期末商品の評価に見る、易しい問題を難しく見せる出題テクニック

今回の「頑張ろう日商簿記2級合格」は、問題を難しくするテクニックについてお話します。

私も色々な問題を大学や専門学校で作成して採点もしてきたので分かっているのですが、簿記の世界では理論が高度な問題というのはそれ程ありません。

1つ1つの基本的なパーツをあちこちから拾い集めて、それを組み替えて込み入った表現にするだけで途端に難しく見えるのです。

しかし、よく見ると1つ1つは大したこと無いのです。
今回の話でそういうことに気づいてほしいのです。

そこで、期末商品の貸借対照表価額を求めるときの問題で、易しい問題を難しくするテクニックをお話します。

まずは簿記3級レベルですが、(1)期末の商品残高は1,000円だったという問題ですが、これは簡単です。

この場合は貸借対照表に商品1,000とすれば良いです。
こういうケースは簿記2級でもあり得るけれど、これは易しいです。

しかし、知識を2つぐらい組み合わせるだけで途端に難しくなります。
しかも、これは常識で考えたら分かる所と基本的な知識をそのまま当てはめるという2つを併用すると途端に難しく見えるのです。

それでは実際に見てみましょう。
期末の商品の実地残高です。

実地というのは倉庫にあるということです。
(1)では商品残高としか言っていませんが、これは帳簿残高も実地の倉庫の残高も同じだということを暗に言っています。

だから簡単なのです。
これを何も考えずに普段から勉強していると、これが帳簿上の数字を言っているのか倉庫で現品を見たときの数字を言っているのかを意識しなければいけません。

「実地」という言葉が入っていることで倉庫で現物を見たということに気づきます。
現物を見たということでかなり具体的にイメージします。

結論は(1)と同じ1,000ですが、2つの商品を組み合わせているのです。
一瞬難しそうに見えますが、混乱せずに1個1個を丁寧に見ていきます。

まずはA商品に意識を集中します。
A商品は10個あって1個90円ですが、これは原価と言っています。

商品売却価額というのは時価ですが、簿記2級では時価の数字が下がったら低い方を使うという簡単なルールがあります。

このルールをすぐに思い出せればOKです。
ですからこの場合は88円を使うと考えます。

10個×88円で880円です。
これがまず1個です。

もう1個、B商品を積み上げれば良いということに気づけば良いのです。
1個1個を丁寧に分解します。

これを全体として見るとA製品もあるし、B製品もあるし、88円という訳の分からない数字もあるし、混乱してしまいますが、1つずつ集中して見てみます。

A商品に関しては常識で考えます。
5個×30円で本当は150円ですが、うち1個は返品処理済みです。

会計帳簿ではなくて実地での数字であることがポイントです。
実地ということは現品が現場にあるということです。

返品処理済みなので帳簿上はないはずなのです。
今回に関しては帳簿処理が正しくて出荷係のミスなので現品のほうが間違えているというケース考えます。

テキストではやりませんが、ここが常識力なのです。
よく考えれば分かります。

出荷係のミスで未出荷ということは、本来出荷しなければいけないのがたまたま置いてあるだけで、これは他人のものなのです。

これは返品処理済みと言っているので、5個のうち1個を引いて4個にすべきです。
普段から考える練習をしていないとここで嫌になってしまうのです。

そうすると、5個から1個引いて4個で、4×3=12で120と880です。
難しく見えますが、よく考えるとどちらもテキストの範囲なのです。

2つ目はテキストには載っていないけれども、これぐらいは現場の状況をイメージするというちょっとした発想力で処理できます。

これぐらいの発想ができなければだめなのです。
全てをテキストでは網羅できませんから、あとは常識力で考えます。

1個は返品処理と言っているのだから、減ったに決まっているのです。
このような基本的な思考能力が問われるのです。
ですから、普段からしっかり考えて勉強する必要があるのです。

(1)のように1,000というふうに簡単に言ってしまうやり方だとつまらないので、出題側は難易度を上げようと思うのです。

今回のように2つに分けたり、ミスがあったから直しましょうというようなパターンが多いです。

(2)のような形式でも見た瞬間にパニックにならないでください。
メンタルが弱いとこの問題が苦手になってしまいます。

(1)も(2)の問題も、基本的にはテキストにある知識で対応できるのです。
簡単な知識を1個1個丁寧に積み上げるというのが(2)のタイプですが、むしろこちらのほうがパズルとして面白いと思ってもらえれば良いのです。

1つは時価が下がったときの知識を問う内容で、もう1つはちょっとした現場のミスに惑わされないかどうか、その人のメンタルや判断力や常識的な判断ができるかどうかを聞いているのです。

問題を少し細かくするだけでこれだけ難しく見えるのですが、よく見ると大したことはありません。

これが分からないといつまで経っても新しい出題形式に慣れません。
全ての出題パターンを網羅することはできないので、基本的な考え方を知った上でこういった問題に常識力で対応するという柔軟な思考能力が必要なのです。

簡単な部品をいくつか積み重ねただけで一気に難しく見えるということを知っておいてください。

全ては基本的な考え方の積み上げで問題はできています。
慌てず、騒がず、1個1個丁寧に集中して処理をする習慣をつけてください。

これが応用力をつける一番大事なポイントです。
これは仕事でも同じです。

仕事も基本的な作業の組み合わせで応用的な作業もできるわけです。
まずは基本の積み上げです。
頑張ってください。

私はいつもあなたの簿記検定2級合格と簿記学習を心から応援しています。
ここまでご覧頂きまして誠にありがとうございました。

柴山式簿記講座受講生 合格者インタビュー
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