ヤマダがベストを買収(日経12*7*7*1、7*13*3)

売上高見通し1兆8270億円のヤマダ電機が、売上高見通し2383億円のベスト電器を買収する方針を固めました。

ベスト電器の第3者割当増資をヤマダ電機が引き受けて、発行済み株式の50%超を所有することになります。

これで、売上高2兆円を超す巨大電機量販店グループが誕生することになりそうですね。

ベスト電器と言えば、その勢いがもっとも強かったのが、業界首位の座にいた90年代半ばまでの時期といえるでしょう。

わたしは東京でずっとくらしていたので、ベスト電器という名前は、あまり目にする機会がなかったです。

さくらやとかビックカメラとかコジマの方が、学生時代から身近でした。

ベスト電器は70年代後半から90年代半ばすぎまで、20年近くも業界首位だったのですから、業界首位をそれだけ長く維持していた自負というかプライドのようなものは非常に大きいと思います。それが人情ってものですよね。

ヤマダ電機が東証1部に上場したのが2000年になってから。ベスト電器より16年遅れてのことです。

あきらかに「後発組」という見方ができますが、後発組のメリットとしては、従来の成功モデルを十二分に研究し、それに対する差別化要因を整備してから参入できるという利点があります。

もちろん、先行者利益と参入障壁が相当大きい場合には、後発組にとって厳しい状況となりますが、ベスト電器には、その後の首位交代につながる原因がそれなりにあったのでしょう。

店舗の超大型化などは、大きな一つの要因といえます。

ベスト電器の躍進を支えてきた70年代~80年代のマーケットと、90年代後半以降のマーケットは、完全に「別モノ」です。

この転換点に臨んで、ベスト電器の経営者が、80年代の成功体験の縛りから完全に抜け切れていなかったとしたら…

今回の買収劇は、けっして道理に逆らった出来事とは思えなくなってきます。

【企業を買収する2つの方法】
1.合併する
2.株式を取得して子会社化する

第一の合併による経営統合の方法は、今年10月1日に統合する予定の新日鉄と住友金属が最近では有名です。

いったん株式を交換して住友金属を完全子会社にした後、合併して「新日鉄住金」という社名に変更、という報道がされています。

合併というのは、「契約により、二つ以上の法人格(会社)が一つの法人格(会社)に合体すること」ですから、イメージは細胞の融合です。

「会社の結婚」みたいな表現をされることもありましたが、結婚しても、旦那さんと奥さんは一人の人間になりません(それだとホラーです)ので、詩的ではありますが、合併の法的な定義上は、やや正確性を犠牲にした表現ですね。

「会社の合体」または「会社の融合」といったほうが法的には正確だと思います。

まあ、それぞれが全く違う歴史・文化をもつ細胞同士ですから、合体後の「拒絶反応」が起きても、何ら不思議ではありませんが…。

それに対し、子会社化は、「法人格(会社としての体裁)を維持した状態」で支配します。

名刺には、従来の会社名が残っていて、社名の上と化したとかに小さく「○○株式会社グループ」みたいな添え書きがつくパターンですね。

上場企業の場合、連結決算をしなければならないので、子会社化をしたときには、連結財務諸表を作る必要が出てきます。

法的には、合併と子会社化で、様式はまったくことなりますが、こと経済的な意味で見ますと、両者はまったく同じことです。

したがって、合併後の財務諸表と子会社化後の連結財務諸表は、大体同じ利益・資産規模・財務構成になります。

「法的には別物」でも、「経済的には同じ効果」であるのが、合併と子会社化の関係なのですね。

なお、どちらの場合も、「のれん」は発生する余地があります。

合併の場合は「存続会社の個別決算上でのれん発生」、子会社化の場合は「個別決算では出ないが、連結決算上でのれん発生」ということになります。

ヤマダ電機とベスト電器、子会社化とはいっても、もしも持ち株比率が50%をちょっと超えたくらいのままならば、少数株主が40%以上いる、ということで、合併よりは支配力がやや弱くなるでしょう。

やはり100%支配の方が、基盤は強固です。

今後、ヤマダ電機グループの業績がどのように変わっていくか、注目していきたいところですね。

柴山式簿記講座受講生 合格者インタビュー
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