従業員に自社株を報酬として与えるESOP(日経15*2*6*1)
カルビーは、毎年会社の業績に大きく貢献した社員をたたえる表彰式で、今年度から新しい報奨制度を加えたそうです。
自社株の提供がそれです。
この時の事例では、営業担当の川瀬さんという方が、ドン・キホーテHDなどを取引先として、売上高を年間7億円伸ばしたということで、自社株を賞品として受け取ったそうです。
これが従来の賞金制度で行くならば、100万円だということなので、これでもホクホクだと思うのですが、そのときは自社株で受取る方法を選択したとか。
これにより、現在の株価でいくと210万円の価値にまで上がったそうで、現金で受取った場合の2倍に価値が上昇したそうですよ。
なるほど、うまいやり方を考えたものだな~、と思います。
ちなみに、このような従業員に対する報酬を自社株で与えるやり方をESOPと呼ぶことがあります。
ESOPとは、Employee Stock Ownership Plan の略です。
会社の業績や従業員の成績や勤続年数などの評価ポイントに応じて自社株を与えるという報酬制度のことですね。
ちなみに、本家のアメリカなどでは、退職時に引き出しが可能となる確定拠出型退職給付制度の一環というイメージですが、日本版は、これとはちょっと違った感じになっているようです。
日本版ESOPといいますが、これは、米国の制度を参考として、従業員持株会の拡張版というのが、より実態に近い感覚でしょうか。
細かいことはともかくとして、自社株を従業員への報酬の一環として活用するのは、株価維持の観点からも、従業員が安定株主として存在感を増すなど、企業にとってはそれなりにメリットが多かろうと思います。
もちろん、それもこれも株価があるていど好調であれば、ということですけどね~。
三菱信託銀行によれば、2014年には武田薬品や日本オラクルなどが導入を決めたということです。
現在、従業員に自社株を報酬の一環として与えるということでいけば、より一般的に有名なのはストックオプションですね。
ストックオプションは、会社が従業員や取締役に対して、あらかじめ決められた価格(行使価格)で会社の株式を取得できる権利を付与する制度です。
株価が上昇すれば、オプションを行使して従業員や取締役はそのメリットを享受できるわけです。
自社の株価が上がる、ということは通常もうかっているわけで、とすれば社内の従業員も、より本気になって会社の業績を上げようとするよね、というロジックになります。
ある種のニンジンということですが、がんばって会社の業績が上がれば株価も上がり、ひいてはストックオプションの価値も上がるので、これはうまい方法だと思います。
なお、会計処理としては、ストックオプションを付与したときに、その評価額を次のように仕訳します。
(借方) 株式報酬費用 ××× / (貸方) 新株予約権 ×××
新株予約権勘定は、バランスシートの純資産の部に表示されます。
権利行使されたら、新株予約権の額は、資本金などに振り替えられます。
従業員への報酬の与え方が、いろいろと多様になってきたので、選択肢が増えるのはいいのですが、会計処理や決算の観点からは、より複雑になって、経理担当の人にとっては、頭を悩ませるネタが増えることになりますね。