コマーシャルペーパーが2年ぶりの高水準(日経12*1*5*4)

2012年1月5日の日経朝刊4面の記事です。

2011年末時点におけるコマーシャルペーパー(CP)の発行残高が
16兆5427億円と、2009年12月末以来2年ぶりの高水準に膨らんだそうです。

複数の電機メーカーがタイの洪水被害の復旧費用をコマーシャルペーパーでまかなっているという話もあるそうです。

なお、ここで基礎知識です。

【コマーシャルペーパー(CP)】
支払期日までの期間が短い無担保の約束手形です。
割引方式(※)により発行します。金額と満期日は特定して発行されます。

(※)割引方式:利息分を額面から引いて債券や手形などを販売する方式のこと。満期日に提示することで額面の金額を受け取るため、差し引き分が金利相当になります。

なお、コマーシャルペーパーを発行することができるのは優良企業に限定されています。

主に機関投資家の資金運用手段となりますので、基本的に個人投資家が購入することはできません。

無担保の割引方式を用いて公開市場で取引されるために、信用リスクの高い企業が発行するとデフォルト(債務不履行)の可能性があるため、優良企業しかコマーシャルペーパーを発行できないわけですね。

コマーシャルペーパーは期日が1年未満で、30日以内の短期で発行されることが多いです。

このため、満期までの期間が数年間という長期の社債がバランスシート上
「固定負債」の表示でスタートするのに対し、コマーシャルペーパーの表示は「流動負債」の区分になります。

バランスシート
(流動資産)    (流動負債)
現金預金       ××× 買掛金        ×××
売掛金        ××× 短期借入金      ×××
棚卸資産       ××× コマーシャルペーパー ×××

(固定資産)    (固定負債)
建物         ××× 社債         ×××
機械         ××× 長期借入金      ×××
           (純資産)

証券保管振替機構によると、2011年末時点のコマーシャルペーパーの発行残高16兆5427億円と言う水準は、前年比6%の増加になります。

企業の資金需要の低迷を反映して2008年9月から前年比マイナスの状態が続いていましたが、2011年は東日本大震災後に社債を発行できなくなった電力会社が、かわりにコマーシャルペーパーの発行を増やしたため、6月にはコマーシャルペーパー市場全体の発行残高が前年比で増加に転じた、という経緯があります。

このような状況から、コマーシャルペーパー市場の低迷が、企業の資金需要の回復でいったん底を打ったのでは、という見方も出ています。

コマーシャルペーパーの発行残高が増えると、企業としては流動負債が増加します。短期的な支払義務が増えるのですね。

この点、財務分析上は「流動比率(流動資産残高/流動負債残高)」が
悪化しますので、一応の注意が必要となります。

流動比率は、短期的な企業の支払い負担能力を判断する重要な与信判断資料です。

この比率が悪化すると、融資や取引を開始・継続する際のマイナス要因ともなるので、あくまで継続的に数値のバランスが急激に悪化しないよう、注意を払っておくとよいでしょう。

柴山式簿記講座受講生 合格者インタビュー
商品に関するご質問・ご相談はこちら