材料の消費額計算【原価計算手続の概要 その3】
払出数量の計算
材料は、倉庫から出庫されると、工場内の各工程に投入され、現場で製品加工のために消費されます。
ここで、材料の数量管理について、考えてみましょう。
たとえば、金でできた部品とか、車のタイヤのような、それ自体が販売できそうな、価値の高い材料の場合、おそらく盗難や紛失を防ぐために受け払いの管理をしますよね。
この場合、材料元帳という「受け払いの管理簿」を作って、大事な材料を受け払いするつど、その材料元帳に記入していき、月末になったら、帳簿上の「残高」欄で、あるべき材料の残高を把握します。
それと、倉庫の中を点検・調査して、実際の残数量と差がないかの確認をすれば、大事な財産である材料をきちんと管理することができます。
このように、材料元帳などの受け払い帳を作成して継続的に記録・管理する方法を「継続記録法」といいます。
この継続記録法は、受け払いのつど帳簿に記録するのでやや事務手続きは煩雑ですが、重要度の高い材料の管理には有効です。
これに対し、輪ゴムや釘やネジや紙やすりなどの消耗品などはどうでしょう。一品ごとに受け払い管理するのも細かくて面倒だし、そんなに厳密に管理するほどの重要度もないですよね。
あまり重要度の高くない消耗品などは、購入のときだけ受入を何らかの形で記録し、払出のたびに記録することをせず、期末の実地棚卸数量を差し引いて、差額でその期間の出庫額(消費額)を推定する、という方法がとられます。
「期首在庫+当期購入‐期末在庫=消費額」のような把握の仕方です。
受入高から期末の実地棚卸高を差し引いて消費額を推定する方法を、「棚卸計算法」といいます。
棚卸計算法は、払出のつど記録しなくていいので手続は楽ですが、期末在庫のあるべき数量が帳簿上はわからないので、厳密な在庫管理ができないのです。
当然、受入額から期末の実地残高を差し引いた額のすべてを消費額と考えますから、その中に盗難や破損などによる材料の減耗が混入しても分からないです。
だから、消耗品のような重要度の低い在庫にのみ適用できる方法なのですね。
払出単価の決定
材料の消費額の計算は、「消費数量×消費単価」で求められます。
消費数量の求め方は、前節で学びました。次に、消費価格の決定方法です
結論から言うと、次の3つの方法を知っておけば実践知識としては十分でしょう。
【消費金額の基本的な計算方法】
(1)先入先出法
(2)後入先出法
(3)平均法
先入先出法とは、先に購入した材料から先に払い出し、決算日に残った材料は新しい仕入単価のもので構成されている、と考える計算方法です。
たとえば、昨日は材料10個を単価100円で仕入れ、今日は10個を単価120円で仕入れたとします。古い仕入単価は100円(10個)で、新しい仕入単価は120円(10個)ですね。
これらのうち5個の材料を、明日、現場に払い出すとしたら、古く仕入れた100円の単価の材料を先に5個払い出したと考えましょう、という材料消費額の計算方法です。
したがって、出庫後の材料の残数は15個ですが、その単価構成は、古い単価100円×5個+新しい単価120円×10個=1700円の在庫評価額となるのです。
最も常識的な払出の仮定にもとづく計算方法です。
次に、後入先出法は、後から仕入れたものを先に払い出し、決算日の在庫は古い仕入単価から構成される、という仮定にもとづく計算方法です。
あまり常識的にはピンとこない方法ですが、石炭や砂や砂利などは、どんどん買い増しするごとに上へと積んでいき、後で払いだすときには、上からすくって運んでいくので、上にある後の仕入から払い出す、という仮定にマッチするのです。
平均法は、前の仕入額と後の仕入額を合計し、仕入数量で割って平均単価を求め、その平均単価で消費額を計算する方法です。
これは、いつ払い出しても単価に大きな差が生じないので、安定した消費額の計算が可能です。細かい話ですが、平均法には期中の受け払いの都度平均単価を出す「移動平均法」と、一ヵ月などの一定期間ごとに平均単価を出す「総平均法」の2種類があります。
紛失・盗難など
倉庫内で材料を保管していると、受け払い記録のミス、紛失、盗難などの理由で、実際の残高が材料元帳の残高欄の残高(帳簿残高)よりも少なくなることがあります。
家計簿に書かれている現金残高と財布の中にある実際の現金の額が合わない、という場合に似ていますね。
材料の帳簿上の残高と倉庫内の実地残高が違う状態を「棚卸減耗」といい、実務上はよく生じます。
棚卸減耗は、現物管理をしている以上、ある程度は生じても仕方がないものなので、正常と思われる範囲の額ならば、減耗額を製造原価として取り扱います。
言葉で説明するだけではちょっとわかりづらいと思いますので、簡単な事例で考えてみましょう。
たとえば、月初には在庫がまったくなく、当月に100kgの材料を購入したとしましょう。
1kgあたり200円とします。
当月における材料購入高は、200円×100kg=20,000円です。
次に、材料元帳では、上記の受入欄の記入100kgのほかに、払出欄に90kgと記載されていたとします。
すると、材料元帳の残高欄には、差し引きで10kgと記載されているはずですね。
そこで、月末に、倉庫の中を調査し、実地棚卸(現品を数えること)をしてみたとします。
その結果、月末の実地数量は8kgでした。とすると、
帳簿残高10kg-実地残高8kg=棚卸減耗2kgとなりますね。
そして、200円×2kg=400円が、棚卸減耗による費用になります。
これを「棚卸減耗費」といい、製造中の製品原価(未完成なら「仕掛品」)に「間接経費」として最終的に加算することになるのです。
つまり、材料の保管中に生じた棚卸減耗費は、製造中の製品原価(仕掛品)に、間接経費として加算されるのです。