上場企業の純利益予想、トヨタがトップ(日経12*6*8*2)

2013年3月期の上場企業の予想純利益を集計した結果、トヨタ自動車が5年ぶりに首位に復帰する見通しである、と日経新聞が報じていました。

上位の顔ぶれを、同紙面から引用してみましょう。

1位 トヨタ自動車 ・・・ 7,600億円 (前期比2.7倍)
2位 NTT ・・・ 5,750億円 (前期比23%増)
3位 NTTドコモ ・・・ 5,570億円 (前期比20%増)
4位 三菱商事 ・・・ 5,000億円 (前期比10%増)
5位 ホンダ ・・・ 4,700億円 (前期比2.2倍)
6位 日産自動車 ・・・ 4,000億円 (前期比17%増)
6位 三井物産 ・・・ 4,000億円 (前期比8%減)

ベスト10のうち、上位6位まで(三井物産除く)が前期比で増加しています。

8位JT、9位ソフトバンクおよび10位伊藤忠商事は前期比で減少しています。

こうしてみると、自動車ビッグ3、通信、商社が逆風下の業績回復力を示しているといえそうです。

電機をはじめとする自動車以外の製造業が顔を出さないところに、昨今の日本の産業構造における現状を如術に表していると言えそうです。

さて、ここで基礎知識です。

当期純利益は、一事業年度において、企業が稼いだ総収益から同じ期間中にかかった総費用を差し引いてもとめた金額ですから、会社が最終的に残した利益の額です。

この利益の額が、株主の配当の財源になります。

言いかえると、「毎年、会社は株主に還元できる配当の財源をいくら稼いでいるのか?」を端的に表す財務指標が当期純利益(最終利益)なのです。

この額は、税金の負担も控除した後の最終的な残高です。

大きくなればなるほど、株主からの評価が高まり、株価にもダイレクトに反映されるという特徴があります。

なお、会社が稼いだ一年間の純利益を、その年度中に発行していた株数の平均(平均発行株数)で割ると、1株あたりの当期純利益が出ます。

EPSとも言いますが、この1株あたり当期純利益が、株価の形成にとても大きな影響を及ぼすのです。

ちなみに、「期中平均株数」ですから、「期末の発行済み株数」を分母にするわけではない、ということにご注意ください。

事例で説明しましょう。

(例)
A社は、期首(1月1日)の時点で1,000株発行していた。当期中に1,000株を新規に発行したので、期末時点での発行済み株式数は2,000株になっていた。いっぽう、損益計算書上の当期純利益は4,500,000円であった。

(質問)
1株あたりの当期純利益はいくらでしょうか?

(1)4,500,000円÷期末株数2,000株=2,250円

(2)4,500,000円÷平均株数1,500株=3,000円

(答え)(2)3,000円です。

※平均株数…(期首1,000+期末2,000)÷2=1,500株

なぜ期中の平均株式数を分母にするかというと、利益というのが、そもそも期首から期末にかけて、12ヵ月の間、少しずつ溜まっていくものであるから、期首に近いところでは1,000株の発行数に対して利益を稼いでいると考えられるからです。

利益のぜんぶを期末付近でダアーっと一気に稼げるのであれば、期末の株数で割ってもいいでしょうが、1月、2月、3月…11月、12月の順に、月次の決算で、コツコツ利益を1/12ずつ積み上げていく、と考える方が自然ですよね。

そんなわけで、期首の株数も反映させた平均株数で割ってあげるのが、一株あたり当期純利益の計算としては、実態に近いだろう、という考えなのです。

この一株利益が大きいほど、会社の財務的な評価が高まります。

したがって、一株利益のアップ⇒株価アップに理論上はつながるので、経営者としては、一株利益の動向には注意を払う必要があるのですね。

ちなみに、[株価÷一株利益」で求められる数値をPER(price earnings ratio)といいます。株価収益率と訳されています。

その会社の株が、予想される一株あたり利益の何倍の値段で売買されているか、をあらわす財務分析指標です。

経験的に申し上げると、最近の低成長下では、おおむね10~15のあいだにある企業が多いのではないかと思います。

景気のいいときは、これにだいたい5をプラスして、15~20くらいになります。

株式投資を考える時に、PERを参考にする方も多いので、重要な財務分析指標の一つと言えます。

柴山式簿記講座受講生 合格者インタビュー
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