財務諸表の作成と会計帳簿⑤試算表【知識ゼロからの会計学入門010】

知識ゼロからの会計学入門、第10回。
今回は「試算表」について勉強します。

今まで勉強したとおり、会社で日々行われる取引は「仕訳帳」という入力用の帳簿と「総勘定元帳」という転記用の帳簿に記録し、それをまとめて「財務諸表」という形で、投資家や債権者など外部の利害関係者に開示します。

仕訳という手続きをしましたが、これはパソコンでいうところの入力画面です。
取引例を確認します。
①から⑤までの5つの取引がありました。

①は(借方)現金1,000,000 (貸方)借入金1,000,000です。
銀行からの借入によって現金が100万円増えたということです。

②は(借方)現金2,000,000 (貸方)資本金2,000,000です。
株主からの出資で現金が増えました。

③は(借方)借入金250,000 (貸方)現金250,000です。
借入金のうち25万円を現金で返済したということです。

④は(借方)仕入2,400,000 (貸方)現金2,400,000です。
商品を現金で仕入れました。

⑤は(借方)現金4,000,000 (貸方)売上4,000,000です。
商品を400万で売ったことによる収益の発生がありました。

パソコン会計では、このような仕訳の入力業務を行うと自動的に総勘定元帳へ数字が分類されますが、これを「転記」といいます。

柴山式総勘定元帳というのは、一般的な総勘定元帳のとは違い、記入エリアの真ん中に十字を切って、さらに右上にもう一本横線を引いて、左上が資産、右上が負債、右真ん中が純資産、右下が収益、左下が費用という5つのエリアに分けて、それぞれのエリアに該当するTの字を書いていきます。

今回の例でいうと、資産のエリアには現金勘定が入ります。
現金勘定の借方は①借入で1,000,000増え、②資本金で2,000,000増え、⑤売上で4,000,000増え、借方の合計は7,000,000増えました。

貸方は③借入金の返済で250,000減り、④仕入により2,400,000減り、貸方合計は2,650,000になります。

借方合計7,000,000と貸方合計2,650,000を差し引きすると、借方のほうが4,350,000多いので、現金の残高は4,350,000というように計算します。

今回は、総勘定元帳ではバラバラにTの字があるものを、1つの表にまとめると分かりやすくなるという話です。

仕訳の入力と柴山式総勘定元帳への転記は現場の経理担当者が行います。
そして、上司である経営管理者が見るのは、総勘定元帳を集計した「試算表」というものです。

試算表は英語で「Trial Balance(T/B)」といいます。
記入のルールは簡単です。

Tの字の勘定科目が真ん中の上から順番に書いて、それぞれのTの字の右側に書いてある数字の合計を右側の「借方合計」に、左側に書いてある数字の合計を左側の「貸方合計」に記入します。

現金の場合だと借方合計は7,000,000、貸方合計は2,650,000なので、これを試算表の「借方合計」「貸方合計」欄にそれぞれ記入します。

そうすると、左と右で数字が一致しませんが、数字の大きい方の隣に残高を書きます。
「借方合計」「貸方合計」を書いて、その差し引きで多かったほうの隣に残高を書きます。

合計の金額と残高の金額を1つの表にまとめて書いているので、これを「合計残高試算表」といいます。

次に借入金をみていくと、借方合計は250,000、貸方合計は1,000,000なので、貸方のほうが750,000多いので、貸方合計の隣に750,000を書きます。

資本金は貸方の2,000,000しかないので、貸方合計と貸方残高に2,000,000を書きます。
売上も貸方合計と貸方残高に4,000,000を書きます。
仕入も借方合計と借方残高に2,400,000を書きます。

ここで面白いことがわかります。
電卓をお持ちの方は、縦の数字を足してみてください。

借方残高欄の合計は6,750,000、借方合計欄の合計は9,650,000、貸方合計の合計は9,650,000、貸方残高の合計は6,750,000となります。

必ず左右で数字が一致するのです。
左右の数字が一致することで、記帳が正しいことを自動的に検証できます。

これを「貸借平均の原理」といいます。
これは本来簿記検定3級レベルの知識ですが、この言葉を答えさせる問題が昔の会計士試験でも出たことがあると記憶していますので、案外侮れない言葉です。

左右の数字が合わなかった場合はどこかが間違えているということのヒントになりますので、必ず合うことを確認することは「自動検証機能」といいます。

もし間違えていたら、途中で記帳のミスがあることが分かるということです。
残高も合計も、最後は必ず左右が一致することを覚えてください。

今回のキーワードは「貸借平均の原理」と、その原理による「自動検証機能」です。
これは複式簿記の重要な原理です。

これまでは「合計残高試算表」を紹介しましたが、その他に、合計だけを切り取った「合計試算表」と、残高だけを切り取った「残高試算表」というものも実務で使うことがあります。

残高試算表からは貸借対照表と損益計算書を作ることもできます。
上半分が貸借対照表、下半分は損益計算書を示すことができます。
合計残高試算表から両外側の列を切り取ったのが残高試算表です。試算表は総勘定元帳の記録を集計して1つにまとめたもので、管理用の資料です。

これを見るのは、多くの場合はその組織の収支や業績に対して責任を持っている経営管理者で、試算表を見ることで利益がどのくらい出ているのかということなどを大まかに把握します。

実務上は月に1回試算表を出します。
日商簿記検定3級の場合は、試算表の作成問題に取り組む必要があります。
試算表は会計実務の“へそ”で、これを出すことが経営管理上大事になってきます。

そして、残高試算表の上半分と下半分に分けることで貸借対照表と損益計算書を作成できるということも頭の片隅に入れておいてください。

試算表の種類は3つありますが、基本は「合計残高試算表」です。
そのうち、内側の合計部分だけを切り取ったものが「合計試算表」で、外側の残高部分を切り取ったものが「残高試算表」になるということを知っておいてください。

総勘定元帳と合計残高試算表との関係と、合計残高試算表と合計試算表または残高試算表との関係を見比べてみてください。

これが会計理論を理解するための前提となる、複式簿記の一連の知識です。
以上で試算表のお話を終わりにします。

次回は、今までの知識を使って練習問題を解いてみます。
ここまでご視聴いただきまして誠にありがとうございました。

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