連結超入門3「子会社株式を売ってみた!」

今回はご好評を頂いている「連結超入門」の3回目です。
A社が1年間子会社であるB社を持っていて、1年経ってからB社が60ほどの利益を上げたので、元々持っていた子会社株式100(設立したときの出資額)からさらに160に成長しました。

100だった子会社株式の価値が160に上がったと考えてください。
この状態で、これを160(子会社の純資産そのものと同じ価格)で売ったとします。

資本金と利益を足したものを「純資産」と言います(昔で言う資産)。
この純資産(資本)が160に増えたので、60のプレミアムが付いたと考えてください。

本支店会計の延長のようなものです。
今回はこれを160で売ります。

子会社株式100を売ったら160の現金が入りますので、子会社株式の売却益が60出ます。
では具体的に事例を見ていきましょう。

A社の現金は120、子会社株式が100、利益剰余金は250あります。
このとき、B社は何の関係もありません。

なぜかというと、A社と他の株主の間での子会社株式の取引なので、B社の貸借対照表には何の影響もないのです。

例えばA社がC社に子会社株式を売却した場合、A社とC社の資産・負債は変動しますが、B社の資産・負債には影響がないのです。

新たにB社の株主となるC社という会社は現金が減って、子会社株式160という評価になります。

現在B社が100の資本金と60の利益剰余金の状態でB社の株式を売買します。
このときにB社の株式は160の価値がありますから、新たな株主C社は160の価格でB社を買うのです。

B社のB/Sを見てみると、資本は160ありますので、会計上では160の価値はあるはずで、これが目安になります。

B社の自己資本というのは、B社のM&Aの価値の目安になっているのです。
これが基本です。

そうすると、会計上のB社の買収の価値である160でやり取りしたとしましょう。
子会社株式100が160まで価値が上がったので、A社はこれを160で売りました。

仕訳は(借方)現金160 (貸方)子会社株式100 子会社株式売却益60となります。
これは2級の仕訳問題で出る可能性が十分あります。

これでA社とB社の関係は終了しました。
ということは、A社はB社を連結する必要がなくなったと考えることができます。

ですから、A社を個別で見ていくと、元々現金が120でしたが、B社を売却することによって280に増えました。

そして、利益剰余金も250から310に増えています。
これは元々あった250に子会社株式売却益60が足された額です。

子会社を売ることによって、B社の利益剰余金の分だけA社も利益を得ることができました。

ここがポイントで、これを分からずに簿記1級の連結に進んでしまうと難しく感じてしまいます。

意外とこの基本的な部分を教えているテキストが少ないのです。
子会社株式を売ると、子会社が出した利益剰余金の分だけ子会社売却益が出るのが基本なのです。

私が会計士の受験生時代にもここまで基本的な勉強をした記憶がありません。
ここを勉強しておくと後々違ってきます。

ですから、子会社が稼いだ60の利益が大事なのです。
その分だけA社の利益に繋がるのです。

160の現金のやり取りをしたので、A社には160の現金が入りました。
子会社株式を売却することによって子会社株式100がゼロになって、60の利益が出ました。

一方、B社を買った新たな親会社C社が登場します。
C社がA社に160を支払ってB社を取得したとき、B社の資本は資本金100と利益剰余金60の合計160なので、C社が160を払ってその持分を取得するのは正当なことです。

ですから、これは何の問題もありません。
そうすると、C社の個別B/Sはどうなるかというと、借方に子会社株式160が増えます。

そして、現金は元々220あったと考えて、そこから160が減って60になっています。
そして子会社株式が160ある状態です。

ここでポイントなのは、A社がB社を作ったときには資本金が100しかなかったので子会社株式は100で評価しましたが、1年経って160に成長したのでB社の株式は160からスタートするのです。

C社はB社が160に成長した状態で取り入れているので、子会社株式は160からスタートします。

実際は違いますが、一番簡単なケースは、B社の貸借対照表の資本の合計と子会社株式が一致するのがスタートラインです。

土地の時価が増えたりして変わりますが、会計上はB社の貸借対照表の自己資本がB社のM&A(買収)の価値であるのが基本です。

とすると、B社の資本金100と利益剰余金60は、お金を出して買ったので最初の段階ではあまり意味がないのです。

買収後に増えた利益についてはC社の連結に取り込めますが、買収時には資本金100と利益剰余金60に見合ったお金を払っているので、今は取り込む必要はありません。

結局、A社がB社を設立したときと同じことで、スタートラインではC社の子会社株式160とB社の資本金100と利益剰余金60は重複しているのです。

もちろんB社の貸借対照表には変化がありません。
そしてここからが真骨頂です。

C社の現金60、売掛金180、子会社株式160、資本金150、利益剰余金250を覚えておいてください。

B社の貸借対照表を見ると現金100がありますが、このB社の現金100とC社の60を足して160になります。

B社の売掛金60とC社の売掛金180を足して240になります。
B社の資本金100と利益剰余金60は連結したら必要ありません。
では見ていきましょう。

C社とB社を合算したB/Sは、現金160、売掛金240、子会社株式160、資本金250、利益剰余金310です。

資本金250というのはC社の150とB社の100が一時的に被っていますが、150に戻す処理が必要になります。

連結上は必ず親会社の資本金しか残りません。
資本金250のうち100はB社の分ですから、必要ありません。

そして、利益剰余金310のうち250はC社の分ですが、これは必要です。
スタートラインでは子会社株式と対応しているので、子会社の資本は消します。

ということで、C社の子会社株式160とB社の連結スタート時の資本金100と利益剰余金60の合計160は完全に重複しているので相殺します。

(借方)資本金(B)100 利益剰余金(B)60 (貸方)子会社株式160というように資本と投資の相殺消去を行います。

「資本」というのは、この場合はB社の資本金と利益剰余金で、「投資」というのは子会社株式のことです。
これを「資本連結」とも言います。

この結果どうなるかというと、子会社株式はゼロになります。
現金と売掛金などの資産についてはBとCを足します。

負債もBとCを足しますが、子会社株式を相殺消去してゼロにしましたので資本金と利益剰余金はC社の分だけ(それぞれ150と250)を表示します。
これをよく見るとC社の個別B/Sとほぼ変わらないことが分かると思います。

現金や売掛金のような資産や、借入金のような負債は親会社と子会社を合算しますが、子会社株式をゼロにすると同時に子会社の資本金と利益剰余金を相殺消去するので、C社の資本構成は子会社取得前の個別B/Sと必ず同じになります。

これは「連結超入門①」で学習したように、子会社設立をした年のA社も必ず設立前の個別B/Sに戻るということをお話しました。

ですので、資本金は必ず親会社の分だけを表示します。
まずこれをしっかりと理解してください。

日商簿記検定1級で連結を苦手にしている方はこのあたりをあまり深く学習していないので、理解が弱いのです。

ここをしっかり分かって頂いて、子会社株式を最初の親会社から別の親会社に移転したときに、元の株主と新たな株主との資本連携を丁寧に学習していくと後になってからとても楽になります。

ですから、ここは簿記2級レベルとは言いながらも侮れない部分なのです。
現在簿記1級の連結で苦労されている方は、このあたりからしっかりと理解すれば違ってきますので、ぜひ頑張ってください。

私はいつもあなたの簿記学習・連結の学習を心から応援しています。
ここまでご覧頂きまして誠にありがとうございました。

柴山式簿記講座受講生 合格者インタビュー
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