新日鉄963億円など、四半期で有価証券評価損(日経12*7*3*17)
2012年4月~6月期の四半期決算で、投資有価証券の評価損を計上する企業が相次いでいる、と7月3日の日経新聞17面で報じられていました。
例をあげると、新日鉄は963億円、川崎汽船は158億円、神戸製鋼は141億円など、100億円単位で企業の四半期業績を圧迫しているようです。
たとえば、川崎汽船は、投資家情報で次のように発表しています。
「その他有価証券」に区分される投資有価証券のうち、時価が著しく下落し、その回復する見込みがあると認められないものについて、平成25年3月期第1四半期連結会計期間において減損処理による投資有価証券評価損を計上する必要が生じましたので、お知らせいたします。
【引用元】→ http://www.kline.co.jp/ir/stock/disclose/detail/__icsFiles/afieldfile/2012/07/02/20120702-2.pdf
【投資家情報】川崎汽船株式会社
※こちらからも確認できます。→ http://www.kline.co.jp/ir/
ここで、会計の専門用語が4つ出てきました。
1.その他有価証券
2.投資有価証券
3.減損処理
4.投資有価証券評価損
それぞれについて、簡単にご説明いたしますね。
1.その他有価証券
売買(株価が上がったら、売って儲けるという運用目的)や満期所有や子会社として支配するなどの目的以外の目的で所有している有価証券。
その所有の意図は多様で、特に明確化されていない。
代表的な所有目的は、「取引関係の安定化」を意図して所有する相互持ち合いなどである。
所有目的がはっきりしていないため、時価がある有価証券は、決算日で一時的に時価評価してバランスシートに表示するが、翌日(翌期首)になったら、すぐに取得原価(買ったときの金額)にもどす、という意味のよくわからない処理を強要する資産項目として有名。
原則として、365日中364日は原価で評価するため、「ウスバカゲロウのような一日時価評価項目」と、柴山がたとえ話として語ることがある。
2.投資有価証券
その他有価証券や満期まで所有する目的の債券(償還まで一年を切ったものを除く)や時価の無い有価証券をまとめて表示するバランスシートの表示項目。
3.減損処理
投資有価証券(その他有価証券、満期保有目的債券)や子会社株式など、基本的に原価で帳簿上評価しておく有価証券につき、次のような以上事態においては、さすがに原価を維持するのは実態に即していない、ということから時価まで評価を下げるなどの特別処置をする会計処理技術。
減損処理をする条件の一例として、
(1)時価がおおむね直前の評価額(原価など)のだいたい50%以下にまで下落した場合(著しい下落という)。かつ、
(2)時価が回復する見込みがある、と考えられる場合以外。
具体的には、「回復する見込みがない」と「回復見込みが不明」の2パターンがある。
4.投資有価証券評価損
上記3.の減損処理をした結果、発生した評価損失。
原価と時価などとの評価差額は、「投資有価証券評価損」などの項目で、損益計算書上は特別損失という以上項目の区分に表示される。
<具体例>
その他有価証券(原価130)が、期末になって時価50まで下落した。時価の回復見込みは不明である。
<仕訳例>
(借方) 投資有価証券評価損 80 (貸方) 投資有価証券 80
以上のように、本来ならば日商簿記1級レベルの知識が目白押しの新聞記事なんですね。
日経新聞って、ときとして日商1級レベルの記事を書いてくるので、あなどれません。
もちろん、合格レベルにまで行く必要はないのですが、日商1級の商簿会計あたりの講義を受けておくだけでも、日経新聞の財務記事を読むには、かなり役に立ちますよ。
(例)減損損失、デリバティブ、連結決算、不動産の流動化、のれん、株式交換、会社分割、新株予約権、ストックオプション、M&A、資産除去債務、ヘッジ会計、為替予約、棚卸資産の期末評価、リース会計、見積りの変更、包括利益、キャッシュ・フロー計算書、株主資本等変動計算書、株式分割、自己株式、外貨建子会社の換算、持分法、セグメント情報、四半期財務諸表、…
こうやって上げてみると、きりがないですね。
日経新聞の財務記事は、「日商1級の講義レベルの基礎知識」を知っておくと、ほんとうに理解のために役に立つのでは?という気がしてきましたよ。
いずれにせよ、四半期決算の段階でも著しい下落があった株式銘柄などについて、特別損失としての評価損を計上する可能性があるので、経理担当者としては、実務が昔に比べて大変になってきているとは言えそうです。
ますます専門的な会計知識の必要性が高まっていますね。