デジカメ大手が効率投資で収益拡大(日経12*7*5*15)
ニコンの2013年3月期におけるカメラ事業の営業利益が、前期比で48%増加し、2008年3月期の最高水準に近くなるという予想を発表しました。
これにつきましては、次のURLの「2012年3月期 決算関係データ」というページでご覧いただけます。
「ニコン 投資家情報」
→ http://www.nikon.co.jp/ir/index.htm
上記の資料を参考に、2012年3月期と2013年3月期のセグメント別の営業利益を2期比較してみましょう。
営業利益の2期比較 (単位:億円)
2012/3 2013/3 (予)
精機C 427 250 (▲41.5%)
映像C 540 800 (+48.1%)
インスC ▲32 ▲10 (+68.8%)
その他 42 30 (▲28.6%)
調整 ▲176 ▲176
合計 801 900 (+12.4%)
こうしてみると、赤字のインスC(インストルメンツカンパニー)を除けば、映像カンパニーが孤軍奮闘している、という印象が強いですね。
前期比で48.1%の伸びを予想しています。
これは、新聞記事によると、最近の投資効率の良さが原因の一つにあるというわけですね。
新聞では、ニコンのカメラ事業(映像カンパニー)の総資産利益率(ROA)が過去5年平均で26%と非常に高い数値であることを示唆しています。
総資産利益率は、バランスシート上の総資産に対する利益の割合です。
利益/総資産
で計算されるのですが、分子の利益は、分析の目的によって、
「営業利益」
「経常利益」
「当期純利益(最終利益)」
のいずれかを使い分けます。
ここでは、営業利益または経常利益を想定しているのではないかと思われます。
また、分母は一般にバランスシートの総資産を用いるのですが、このセグメント別の情報を使う場合、便宜的に「セグメント資産」を、そのセグメントの総資産とみなして、投資効率を計算しています。
ご了承下さればたいへんうれしいです。
なお、2012年3月期のセグメント別情報より、
各セグメントの営業利益/セグメント投資額
を見てみましょう。
この数字が、新聞のROAに近い計算結果をあらわしているので、もしかしたらセグメント情報から数字を出したかもしれません(このあたりは未確認です)。
セグメント利益/セグメント資産の2期比較(単位:%)
2011/3 2012/3
精機C 1.26 21.29
映像C 24.94 21.42
インスC ▲- ▲-
その他 4.83 3.82
調整 - -
合計 6.51 9.31
こうしてみると、映像カンパニー(カメラ)は安定して20%台を記録しています。
精機カンパニーは、2012年3月期にいったんぐっとあがっていますが、2013年3月の見通しでは、利益が減るので、将来的にはちょっと苦戦しそうな感じですね。
ちなみに、全社ベースでは、ROAが6.51%から2013年予算の9.31%へと、大幅アップです。
総投資額(決算書ベース)に対して10%近い利益率をたたき出すのは、上場企業レベルではなかなか難しいです。
したがいまして、一般論でいうなら、かなりの経営効率アップにつながるはずですね。
そこで、もう一つ、規模の大小に関係なく応用しやすい儲かり具合の「ものさし」として、「従業員一人当たり利益」があります。
営業利益を使って、確認してみましょう。
<2011年3月期>
営業利益54,052百万円/従業員数24,409人=221万円
<2012年3月期>
営業利益80,080百万円/従業員数24,348人=329万円
…うん。「不況下」にしては、なかなかいい数字ですね。
悪くはないです。
従業員一人当たりの生産性は「上の中」といったところで、柴山塾的には400万円を10点としていますので、約8点あたりと、優等生です。
飛びぬけていい会社は400万円を優に超えますので、まだまだ上を目指せる、ということになりますね。
伸びしろはある思います。
ただ、以上の数値は、ROA6.51%の状況下なので、もしも2013年3月期のROAが予想通り9%を超えてきた場合、一人当たりの生産性が400万円を余裕で超えるなど、もっと改善があるかもしれません。
このあたり、来年の本決算の数値が今から楽しみですね。
ROAと一人当たりの生産性の関係について、今回はちょっと触れてみました。