでしょうから、さすがに資本金1億円というのはインパクトが強いですね。
繰越利益剰余金をマイナスからプラスに転じさせることで、次に黒字が出れば、すぐに配当が可能になるなど、一定のメリットがあるため、経営再建を目指す企業の中で、減資による損失の相殺は時々行われます。
今回は、そのケーススタディーとして、ご理解いただければよろしいでしょう。
(日経15*5*12*15)