ソニー、中期経営方針で分社化推進を発表(日経15*2*19*1)
ソニーが18日に発表した中期経営方針が、とても興味深いです。
→ http://www.sony.co.jp/SonyInfo/IR/info/strategy2015/pdf/pressJ.pdf
2015年度~2017年度の経営方針の概略ですが、今のソニーの苦戦している姿と、未来に向けての決意がありありとわかる貴重な資料となっています。
その骨子は、次のとおりです。
1.規模を追求せず、収益性(つまり効率性)を重視した経営
2.事業ユニットごとに自立して、株主の視点に基づく経営
3.事業ポートフォリオの観点から位置づけをそれぞれ明確化
そこで、業績評価の指標として、ROIC(Return On Invested Capital )、すなわち投下資本利益率を採用することにしています。
ROICは、事業ごとに投下した資本(投資額)に対して、事業が稼いだ利益の比率を求めた数値です。
この数値の向上をめざして経営を行うことで、ひいてはグループ全体のベースにおけるROE(自己資本利益率)を10%以上、営業利益5,000億円以上を達成する目標を掲げています。
こうなると、ソニーの内部にある多くの様々な事業を細かく評価し、収益性の高いものと低いもの、それぞれの現状に合った事業再編戦略をとることも視野に入れている、と考えていいでしょう。
ここでいう事業再編とは、一般的には企業結合(M&A)または事業の分離などにかかわる経営戦略とその実務のことです。
会計テーマとしては、ほぼ日商1級レベルなのですが、近年、上場企業において、この事業再編戦略はとても重要になってきています。
税理士試験ではあまり深く取り上げませんが、まさに公認会計士試験では気合を入れて取り組まれている領域です。
税理士と会計士の業務スタンスの違いがもっとも鮮明にあらわれる領域の一つともいえるのです。
日商簿記1級は、会計士試験と税理士試験のあいの子といったイメージです。
ほんのすこし、会計士試験にスタンスが近いかな。
そういった意味では、おなじく会計士試験と税理士試験のあいの子といった位置づけにある全経上級のほうが、帳簿組織や商的工簿があるぶんだけ、やや税理士に近いのでしょうか。
さて、ソニーの中期経営方針の話に戻りますが、そのなかで、事業の分社化というキーワードが何度か出てきます。
たとえば昨年はテレビ事業を分社化していますし、今年は10月1日をめどとしてビデオ&サウンド事業を分社化して、独立した完全子会社として運営する予定だそうです。
この分社化とはなんなのか、といいますと、ざっくりいえば、会社の部門を別会社化して子会社とする、というイメージがわかりやすいでしょう。
事例としてソニーが2014年7月におこなったテレビ事業の分社化を確認してみると、2014年7月1日にソニーのテレビ事業の経営資源を分離して、ソニービジュアルプロダクツ株式会社を設立する、という方法によっています。
そのさい、ソニービジュアルプロダクツの全株式をソニーが所有するので、100%子会社(完全子会社)となります。
1つの会社で複数の事業を行っている場合に、どうしても社内の管理体制が混乱したり、肥大して不効率になったりしがちになります。
また、経営方針の選択と集中を行う際にも、社内でどっちつかずになったり、混乱をまねいたりして、なかなか経営戦略の迅速な決定と行動ができなかったりするのですね。
そこで、大きくなりすぎた組織をもっとスリムにして意思決定権限を適切に分けることにより、結果として各事業の効率的な運営を可能にできることがあります。
ソニーグループとしては、昨年のテレビ事業にひきつづき、今年はかつての会社の魂ともいえるウォークマンを含む音響・映像事業を分社化するという大技に踏み切ることにしたのですね。
会社としては独立することになりますが、グループ全体の連結決算としては合算されると考えられます。
「なんだ、結局は連結するのと同じなんだ」
そのような声が聞こえてきそうですが、法律的には別法人になるのですから、組織としては単独で迅速な意思決定や活動をしやすくなるのは明らかです。
また、自立の姿勢が鮮明になるので、ここはまさに背水の陣として、おそらく現場はより集中して仕事に打ち込めるのではないでしょうか。
個人的には、とても興味深い意思決定だと思っています。
規模から効率への転換を図るために、分社化戦略をつぎつぎに打ち出したソニーの今後に、ぜひ注目していきたいですね。