吉野家が、牛丼の値下げで既存店売上高11.1%増(日経13*5*8*11
吉野家ホールディングスが7日に行った発表によりますと、牛丼吉野家の既存店売上高が前年同月比で11.1%アップしたそうです。
前年を上回るのは7カ月ぶりとか。
その理由として、4月18日に牛丼(並)の値段を380円から280円に値下げした効果で、客数が13.6%増加(16か月ぶり)したことが上げられます。
4月の客単価は前年同月比で2.2%の減少だったとか。
以上の数字から、あなたなら「何を読み取る」でしょうか。
会計センスが問われる場面です。
まず一つ、新たなデータ加工をしてみましょう。
◎並盛の価格変動率を計算してみる。
→(280-380)÷380≒26.3%の価格減少率
◎価格の変動率と客数の増加率を比較する
価格の下落率26.3%に対し、客数の増加率は13.6%?
ここで、ひとつ計算例を出してみます。
(計算例)
1個380円の商品を1000個売っていたが、ある日、1個280円に値下げしたら1136個売れた。
値下げによって、売上高はいくら上がったか、あるいは下がったか?
(答え)
値下げ前:380円×1000個=380,000円
値下げ後:280円×1136個=318,080円
差し引き:△61,920円(売上の減少)
結果として、もしも販売数量アップの全てが並盛だったならば、売上高は下がります。
価格の下落率が26.3%なのに対して、販売数量のアップが13.6%しかないのですから、道理ですよね。
ちなみに、価格の変動率に対する販売数量の変動率の比率を、経済学用語では「価格弾力性」と言います。
※算数がちょっと好きな方のために…
数式で言うと、ある価格、ある数量からの変化に対して、
価格弾力性=(△X/X)/(△P/P)
とあらわせます。(※P…価格、X…数量、△…変化幅)
さらにこれを展開して、
(△X/X)/(△P/P)=(△X/△P)・(P/X)
と表現する方が、経済学の分析上、便利なこともありますが…
(微分が使えたりするので)
このあたりは数字(文字?)遊びということで、分からない場合はさらーっと流してくださいませ。
言うなれば、価格の変化に対して、それ以上の販売数量の変化があれば、つまり価格弾力性が高ければ、値引きは効果があるだろうし、反対に値上は販売数量の激減をもたらしてヤバいですよね、というお話しになります。
今回の吉野家の並盛100円引きは、価格の変化率26.3%に対して、販売数量アップ13.6%ですから、その販売数量の変動がすべて並盛ならば、とうぜん売上は大幅減少となりますよ。
しかし、じっさいには11.1%の売上アップです。
じつは、4月の客単価の減少を見ると、わずか2.2%しかマイナスになっていません。
どうやら、このあたりにヒントが隠されているようですね。
いうなれば、並盛の26.3%引きは「呼び水」。
お客さんは、店に来れば、並盛だけを頼むわけではありません。
おみそ汁とか他のメニューを頼めば、それは通常料金です。
また、たとえば、彼女はあまり食べないので並盛で100円引きだけど、彼氏は並みじゃ足りないよ!とばかりに、結局大盛りを頼んじゃった…。
でも、二人合わせれば100円は確かに得しているよね~、みたいなこともあるでしょうし。
あるいは、100円引きをしたということで、話題になり、なんとなくみんなが牛丼を頭にイメージする回数が増えるわけです。
そうなると、「ああ、あのつゆだくの牛丼を久しぶりに食べたくなったぜ!」みたいに、店に足が向くきっかけが増えたりします。
注目を集めるイベント効果もあったことでしょう。
このような値下げ効果を狙った商法は、ニトリやマックでも使うテクニックであり、わりとポピュラーです。
もちろん、いつもうまくいくとは限りませんが、
時として、非常に販促効果の高い手法となりますね。