D・カーネギー「人の立場に身を置く」の事例

デールカーネギーの「人を動かす」という本の中の基本原則のうちの第三の原則でとても重要な「人の立場に身を置く」というものがありますが、この中に非常に興味深い事例がありますのでご紹介します。

これは非常に人間の欲望をよく知っているもので、人によっては納得しない方もいらっしゃるかもしれませんが、とても面白い事例なので、私なりに内容をアレンジしてご紹介します

Aさんという息子さんがいて、お母さんがいました。
地方から東京の大学に出てきました。

母親としては息子がきちんと大学生活を送っているか、病気はしていないか、皆と仲良くしているか、勉強をしっかりやっているか等、心配して手紙を出すのです。

その手紙の文面が、お母さんの立場で「私はいつもあなたを心配しています。ぜひ返事をください」という形で手紙を送ります。

しかし、これは子どもにとっては若干鬱陶しかったりします。
お母さんの立場を押し付けているという形になってしまいます。

返事がないとまた心配になって、お母さんはどんどん手紙を送るのですが、送れば送るほど息子は放っておいてほしいと思います。

これに悩んでいるお母さんですが、お母さんのお兄さんに相当する人がいます。
Aにとってはおじさんですが、デールカーネギーはお兄さんの立場にあります。
主人公はおじさんですが、お母さんにとってのお兄さんです。

お母さんは東京に出て行った息子Aに対して心配をして手紙を送っているのですが、息子は全く返事をしないので、お母さんは心配をしてお兄さんに相談をしたというイメージです。

そこでおじさんは代わりに手紙を送るのです。
お母さんが失敗したのは自分の立場で言っていることです。

「私は心配だから、できたらすぐに返事ください」と書いたのです。
そうすると、息子はお母さんの立場で言われているから「俺には関係ない」と思ってしまい、そっぽを向いています。

息子さんの関心というのは何なのでしょう?
遊びに行ったりするためのお金が欲しいのです。

こういうときに、おじさんは自分が大学生のときに色々あったと思うのですが、お金に苦労をしているだろうなと想像しながら、こういうふうにするわけです。

「A君、元気にしてる?」ということを書きながら、追伸で一言「A君に5万円を送金します」と書くのです。

理由づけは「最近宝くじが当たった」「競馬で勝った」「ボーナスが入った」など何でも良いのですが、追伸をちょっと書いただけであとは何も言いません。

そうすると、A君は「ラッキー」と思って「おじさん、お手紙ありがとう」とすぐに返信をくれるのです。

これを見てお母さんはビックリするわけです。
言ってしまえば「お金で釣ったのではないか?」という話ですが、これは返事をもらっています。

お母さんは自分の感情を押し付けているだけでした。
もちろん、私も人の親なのでお母さんの心配する気持ちは分かりますが、親の感情を押し付けています。

言えば言うほど相手は逃げていきます。
それは自分の気持ちばかり言っているからです。

では、息子の気持ちになって、息子が今何を一番困っているかを考えます。
お金に困っているとしたらこのような形になるのです。

実際にこれが良いかどうかは別にしても、返事をもらうという目的は達成しています。
おじさんとお母さんの違いは何かというと、お母さんは自分の感情を中心に働きかけてしまったのです。

しかし、おじさんはA君が今何を求めているかを想像して「たぶんこれだろうな」ということをダイレクトに言ったのです。

今回はたまたまお金の話になりましたが、これは応用できます。
売上が上がらないビジネスマンの方は、もしかしたら自分の気持ちを押し付けていませんか?

相手が一番欲しいもの、相手が困っているものは何かを考えてアプローチしましょう。
今回の事例でいうならばお金なのです。

ケースバイケースですが、場合によってはお金も有りなのです。
「お金で釣っている」と言われたら身も蓋もないですが、A君が欲しがっているものを意識して、それを刺激するようなことを最後に言ってあげたのです。

「会いたい」とも何とも言っていないのですが、A君からは返事が来ました。
相手の立場を考えて、相手が何を欲しているか、何に困っているかを考えて働きかけてあげると相手は動いてくれるのです。

これは非常に示唆に富んだ話です。
これは仕事や人間関係などの問題に対処するときに役立ちますので、よかったら参考になさってください。

私はいつもあなたの成功・スキルアップを心から応援しています。
ここまでご覧頂きまして誠にありがとうございました。

柴山式簿記講座受講生 合格者インタビュー
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